【スバル】サンバー(初代K151/161型)

スバル・360のコンポーネンツを流用した商用車として1961年にデビューしたサンバー。

キャブオーバー型軽商用車の走りともいえるモデルで、RRレイアウトの様々なメリットが好評で、一躍人気モデルとなりました。

 
 
 
 
 
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【スバル・サンバー(初代K151/161型)の歴史】

 

 

軽自動車規格内で、実用的なクルマを作り出すのが至難の業だった1950年代。中小メーカーが細々と軽自動車を生産した例はあったものの、商業的に成功したといえるモデルはまだありませんでした。
その中でも、1957年発売のダイハツ・ミゼット(初代DK/DS型)は、幌製の屋根、ドア無し、跨座式シートの1人乗り、バーハンドルなど、三輪スクーターとも言える簡易な作りでしたが、廉価さと軽便さでヒットを記録。他社からも軽三輪トラックが続々と発売されました。

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より安全性や積載性にも優れる、軽四輪トラックの開発も進み、1959年には東急くろがね工業から「くろがね・ベビー」が発表され、先駆車となりました。RRレイアウトを採用したキャブオーバー型トラックで、サンバーと同様のレイアウトでしたが、販売網の脆弱さも去ることながら、大手メーカーからの後発車の陰に隠れたことで商業的には失敗。同社は1962年に会社更生法の適用を申請するにまで追い込まれました。

その後、大手メーカーで先陣を切ったのは、1960年発売のダイハツハイゼット(初代L35/36型)。軽自動車規格に収めたボディは、フロントにエンジンを収めたボンネット型で、荷台面積が決して大きくないことが難点となっていました。

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一方でスバルは、1958年に発売したスバル・360(K111/212型)が大成功。まだ簡素な作りではあったものの、多くの部品を専用に開発することで、4人が乗車する必要十分な室内空間を実現し、日本初の大衆車とも言えるクルマに仕上がっていました。

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このスバル・360の基本構造を生かして開発した軽四輪トラックがサンバーでした。シャシーには当時としてはまだ一般的で、堅牢さに優れるラダーフレームを採用。サスペンションは、360のものをスプリングレートを上げて搭載され、フロントがトレーリングアーム式、リアがスイングアクスル式の4輪独立懸架で、商用車では前後とも車軸式が一般的だった当時は、異例の乗り心地の良さを実現しました。

エンジンは当時の360と同様の「EK32型(直列2気筒2ストローク・356cc)」で、最高出力は18ps。RRレイアウトによりエンジンが室内から遠いことで静粛性に優れ、360よりも静かだったと言います。トランスミッションは3速MT。

 
 
 
 
 
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ボディスタイルはキャブオーバー型で、ボンネット型よりも広い荷台面積を確保。荷台はエンジン搭載部分が階段状になっており、当初は2方開のみでした。
キャビンのデザインはバンパーが前に突出した特徴的なもので、通称「クチビルサンバー」と呼ばれました。乗降性に配慮し、左右のドアは360と同様に後部ヒンジ式を採用していました。

1961年2月、トラックのみでデビュー。既に大人気だった360から派生したモデルとして話題になっただけでなく、乗用車譲りの優れた乗り心地や走りも好評となり、一躍人気モデルとなりました。これは、フォルクスワーゲンのタイプⅠから派生した、1BOX車のタイプⅡと同じ展開でした。

 
 
 
 
 
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1961年9月には、3ドアのライトバンをラインナップに加え、後に4ドアも加わりました。トラック同様の階段状の荷室で、リアハッチは上下開き、後席ドアは前部ヒンジ式。
4人乗りのライトバンは、平日は仕事に、休日はファミリーカーとして使用でき、マイカー時代が到来する前のこの時代には重宝されました。折り畳み式の後部座席は、360よりも広いこともメリットの1つでした。

1962年12月、ライトバンに「デラックス」を追加しました。ウインドウ周りにステンレスのモールが入り、バンパーやホイールキャップなどはクロームメッキ化。ボディカラーにはライトオリーブの専用色が用意されました。2連ワイパー、2連サンバイザー、リアシート用灰皿、リアウインドウ用カーテンなど、ファミリーユースに向けた充実した装備内容でした。

1964年10月には、完全分離潤滑方式の「スバルマチック」を導入し、エンジン出力を20psに向上。
さらに、長尺物を積載したいという要望に応えた二段広床式を発売。エンジンルームがある最後部と同じ高さのパネルをキャビン背後まで伸ばし、高床の広い荷台にした仕様で、デッドスペースとなる元々の荷台面は鍵付きのロッカーとなりました。当時のカタログには、波板や襖などの建材だけでなく、原付を積載する写真も掲載され、荷台面積の広さを大いにアピールしました。


1966年1月、360よりも早くフルモデルチェンジを実施し、2代目K153/163型に移行。より洗練されてすっきりとしたデザインに生まれ変わり、エンジン出力も大幅に向上。
以降、RRレイアウトを崩さずに6代に渡って生産され、スバルを長年支えました。2012年以降は、ダイハツハイゼットOEM車となっていますが、その歴史ある車名は現在にも受け継がれています。

 
 
 
 
 
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リアエンジンの恩恵は、空荷の時でも十分なトラクションが駆動輪にかかることもありました。走行安定性、登坂性能などに優れたサンバーは、のちに「農道のポルシェ」として愛され、「営農サンバー(JAサンバー)」として農協の車両販売向けのサンバーが登場したほど。高速走行も多い赤帽向けには「赤帽サンバー」も販売されるなど、多くの場面で重宝されました。
初代から続くキャブオーバー型のリアエンジン車というパッケージングは、優れた軽トラックの形を表していたのでした。

 

 

 

【諸元】

 

 

 

スバル・サンバー(初代K151/161型)

全長×全幅×全高 2990mm×1300mm×1520mm
ホイールベース 1670mm
乗車定員 2/4名
エンジン EK32型 直列2気筒2ストローク 356cc(18ps/4700rpm)(~1964.10)
EK32型 直列2気筒2ストローク 356cc(20ps/5000rpm)(1964.10~)
駆動方式 RR
トランスミッション 3MT
タイヤサイズ 4.50-10 4P