【ダイハツ】タフト(初代F10/20/50/60型)

ランドクルーザーなどの本格的なオフロード4WDと、軽オフロードのジムニーとの間を生める車種として1974年に登場したタフト。

軽いボディとパワフルなエンジンによって、ダイナミックな走りを実現しました。

 

 

 


ダイハツ・タフト(初代F10/20/50/60型)の歴史】

 

 

タフトが発売された1974年当時、4WD車と言えば、いわゆるジープタイプの本格オフロード車でした。その筆頭は、警察予備隊(後の陸上自衛隊)向けの競争入札をルーツに持つ、トヨタ・ランドクルーザーや日産・パトロール、三菱・ジープなどで、警察や消防向けを主な販路としていました。
1970年からは、軽自動車のスズキ・ジムニー(LJ10/20/SJ10型)が発売され、小型で軽量なボディに本格的な4WD機構を有することで、優れた機動力を発揮し、商業的にも成功を収めていました。

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いわば軍用車として設計されていたジープなどは、高い悪路走破性を実現した反面、舗装路の街乗りには向かず、一般ユーザーには扱いにくいクルマでした。
ジムニーは、悪路性能は抜群ながら、エンジンが小さいことにより、舗装路では速度が上がらず、普段乗りには厳しい一面がありました。
そこでダイハツが、その中間を埋める車種としてタフトを開発しました。

当然ながらシャシーは頑丈なラダーフレームで、前後のサスペンションにはリーフスプリングによる車軸式を採用。4WDは、副変速機付きトランスファーによるパートタイム式としました。

エンジンは、1960年代にコンパーノ(F30/40型)向けに開発され、その後コンソルテ(P30型)に搭載されていた「FE型(直列4気筒OHV・958cc)」で、シングルキャブ仕様で58psを発揮しました。
トランスミッションは4速MTのみ。

標準ボディの全長3320mm×全幅1460mm×全高1860mmのボディサイズは、1998年以降の軽自動車規格より若干小さいものなので、おおよそは現代のジムニーサイズ。横向きに対面する後部座席を持つ4人乗りで、商用登録の4ナンバー車でした。
さらに、リアオーバーハングを延長して全長を3485mmとしたロングボディも用意され、後席対面シートに4人が乗車できる6人乗りでした。

スタイリングはジープのイメージそのもので、ルーフもドアもないオープンピックアップ。前席後ろにはボディ同色のロールバーが装備され、ドアの代わりには2本のバーが取り付けられていました。幌のルーフとドアを取り付けることも可能でしたが、その組み立てには45分程を要すると言われています。リアゲートは後席乗降性を考慮した観音開き式を採用していました。
鋼板ドア仕様車や、ルーフも鋼板製としたバンも設定。

タフトの由来は「Tough & Almighty Four wheel Touring vehicle」の略で、1974年8月にデビュー。ジープよりも扱いやすく、ジムニーよりもパワフルという、狙いでデビューしたものの、よりパワフルなジープや、維持費の安いジムニーに対抗することは難しく、販売成績は厳しいものでした。

1976年9月のマイナーチェンジでは、トヨタ製の「12R-J型(直列4気筒OHV・1587cc)」を搭載した「タフト・グラン」を追加しました。従来のエンジンルームに1.6Lエンジンは収まらず、ボンネットに膨らみを持たせて搭載され、標準ボディとロングボディを用意。
1.0L車は標準ボディのみが継続生産されました。

1978年9月に2度目のマイナーチェンジを受け、フロントデザインを変更し、自社製の「DG型(直列4気筒OHVディーゼル・2530cc)」搭載車を追加。ディーゼル車のバンには「デラックス」が設定され、これがタフト初のグレード設定でした。インパネ中央に補助メーター類の装備や、チェック柄のシートなど、自家用ユーザーに向けたグレード。

ディーゼル車が登場すると、主力はガソリン車からディーゼル車に移っていき、昭和54年排ガス規制対応のためもあって、1.6L車の標準ボディと1.0L車は生産中止。

1980年4月からは、トヨタにブリザード(初代LD10型)としてOEM供給。ランドクルーザーの弟分として発売され、トヨタ製の2.2Lディーゼルが搭載されました。

1981年10月には、ガソリン車は廃止されてディーゼルに一本化されました。幌タイプ用のバスタブボディにFRPハードトップを載せたレジントップを新たに設定。

1982年11月に3度目のマイナーチェンジとなり、ディーゼルエンジンを変更。「DL型(直列4気筒OHVディーゼル・2765cc)」が搭載されました。1.0Lでスタートした、おおよそジムニー程度の大きさのクルマに、トラック用の2.8Lディーゼルエンジンを搭載するなど、大手メーカーでは考えられない展開です。

この頃には、レジントップやバンはデラックスのみとなっただけでなく、幌タイプにもデラックスが設定されるなど、RV時代の到来を予感させるものとなっており、オプションが満載された受注生産の特別仕様車「タフトスペシャル」も発売されました。

1984年4月に、後継車であるラガー(F70型)にモデルチェンジとなり生産終了。
ボディサイズは一回り大きくなり、スタイリングもより洗練されたものに変更されました。1982年に登場した三菱・パジェロ(初代L040/140型)を発端に、RVブームが始まり、乗用登録のワゴンやターボ車の設定など、ダイハツもブームに乗った戦略が取られていきました。

kuruma-bu.hatenablog.comその後、1997年にテリオス(J100型)発売とともに、ラガーも生産を終えました。

1970年代には、まだRVやSUVといった言葉は存在せず、ジープタイプの4WD車をマイカーとして使うユーザーは極めて稀でした。
そんな時代にタフトがヒット作になる可能性はほとんどありませんでしたが、取り回しのいいサイズの4WD車を作り、一般向けグレードなども設定するなど、いずれ到来するRVブームを見据えたようなクルマがタフトでした。

 

 

 

【諸元】

 

 

ダイハツ・タフト(初代F10/20/50/60型)

全長×全幅×全高 3320mm×1460mm×1860mm(標準ボディ)
3485mm×1460mm×1860mm(ロングボディ)
ホイールベース 2025mm
乗車定員 2/4/6名
エンジン FE型 直列4気筒OHV 958cc(58ps/5500rpm)(~1979)
12R-J型 直列4気筒OHV 1587cc(80ps/5200rpm)(1976.9~1981.10)
DG型 直列4気筒OHVディーゼル 2530cc(75ps/3600rpm)(1978.9~1982.11)
DL型 直列4気筒OHVディーゼル 2765cc(77ps/3600rpm)(1982.11~)
駆動方式 4WD
トランスミッション 4MT/5MT
タイヤサイズ 6.00-16 4P
H78-15-4P