【日産】マーチ(2代目K11型)
一躍日産を代表するモデルへと成長したマーチは、1992年にフルモデルチェンジを迎えました。
先代のようなスポーティなモデルは姿を消したものの、曲面を豊かに使った可愛らしいボディスタイルが人気となり、欧州でも高い評価を獲得しました。
【日産・マーチ(2代目K11型)の歴史】
1977年にダイハツ・シャレード(初代G10型)が登場すると、コンパクトハッチバックがようやく国内市場にも定着。各メーカーからエントリーモデルのハッチバック車が投入されました。その中でも一足遅れて1982年に発売されたのがマーチ(初代K10型)。
女性ドライバーに向けたグレード展開に加え、ターボエンジン搭載のスポーティグレードも話題となりました。初代マーチの代名詞ともいえるのが「スーパーターボ」で、ターボとスーパーチャージャーを組み合わせ、刺激的なドライビングが楽しめました。
発売から9年以上が経った1992年1月にフルモデルチェンジとなり、2代目K11型が登場しました。
新しくなったプラットフォームは、ホイールベースを60mm延長。駆動方式はFFのみで、のちに4WDが追加されています。
サスペンションはフロントがマクファーソン式、リアが4リンク式を採用。
エンジンも新開発され、58psの「CG10DE型(直列4気筒DOHC・997cc)」と、79psの「CG13DE型(直列4気筒DOHC・1274cc)」の2種類を用意し、先代のようなターボエンジンはラインナップされませんでした。
トランスミッションは5速MTと4速ATを基本に、1.3L車はATではなく日産初のCVTを採用。これは当時傘下にあったスバルから供給を受けたN-CVTでした。
ボディサイズは全長3695mm×全幅1585mm×全高1430mmで、先代に比べて全長は短く、全幅は広くなったものの、ほぼ同等サイズ。
スタイリングは2ボックスのハッチバックを踏襲しつつも、直線基調のデザインから一変、曲面を豊かに使用したものに生まれ変わりました。バリエーションは3ドアと5ドアをラインナップ。
デビュー時は、1.0L車の「i・z」「i・z-f」、1.3L車の「C#」「A#」「G#」のグレード展開。それぞれで3/5ドアと、MT/AT(CVT)を選択可能で、最上級のG#は3ドアのみでした。エアコン、パワーステアリング、パワーウインドウ、電動ミラーなどを、ほぼ全車に標準装備し、ライバル各車との違いをアピールしました。
欧州市場向けには、英国でも生産され、「マイクラ」として販売されました。国内の「日本カーオブザイヤー」のみならず、「欧州カーオブザイヤー」をはじめとする、欧州の賞レースでも多くの賞を受賞し、高い評価を受けました。
1992年4月には、1.0L車に最廉価グレードの「E♭」を追加。MT車で75.5万円と低価格で販売され、ライバル各車に対抗しました。
1993年1月、1.0L車にN-CVTを組み合わせた「B♭」を追加しました。
1993年11月の改良では、トリップメーターが全車に標準装備され、1.0L車のタイヤホイールサイズが12インチから13インチに変更されました。
また、E♭が廃止され、新たに「アウトストラーダ」「i・z セーフティグリップパッケージ」を追加。
1995年12月のマイナーチェンジでは、内外装の意匠変更を実施。
1996年6月には特別仕様車「F#」を、10月には特別仕様車「D#」、11月には特別仕様車「コレット」を発売し、グレードの充実化を図りました。
1997年5月に2度目のマイナーチェンジを受け、フロントグリルがエンジンフード一体型に変更。全車にデュアルエアバッグとABSを標準装備しました。
また、特別仕様車だったコレットがカタログモデル化されました。
1997年8月、オープンモデルの「マーチカブリオレ」を発売しました。ボディには補強材を加えて剛性を確保し、ロールバーを装着。ルーフにはソフトトップを採用し、電動開閉機構を備え、ソフトトップに組み込まれるリアウインドウは、ビニール製ではなく熱線入りのガラスを採用しました。
後席のシートバックに可倒機構が備わり、トランクルームと繋がることで、荷物の積載性にも考慮されていました。搭載エンジンは1.3Lのみで、MT車が169.8万円、CVT車が179.6万円。
1997年10月には、縦型メッキグリルと丸型ヘッドランプのレトロ調の外観を持つ「ボレロ」を発売。軽自動車を中心に、クラシカルな外観を持つ小型車がブームになっていた中、丸みを帯びたマーチの特性を生かして生み出したモデル。
12月には、1960年代英国風テイストの「ジューク」を追加しました。黒いボディカラーに、赤のボンネットとルーフというカラーリングが特徴。
1998年10月、カブリオレは廃止されました。
1998年11月には、コレットの装備を充実させた「コレットL」を追加。
さらに、横型メッキグリルと丸型ヘッドライトを装備した特別仕様車「ルンバ」を発売しました。
1999年11月に3度目のマイナーチェンジ。1.0L車は60psに出力を向上させ、1.3L車は85psの「CGA3DE型(直列4気筒DOHC・1348cc)」に変更。1.3L車の一部グレードには、マーチ初の4WD車も設定されました。
また、リアオーバーハングを延長してステーションワゴン風に仕立てた「マーチBOX」も発売。全長は3980mmにまで延長され、標準車に比べて広い荷室を確保しました。
2000年10月には、エンジン改良と共にグレード体系が見直されました。
同時に、コレットをベースに、アウトストラーダと同じメッシュグリルや、フォグランプ一体型フルカラードバンパーなどを装着した「Mia」を発売しました。
12月には、コレットをベースに、女性向け特別仕様車とした「カジュアルリミテッド」を発売。
さらに、丸型ヘッドランプが特徴の特別仕様車「ポルカ」も発売しました。
2001年4月、2代目マーチの国内登録100万台を記念した「コレット-f」を発売しました。
この時、マーチBOXは販売終了となりました。
2001年5月には、無印良品とのコラボレーションモデル「Muji Car 1000」を発売。無印良品の特色を生かし、簡素なデザインと実用性重視の装備内容が特徴でした。
2002年3月に3代目K12型にフルモデルチェンジとなり、販売を終了。初代に続きロングセラーモデルとなり、約10年に渡って販売されました。
3代目では、さらにラウンディッシュなボディ形状、カエル顔の可愛らしいデザイン、カラフルなカラー展開など、特に女性に人気となりました。
10年の間に100万台以上が販売された2代目マーチは、総合的に商品力の高いコンパクトハッチバックに仕上がっていたことが、その好調な販売に結び付きました。デビュー当初だけでなく、ライバル各車が1990年代後半に続々とモデルチェンジした後も、マーチの人気は衰えることはありませんでした。
その後、トヨタ・ヴィッツ(初代XP90型)やホンダ・フィット(初代GD1-4型)など、海外市場も見据えた国際戦略車的なコンパクトカーが登場したことで、ようやく衰えてきたものの、モデル末期でも月販5000台ペースで販売され、マーチの強さは相当なものだったことが伺えます。
【諸元】
日産・マーチ(2代目K11型)
全長×全幅×全高 | 3695mm×1585mm×1425mm(~1997.5) |
3705mm×1590mm×1425mm(~1997.5・G#/アウトストラーダ) | |
3720mm×1585mm×1425/1430mm(1997.5~) | |
3720mm×1585mm×1430mm(カブリオレ) | |
3720mm×1595mm×1445/1450mm(Mia) | |
3740mm×1585mm×1425/1430mm(ルンバ) | |
3980mm×1585mm×1450mm(BOX) | |
ホイールベース | 2360mm |
乗車定員 | 4名(カブリオレ) |
5名 | |
エンジン | CG10DE型 直列4気筒DOHC 997cc(58ps/6000rpm) |
CG13DR型 直列4気筒DOHC 1274cc(79ps/6000rpm) | |
駆動方式 | FF/4WD |
トランスミッション | CVT/4AT/5MT |
タイヤサイズ | 145SR12 |
155/70R13 | |
165/70R13 | |
175/60R13 |