【ダイハツ】ハイゼット(初代L35/36型)/ニューライン(初代L50型)

1960年に発売されたハイゼットは、現行の軽自動車の中で最も長い歴史を持つクルマ。

現在に至るキャブオーバー型は2代目からで、初代はまだボンネット型でした。このボンネット型のL系は、フェローへと受け継がれ、クオーレそしてミラへと系譜が続いているのです。

 

 

 


ハイゼット(初代L35/36型)/ニューライン(初代L50型)の歴史】

 

 

戦後の日本におけるモータリゼーションは、もっぱらオート三輪やオートバイ。1949年に軽自動車規格が制定され、1950年代になると軽三輪トラックが登場し始めました。新興メーカーを含めて様々な中小メーカーがこの市場に参入しましたが、その中で優れていたのは1953年に発売されたホープ自動車ホープスター(ON型)で、富士産業製の4サイクル単気筒エンジンを搭載し、オープンタイプでバーハンドル仕様の1人乗り。

そして次の成功例は、オート三輪市場の大手メーカーだったダイハツが、軽三輪トラックに目を付けて開発し、1957年に発売したミゼット(初代DK/DS型)。幌屋根でドアは無く、バーハンドル仕様の1人乗りでしたが、先行車と比べて廉価だったことが功を奏し、大ヒットを記録し始めました。

1959年にミゼットは、ドア付きで丸ハンドル仕様の2人乗りへと上級移行を果たし、同年にはマツダ・K360(KTBA43型)や三菱・レオ(LT10型)なども同じような仕様で登場。しかし、従前のバーハンドル型のような軽便性は失われ、荷台長は短くなり、軽トラック市場でも四輪車が台頭するようになったのです。

中小メーカーから軽四輪トラックが発売される中、大手メーカーで先陣を切ったのがハイゼット。1958年には開発に着手し、1960年11月に販売が開始されました。
シャシーは耐久性の高いラダーフレームとし、前輪サスペンションはダブルウィッシュボーンで独立懸架。
エンジンはハイゼット用に開発された「ZL型(空冷2ストローク2気筒・356cc)」で、出力は17ps。トランスミッションに3速フロアMTが採用され、2,3速にシンクロ機構を備えました。

 
 
 
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当時の軽自動車規格に収まるボディサイズは、全長2990mm×全幅1290mm×全高1420mmで、フロントにエンジンを収めたボンネット型として登場し、トラックのみでデビュー。ボンネットを有したことで、荷台長1075mm×荷台幅1090mmと、荷台面積は決して大きくありませんでした(2014年発売の10代目S500/510型は、荷台長1940mm×荷台幅1410mm)。最大積載量は350kgで、現代の軽トラックと同一です。

1961年5月にライトバンパネルバンを追加しました。ライトバンは250kg積、パネルバンはトラックと同一の350kg積。
また、無塗装だったバンパーはメッキに変更され、フロアシフトからコラムシフトへ変更となりました。

ライバル車も続々と発売され、1961年2月にマツダ・B360(KBBA33型)とスバル・サンバー(初代K151型)、4月に三菱・360(LT20型)、10月にスズキ・キャリイ(初代FB型)と、大手メーカーの軽トラックがほとんど出揃いました。この中では、サンバーだけがフルキャブオーバー型を採用しており、その他はボンネット型でした。積載能力ではキャブオーバー型が有利なのは言うまでもありませんが、当初はリアに搭載されたエンジンスペースのせいで荷台面積を十分に活用できておらず、キャビンとエンジンの間のスペースが荷台となっていました。

1962年11月には、荷台長とホイールベースを延長した小型車版のニューライン(初代L50型)を発売。トラック・バン共にラインナップされました。エンジンはコンパーノ(F30/40型)用の「FC型(直列4気筒OHV・797cc)」が搭載され、41psを発揮。

1963年11月にマイナーチェンジを受け、フロントマスクを変更。従来の縦ルーバーの簡素なフロントグリルから、コンパーノに似たマスクへ変更されました。ニューラインも同様のマイナーチェンジを実施しました。

積載能力や前方視認性の良さなど、キャブオーバー型のニーズが高まると、1964年4月に2代目となるハイゼットキャブ(S35/36型)を発売しましたが、バンの追加が遅れたことや、ボンネット型のニーズもまだあったことなどから、初代のボンネット型もしばらく併売されることになりました。

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1966年1月に一足早くニューラインが生産終了。前年10月にコンパーノにピックアップトラックがラインナップされていたことと、実質の2代目となるニューラインキャブ(S50型)が2月から発売されることによるものでした。ニューラインキャブは、ハイゼットキャブの小型車登録版。

併売中の1966年10月にもマイナーチェンジを実施。フロントの意匠変更により、グリルはさらに大型化。また、空冷エンジンのZL型から、水冷の「ZM型(2ストローク直列2気筒・356cc)」に全車変更。

そして1967年11月に生産終了。前年に発売されていて、ピックアップトラックもラインナップしたフェロー(初代L37型)が直接の後継車となりました。型式上もフェローがL系を引き継いでおり、フェローMAX、MAXクオーレ、クオーレ/ミラクオーレを経て、ミラへと血筋が流れていることが分かります。

ハイゼットのキャブオーバー化を引き金に、1966年登場のキャリイ(3代目L30型)、三菱・ミニキャブ(初代LT30型)がキャブオーバーとしてデビューするなど、軽トラック市場は一気にキャブオーバー型へと移行し、現代まで続く軽トラック文化を作りました。
また、大手オート三輪メーカーだったダイハツは、ハイゼットの発売で一早く四輪市場に舵を切り、スズキと双璧をなす軽自動車メーカーへと成長を果たしたのです。

 

 

 

【諸元】

 

 

ダイハツハイゼット(初代L35/36型)

全長×全幅×全高 2990mm×1290mm×1420mm(トラック)
2990mm×1290mm×1435mm(ライトバン
ホイールベース 1940mm
乗車定員 2/4名
エンジン ZL型 空冷2ストローク直列2気筒 356cc(17ps/5000rpm)
ZM型 水冷2ストローク直列2気筒 356cc(23ps/5000rpm)
駆動方式 FR
トランスミッション 3MT
タイヤサイズ 4.50-12 4P(バン)
4.50-12 4P/4.50-12 6P(トラック)

 

ダイハツ・ニューライン(初代L50型)

全長×全幅×全高 3340mm×1290mm×全高1450mm
ホイールベース 2220mm
乗車定員 2/4名
エンジン FC型 直列4気筒OHV 797cc(41ps/6000rpm)
駆動方式 FR
トランスミッション 3MT
タイヤサイズ 5.00-12 4P/5.00-12 6P