【トヨタ】ハイラックスサーフ(初代N60型)

アウトドアブームに沸いた1980年代初め、各メーカーからRV車が続々とデビューする中、トヨタからはハイラックスサーフが満を持して登場。

三菱・パジェロと共に、RVブームの中心的存在となりました。

 

 

 


トヨタハイラックスサーフ(初代N60型)の歴史】

 

 

1970年代に流行の兆しを見せ始めたアウトドアブーム。1970年代のうちに登場し始めたのは、多人数が乗車できて、荷物も多く積むことができる1BOX車でした。
1980年代になると、さらにアウトドア志向の、ピックアップトラックをベースにしたRV車をリリース。荷物の積載は当然のことながら、多少の悪路を走破できる本格4WD、キャブオーバー1BOXとは一線を画すスタイリッシュなデザイン、様々な用途に対応できる高い利便性など、多様化を迎えるマイカー市場には打ってつけでした。

1970年代までのRV車はいわゆるジープタイプの本格オフローダー。トヨタ・ランドクルーザー、日産・パトロール、三菱・ジープの大柄な3車種に加え、1970年代には軽自動車のスズキ・ジムニー(初代LJ10/20/SJ10/20型)が登場し、その間を埋める車種としてダイハツ・タフト(F10/20/50/60型)が1974年にデビュー。タフトのOEM車として、トヨタ・ブリザード(初代D10型)も1980年から販売されました。
これらの車種は、無骨な見た目を持つ本格的な悪路走破のためのクルマで、マイカーとして所有する人は極めて稀でした。

新しい時代のRV車を開発するにあたり、各メーカーは北米のSUVを参考にしました。それは、小型ピックアップトラックの強靭なシャシーに、ハードトップボディを被せる手法で、既存コンポーネンツもうまく使えるため、低コストで開発することが出来たのです。
先行していたのは、1981年発売のいすゞ・ロデオビッグホーン(初代UBS12/13/17/52/55型)、1982年発売の三菱・パジェロ(初代L040/140型)。

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トヨタには1981年から、小型ピックアップトラックのハイラックス(3代目N30/40型)をベースに、FRP製のシェルを架装したRV車が存在。設計や架装、販売は北米のウィネベーゴインダストリー社が担当し、「ウィネベーゴ・トレッカー」の名前で販売されており、既にハイラックスサーフのコンセプトを実現したものでした。

ロデオビッグホーンやパジェロのヒットを受けて、トヨタも独自車種のデビューに向けて、ウィネベーゴ・トレッカーを自社に取り込み、新モデルを開発。
輸出向けは「4 Runner」、国内向けは「ハイラックスサーフ」と名乗りました。

1983年にモデルチェンジしたハイラックス(4代目N50/60/70型)の4WD車をベースとし、前後ともリーフスプリングの車軸式サスペンションを採用。スプリングをアクスルハウジングの上で固定するタイプとしており、地面とのクリアランスを多く取ることが出来る反面、操縦安定性や乗り心地は犠牲になりました。

エンジンは、105psの「3Y-J型(直列4気筒OHV・1988cc)」と、83psの「2L型(直列4気筒SOHCディーゼル・2446cc)」をラインナップ。
トランスミッションは5速MTのみが用意されました。

ボディサイズは全長4435mm×全幅1690mm×全高1745mmで、ハイラックスのショートボディにFRP製のルーフを被せたもので、ルーフは着脱が可能で、オプション設定のサンルーフも備えれば、オープンスタイルも楽しめる仕様になっていましたが、ルーフを取り外した状態での公道走行は認可されていませんでした。

デビュー時は全車4ナンバーバン扱いで、基本グレードの「SR」に加えて、「SSRパッケージ」がラインナップされました。SSRパッケージには、フロントメッキバンパーやラジアルタイヤ、ハロゲンヘッドランプ、リアワイパー、パワーステアリング、傾斜計などが装備されました。
アウトドア感を高めるものとして、サイドストライプやLSD、電動ウインチなどもオプション設定。

1983年10月に北米向けに先行発売され、国内では1984年5月に販売開始。メインマーケットは北米で、生産台数の約7割は輸出されました。国内でも予想以上の販売成績を収め、バリエーションの充実化を望む声が増え始めました。

1984年11月には、ディーゼルターボ車を追加。搭載されたのは「2L-T型(直列4気筒SOHCディーゼルターボ・2446cc)」で、96psを発揮。

1985年8月、オンロードでの性能を改善するため、フロントサスペンションを変更。ダブルウィッシュボーン式の独立懸架を採用しました。ベース車のピックアップの4WD車は、発展途上国や業務用に悪路を走るユーザーが多いことから、タイヤが路面から離れにくい、従来通りの車軸式を踏襲しました。

1986年8月にマイナーチェンジを受け、5ナンバー登録となる「ワゴン」を発売。排ガス規制の関係で「3Y-EU型(直列4気筒OHV・1998cc)」のみで、ハイラックス初となる4速AT車が設定されました。グレードは「SSRリミテッド」とされ、5ナンバーにふさわしい上質なシートが組み込まれた5人乗り。

1989年5月にフルモデルチェンジとなり、2代目N130型へバトンタッチ。ライバル他車に先駆けたモデルチェンジで、乗用車志向を強めたモデルに変貌を遂げ、1991年にモデルチェンジとなるパジェロと、クラストップの座を競う人気モデルとなりました。

1980年代のRV車の創成期には、セオリーがまだ存在しておらず、メーカーによって個性が分かれていました。ビッグホーンやパジェロは、ピックアップのシャシーを使いながらも、ボディは専用設計のものを載せており、乗用車的なイメージ戦略をしていましたが、ハイラックスサーフはピックアップがベースであることが分かるようなデザインを採用しました。
北米などへの輸出も考慮したものと思われますが、これが逆に男らしいアウトドア車を演出し、人気の一因になりました。「サーフ」というアウトドア感溢れるネーミングも憎い演出です。

 

 

 

 

【諸元】

 

 

 

トヨタハイラックスサーフ(初代N60型)

全長×全幅×全高 4435mm×1690mm×1745mm
ホイールベース 2610mm
乗車定員 2/5名
エンジン 3Y-J型 直列4気筒OHV 1998cc(105ps/5200rpm)
3Y-EU直列4気筒OHV 1998cc(97ps/4800rpm)(ワゴン)
2L型 直列4気筒SOHCディーゼル 2446cc(83ps/4000rpm)
2L-T型 直列4気筒SOHCディーゼルターボ 2446cc(96ps/4000rpm)
駆動方式 4WD
トランスミッション 4AT/5MT
タイヤサイズ H78-15B
215R15 6P