【いすゞ】ロデオビッグホーン(初代UBS12/13/17/52/55型)

北米で流行していた遊び心あふれるSUVピックアップトラック。いずれ日本でも流行すると読んだいすゞが、他メーカーに先駆けてデビューさせたのが、ロデオビッグホーンでした。

ランドクルーザージムニーなどの本格4WDを除くと、このロデオビッグホーンが日本初の遊ぶためのSUVでした。

 

 

 

 


【ロデオビッグホーン(初代UBS12/13/17/52/55型)の歴史】

日本国内では「4WD=ジープタイプ」のイメージしかまだなかった1970年代。さらに言えばそれは「悪路や雪山を走る仕事のためのあるクルマ」でした。
一方、北米市場ではアウトドアをはじめとしたレジャーや遊びのためのクルマとして、いわゆるSUVピックアップトラックが既に人気となっていました。

いすゞは、従来から販売していたピックアップトラックであるファスターを、1980年に2代目KB40型にフルモデルチェンジ。この時に4WDモデルを追加し、「ファスターロデオ」とサブネームが付けられました。
ファスターロデオは、乗用車のような装備やカラーリングが特徴で、荷物を運ぶ商用車としてのピックアップではなく、遊び心溢れる、SUV要素が強いモデルでした。北米市場では当時提携していたGMから販売されて、成功を収めていました。

この遊び要素の強いSUVは、やがて日本でも流行すると読んだいすゞは、ファスターロデオをベースとしたSUVの開発に着手し、それがロデオビッグホーン。
国内でも海外でも通用し、オフロードでもタウンユースでも使い勝手がよく、乗用車のような快適さを持ち、多目的にふさわしい荷室を備えたクルマがコンセプトとされました。

スクエアなスタイリングと直線基調なデザインを採用して無骨さをアピールしましたが、イギリスの高級SUVであるランドローバー・レンジローバーに似たフロントマスクから、「プアマンズ・レンジローバー」と批判されました。
ショートとロングの2種類のホイールベースが用意されましたが、当初は全て2ドアで、4ナンバーのバンのみ。ソフトトップとメタルトップの2種類がラインナップされました。当初搭載されたのは「C223型(直列4気筒ディーゼル・2238cc)」の1種類で、大きなボディにはかなり非力な73psの出力。

1981年9月にデビューしましたが、販売も評判も不調。スタイリッシュなデザインにハイパワーエンジンを搭載したスペシャリティカーが人気の時代に、地味なデザインと非力なエンジンでは、ユーザーは魅力を感じませんでした。
さらに1982年5月には、同一コンセプトとなる三菱・パジェロ(初代L040/140型)がデビュー。より精悍なマスクと豊富なボディラインナップにより、パジェロの大勝でした。

1984年1月、非力さの改善のためにディーゼルターボエンジン搭載車を追加。「C223-T型(直列4気筒SOHCディーゼルターボ・2238cc)」で87psにまで引き上げました。さらに105psを発揮する「G200型(直列4気筒SOHC・1949cc)」を搭載したガソリンエンジン車も設定。
また、後席の居住性を向上させた乗用モデルのワゴンを追加。シートやインパネなどの内装はバンよりも高級感を持たせてワゴンらしいものとしました。
同時に、ロデオの名が外れて単に「ビッグホーン」と名乗りました。

1985年6月には、ロングボディ車は2ドアから4ドアへ変更しました。当初4速だったトランスミッションは5速に変更し、燃料タンクも拡大。集中ドアロックやパワーウインドウも一部に採用するなど、快適装備の充実も図りました。ガソリンエンジンは「4ZC1型(直列4気筒SOHC・1994cc)」に変更。

乗用モデルや4ドア車も追加によってバリエーションを拡大しましたが、より魅力を持っていたパジェロトヨタハイラックスサーフ(初代N60型)を前に、ビッグホーンの販売成績は伸び悩んでいました。
1987年1月にマイナーチェンジを実施し、フロントマスクのデザイン変更を実施。サスペンションの改良とワイドトレッド化を行い、走行安定性や乗り心地を向上させました。

10月になると、ドイツのチューニングメーカーであるイルムシャー社が足回りをセッティングし、レカロ製のシートやモモ製ステアリングを装備した「イルムシャー」を発売。「4JB1-T型(直列4気筒SOHCディーゼルターボ・2771cc)」を搭載し、110psを発揮。
また、内外装を充実させたトップグレードの「エクスポート」も追加。輸出仕様の外観に、アームレスト付きのキャプテンシートや本革巻きステアリングなどを装備しました。

 
 
 
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1988年6月には、よりスポーティ仕様の「イルムシャーR」を発売。イルムシャーにさらにワイドなタイヤを装着し、オーバーフェンダーを装備したことで、全幅1700mmを超え、1ナンバー登録となりました。

11月にはさらに「イルムシャーG」と「イルムシャーS」を追加しました。
イルムシャーGは、乗用モデルに120psの「4ZE1型(直列4気筒SOHC・2559cc)」を搭載し、電子制御式の4速ATも搭載したモデルで、3ナンバー登録。
イルムシャーSは、バンモデルにインタークーラー付の4JB1-T型を搭載したモデル。

1989年11月には、ロータスがサスペンションチューニングを手掛け、操縦安定性と乗り心地を向上させた「スペシャルエディション・バイ・ロータス」を追加。エクスポートとイルムシャーGはこの時廃止されました。

1991年12月、2代目モデルの登場によりフルモデルチェンジ。2代目では大型化して3ナンバー専用ボディとし、エンジンもより強力なものを搭載し、ライバル他車よりも乗用車感覚で乗れる上質さも備えました。
それでもパジェロハイラックスサーフには敵いませんでしたが、2002年にいすゞが乗用車事業から完全撤退するまで、いすゞのフラッグシップとして活躍しました。

 
 
 
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国産SUVの先駆車として登場したロデオビッグホーンでしたが、後発のパジェロハイラックスサーフには完敗する結果となりました。
街の中は様々なタイプのSUVで溢れる時代となりましたが、その先駆であるビッグホーンを送り出したいすゞが、乗用車事業から撤退していることは寂しい限りです。

 

 

 

【諸元】

 

 

いすゞ・ロデオビッグホーン(初代UBS12/13/17/52/55型)

全長×全幅×全高 4075/4120/4200mm×1650/1760mm×1800/1820/1845mm(ショート)
4425/4470/4550mm×1650/1760mm×1800/1820/1845/1950mm(ロング)
ホイールベース 2300mm(ショート)
2650mm(ロング)
乗車定員 5名
エンジン G200型 直列4気筒SOHC 1949cc(105ps/5400rpm)
4ZE1型 直列4気筒SOHC 1949cc(120ps/5000rpm)
4ZC1型 直列4気筒SOHC 1994cc(105ps/5400rpm)
C223型 直列4気筒SOHCディーゼル 2238cc(73ps/4300rpm)
C223-T型 直列4気筒SOHCディーゼルターボ 2238cc(87ps/4000rpm)
4JB1-T型 直列4気筒SOHCディーゼルターボ 2771cc(110ps/3600rpm)
4JB1-T型 直列4気筒SOHCディーゼルICターボ 2771cc(115ps/3600rpm)
駆動方式 4WD
トランスミッション 4AT/4MT/5MT
タイヤサイズ H78-15-4PR
215SR15
215/80R15
31*10.5R15 6P
6.00-16 6P
205/80R16
215/80R16