【ホンダ】T360/T500(AK250/280型)

二輪車メーカーだったホンダが、初めて発売した四輪車T360は、スポーツカーのような高性能エンジンをミッドシップレイアウトした、あまりに衝撃的な軽トラックでした。

独自性の強いホンダのクルマ作りは、このT360から既に始まっていたのです。

 

 

 


【T360/T500(AK250/280型)の歴史】

 

 

戦後に創業したホンダは、1949年から二輪車の生産を開始。自転車にエンジンを後付けしたカブF型や、異例のロングセラーモデルとなるスーパーカブなど、ヒット作を生み出し、1955年には二輪車生産台数日本一を達成するなど、トップメーカーに成長。

1962年の東京モーターショー(当時:全日本自動車ショー)には、小型スポーツカーのS360/S500と、軽トラックのT360を出展して四輪車市場へと進出。
当時のモータリゼーションを考慮し、四輪車の需要はまだまだ商用車が多いことや、ホンダの二輪車の販売網を生かして売れることなどから、T360の開発が進められました。

出展された2台には、水冷直列4気筒DOHCエンジンが採用されており、エンジンはオールアルミ製、キャブレターは4基装備されるなど、非常に高性能。試作段階において、S360とT360で共用できるように設計されたものでした。
当時の軽自動車のエンジンは20ps程度が一般的な中、30ps/8500rpmを発揮し、異例の高出力エンジンであり、高回転型でもありました。
この高出力エンジンを操るためのトランスミッションには、当時の軽自動車では珍しい4速MTを採用。最高速度は100km/hに達しました。

エンジンは運転席下に配置されたミッドシップレイアウトで、良好な前後重量配分とし、空荷でもフル積載でも安定した走りが実現されていました。高さを抑えるために水平に倒して搭載され、荷台長も当時のトップクラスを誇りました。

短いノーズを持つセミキャブオーバーのようなボディスタイルで、愛らしいフロントマスクが特徴。
荷台のバリエーションには、フラットデッキやパネルバンも用意され、オプションで幌も装着可能でした。

 
 
 
この投稿をInstagramで見る

otto 05(@otto.05)がシェアした投稿

さらに特徴的なオプションは「スノーラ」。後輪をキャタピラに置き換えるパーツで、タイヤ交換の要領で装着できる画期的なものでした。前輪用のスキーとセットで販売され、主に雪上で使用するためのもの。

1963年8月に、S500よりも2ヶ月早く、ホンダ初の四輪車として発売。日本初のDOHCエンジン搭載車でもありました。
ライバルのダイハツハイゼット(初代L35型)が30万円だった中、34万9千円で発売され、割高感は否めませんでした。
発売後は、複雑な設計が仇となり、幾度となく設計変更が行われました。実用化されて間もない中で採用されたオルタネータはダイナモに変更され、シリンダーブロックは9回、クランクシャフトは6回も設計変更されました。

1964年9月には、エンジンを531ccに拡大し、38psにまでパワーアップしたT500を発売。S500用のエンジンを、商用車用にチューニングし直して搭載されました。荷台長は200mm延長され、最大積載量は400kgを実現しました。

1967年11月には、後継車となるキャブオーバータイプのTN360が発売され、販売終了。約4年間でT360が約11万台、T500が約1万台販売されましたが、既に軽トラックの販売台数は年間150万台を超えていた中で、シェアは6%程度に留まりました。
後継のTN360では、シンプルな設計の実用性が重視されたモデルとなり、アクティへと系譜を繋いでいきます。

 
 
 
この投稿をInstagramで見る

Mill(@chocochoco2237)がシェアした投稿

カタログに「いままでの常識を破ったトラックです!」と記載されているとおり、まさに常識破りの軽トラックだったT360は、商業的に成功したとは言えませんでしたが、初の四輪車とは思えないほど、ホンダらしさに溢れたモデルでした。

 

 

 

【諸元】

 

 

ホンダ・T360/T500(AK250/280型)

全長×全幅×全高 2990mm×1295mm×1525mm(T360)
3190mm×1295mm×1545mm(T500)
ホイールベース 2000mm
乗車定員 2名
エンジン AK250E型 直列4気筒DOHC 354cc(30ps/8500rpm)(T360)
AK280E型 直列4気筒DOHC 531cc(38ps/7500rpm)(T500)
駆動方式 MR
トランスミッション 4MT
タイヤサイズ 4.50-12 4P