【日産】パトロール(初代4W60型)

三菱・ジープに競争入札で敗れた日産・パトロールは、トヨタ・ランドクルーザー同様に民需の道に活路を見出しました。

国内販売は終了していますが、海外向けには6代目Y62型まで発展しており、大型高級SUVとして生産され続けています。

 

 

 


【日産・パトロール(初代4W60型)の歴史】

 

 

後に陸上自衛隊となる警察予備隊は、主に米軍から供与された車両を使用していましたが、いわゆるジープ型の小型トラックの国産化が次第に進められ、トヨタ・日産・三菱(当時は中日本重工業)の3社による競争入札が実施されました。

1951年9月に4W60型の試作車が完成し、競争入札に参加。トヨタは同年8月に完成させたジープBJ型(後のランドクルーザー)、三菱は既にノックダウン生産が決定していたウイリス・ジープで入札に参加しました。
結果は本命の三菱で、米軍と装備の共用が出来ることなどから、当然の選択と言えました。入札に敗れたトヨタと日産は、民生向けに活路を見出し、共に警察や消防で多く導入されました。

シャシーは頑丈なラダーフレームの4WDで、4WD、ニュートラル、2WDの3ポジションのトランスファーを用いたパートタイム式。ウインチングに必要となるPTO装置の装備も可能でした。
サスペンションは、前後ともリーフリジッドを採用した車軸式。

エンジンには、大型トラック用の「NA型(直列6気筒SV・3670cc)」を搭載し、出力は82ps。三菱・ジープは2.2Lエンジンを搭載しており、それよりも強力なエンジンを採用しましたが、当時のトヨタや日産にはちょうどいい排気量のエンジンが存在せず、やむを得ず大型トラック用を用いたというのが本来のところ。

ボディサイズは全長3615mm×全幅1700mm×全高1930mm。
ドアのないオープンボディに幌屋根を備え、独立フロントフェンダーを設けた点など、
外観はジープの影響を大きく受けていました。トヨタも同様の外観でしたが、違いはエンジンの搭載位置。フロントアクスル後方にマウントしたトヨタに対し、日産はアクスルにオーバーハングする形で搭載されており、わずかながらショートノーズ・ロングデッキを実現し、有効面積が大きく取られています。

1955年頃には、エンジンが「NB型(直列6気筒SV・3670cc)」に変更され、85psに出力向上。エンジンフードやラジエターカバーの変更や、メッキの装飾も加えられ、民間向けとしてデザインにも手を入れられました。
また、前席がセパレートシートからベンチシートに変更されたほか、インパネのデザインも変更されてセンターメーターのレイアウトとなりました。

1958年には、105psを発揮する「NC型(直列6気筒SV・3960cc)」に変更されました。

さらに1959年には、エンジンが「P型(直列6気筒OHV・3960cc)」となり、130psを発揮するOHVに発展を遂げました。

1960年10月にフルモデルチェンジとなり、2代目60型となりました。ホイールベースやボディタイプのラインナップも拡充し、特に消防用シャシーは全国に広く配備されました。
1980年代になると、国内向けにはサファリとして販売され、ランドクルーザーと共に大型本格RV車として活躍し、2007年以降は海外専売車種となり、生き続けています。

入札に負けた歴史から生まれた日産・パトロールトヨタ・ランドクルーザーは、警察や消防向けに販路を見出して発展を遂げた2台。ランドクルーザーのような、世界で大活躍する車種にはなれなかったパトロールでしたが、オフロード車にメッキ装飾を施すなどの当時としては珍しいことも行っており、後のRVブームを30年以上前に先取りしていたとも言えるかもしれません。

 

 

 

【諸元】

 

 

 

日産・パトロール(初代4W60型)

全長×全幅×全高 3615mm×1700mm×1930mm
ホイールベース 2200mm
乗車定員 2/5名
エンジン NA型 直列6気筒SV 3670cc(82ps/3400rpm)
NB型 直列6気筒SV 3670cc(85ps/3400rpm)
NC型 直列6気筒SV 3960cc(105ps/3400rpm)
P型 直列6気筒OHV 3960cc(130ps/3600rpm)
駆動方式 4WD
トランスミッション 3MT/4MT
タイヤサイズ 6.00-16 6P