【スズキ】スズライト(2代目TL/FE型)/スズライトフロンテ(初代TLA/FEA)

商用バンのみに絞られて発売された2代目スズライトは、よりスタイリッシュなデザインに変貌を遂げて好調な販売を見せ、乗用車仕様のスズライトフロンテを派生させました。

アルト登場までの間、スズキを代表するモデルだったフロンテの誕生を振り返ります。

 

 

 


【スズキ・スズライト(2代目TL/FE型)/スズライトフロンテ(初代TLA/FEA型)の歴史】

 

 

自動織機の製造から、二輪車メーカーへと転換したスズキは、1955年にスズライト(初代SS/SL/SP/SD型)を発売して四輪車市場へ進出。海外の小型自動車を購入して研究を進めた結果、当時は不可能とまで言われていた軽自動車規格の中で、初めて量産型軽自動車を実現しました。

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1955年と言えば、国民車構想が提唱された年であり、自家用車としての需要はまだほとんどなく、2年後には商用登録のライトバンのみに車種整理されて、生産が継続されていました。

1958年のスバル・360(K111/212型)発売を機に、軽自動車市場は活性化を始め、スズライトは1959年にフルモデルチェンジを実施し、2代目TL型へと発展しました。

初代モデル発売当初の欠点が、当時軽自動車にちょうどいいサイズのタイヤが世の中になかったこと。16インチの大径タイヤを採用せざるを得なかったことで、軽自動車規格の限られたスペースをうまく活用することが出来ていませんでした。
しかし、スバル・360向けに開発された10インチタイヤに代表されるように、この頃には小径タイヤも製造されるようになっており、スズライトは12インチを選択。ホイールベースも50mm延長されました。

サスペンションは、前後ともにリーフスプリングを採用した4輪独立懸架を踏襲。
エンジンは初代からキャリーオーバーされた2気筒エンジンで、15.1psから21psにまでパワーアップされました。

タイヤの小径化により、より小型自動車らしいスタイリングが実現でき、初代より全高を低く設定した2ボックススタイルで、当時としてはスタイリッシュなものでした。2灯式ヘッドライトや大型のフロントグリルなどは、初代のイメージを踏襲しつつ、より直線的なフォルムに変貌を遂げました。

1959年7月に発売されると好調な販売を見せ、当初200台だった月販は、2年後には1000台にまで増加。同年にスバル・360には商用モデルの「コマーシャル」が追加されていましたが、無理のあるパッケージングのために実用性に乏しく、短期間で生産を終了しており、商用ライトバンとしては、スズキの勝利でした。

1960年10月にマイナーチェンジが実施され、フロントグリルがメッキタイプに変更されたほか、シングルブレードだったワイパーが2ブレードに変更となりました。

1961年11月にもマイナーチェンジが行われ、ウインカー位置を変更。当初はBピラーに設置されていましたが、フロントグリル内とリアテールに置かれ、視認性を向上させました。
さらに、横開き式だったテールゲートは、上下開きに変更され、実用性も向上しました。

1962年3月には、乗用車仕様のスズライトフロンテを発売しました。スバル・360の大ヒットにより、軽乗用車の需要が増えてきたことによるもので、同年には三菱・ミニカ(初代LA20型)やマツダ・キャロル(初代KPDA型)などもデビュー。
サスペンションのスプリングレートを落として乗り心地を改善し、独立したトランクルームを設置した4人乗りの2ドアセダン。外観はバンと同意匠でしたが、専用フロントグリル等を採用するなどで差別化を図りました。

1962年10月には、バンにマイナーチェンジが実施され、フロントの意匠を変更。

1963年4月にもバンをマイナーチェンジし、FE型となりました。オイルとガソリンを自動混合する「セルミックス」方式が採用され、トランスミッションを4速化したほか、ボディの形状を変更して荷室を拡大しました。

翌月にはフロンテもマイナーチェンジとなり、セルミックスの採用と4速化によってFEA型となりました。

 
 
 
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1965年10月のマイナーチェンジでは、エンジンオイル直接噴射方式「CCI」を採用しました。また、フロントマスクのデザインを、左右のヘッドライト間に直線的なグリルを配置するものに変更。

1967年4月にフロンテがフルモデルチェンジとなり、2代目LC10型にバトンタッチ。

kuruma-bu.hatenablog.comバンは、1969年1月にフロンテバン(初代LS10型)発売と同時に生産終了となりました。
2代目フロンテは駆動方式をRRに変更し、高性能エンジンも設定されるなど、スポーティな路線で人気となりました。一方、RR採用により、商用車との車体共用が難しくなってしまったことで、フロンテバンはFRレイアウトで新規に開発されました。

国民的大衆車の悲願はスバル・360に達成されてしまったスズキでしたが、スズライトはお手本ともいえる2ボックススタイルの採用によって、息を吹き返しました。
また、乗用仕様のフロンテは、1970年代を代表する軽自動車に成長し、その後アルトを派生させて、日本の軽自動車市場を支える大きな存在へと発展したのです。

 

 

 

 

【諸元】

 

 

 

スズキ・スズライト(2代目TL/FE型)/スズライトフロンテ(初代TLA/FEA型)

全長×全幅×全高 2990/2995mm×1295mm×1380mm
ホイールベース 2050mm
乗車定員 2/4名
エンジン TL型 2ストローク2気筒 360cc(21ps/5500rpm)(~1963.4)
FE型 2ストローク2気筒 359cc(21ps/4500rpm)(1963.4~1965.10)
FE2型 2ストローク2気筒 359cc(22ps/5000rpm)(1965.10~)
駆動方式 FF
トランスミッション 3MT/4MT
タイヤサイズ 4.50-12 4P