【マツダ】ロードペーサー(RA1型)

トヨタ・センチュリー日産・プレジデントに対抗する大型セダンとして、ロータリーエンジンを搭載してデビューしたのがマツダ・ロードペーサー。

オーストラリアのホールデン・プレミアの部品購入契約を交わし、日本仕様に改良を施して完成車として販売したものでした。

 

 

 


マツダ・ロードペーサー(RA1型)の歴史】

 

 

国内における運転手付きを前提としたショーファードリブンカーは、1965年10月に登場した日産・プレジデント(初代150型)、1967年11月に登場したトヨタ・センチュリー(初代G20型)が草分けで、1970年代半ばまではこの2台に限られていました。

経済成長と共に、このような高級セダン市場拡大の動きがあり、新たに参入を計画したのが、マツダ、三菱、いすゞの3社でした。しかし、当時の中規模メーカーでは、トヨタや日産のような開発余力はなく、三菱といすゞは外国メーカーとの提携関係を活かし、外国製の大型セダンを輸入し、日本の法規に適合するように改造して販売しました。

マツダは、当時はまだ外国メーカーとの提携関係がなかったため、オーストラリアのGMホールデンと、部品購入契約を交わし、マツダロータリーエンジンを搭載するという手法が取られました。
オーストラリア車がベースに選ばれたのは、右ハンドルだったことが最大の決め手で、いすゞが輸入したのもオーストラリアのGMホールデン・ステーツマン、三菱もオーストラリア部門で生産していたクライスラー・ヴァリアントを輸入しました。

GMホールデンと契約したモデルは、HJシリーズの最上級車「プレミア」で、北米ではインターミディエイトクラスにあたる中型セダンでしたが、日本では十分大型セダンで通用するサイズ。
前輪にウィッシュボーン式、後輪に車軸式のサスペンションを採用するFRレイアウトで、大型セダンとしてはごく一般的なもの。

エンジンは「13B型(2ローター・654cc×2)」を搭載し、135psを発揮。ルーチェGTと共通のエンジンながら、大型セダン用にリファインされたもので、ルーチェと比較すると135psの同一出力を500rpm低い回転数で発生させるものでした。
トランスミッションは3速ATのみ。

 
 
 
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全長4850mm×全幅1885mm×全高1465ccの堂々としたボディサイズは、マツダ初の3ナンバー車で、日本では紛れもなく大型高級セダン。
しかしベース車のプレミアは、大衆車であるシボレー・ノバのオーストラリア版であり、その大きなサイズとは裏腹に、中身は大衆車でした。

内装もそれを表しており、高級セダンとは言い難いあっさりとしたインパネに、思いのほか広くはない室内空間など、センチュリーやプレジデントを比較すると、明らかにチープに見えるもので、クラウンやセドリックにも見劣りするものでした。

1975年4月、5人乗りが371万円、6人乗りが368万円で発売。これは当時まだ200万円台だったセンチュリーやプレジデントを上回る価格であり、割高感は否めず、当初から販売は不振に陥りました。それまで大衆車を中心に販売してきたマツダの販売網では、大型セダンユーザーへの営業力不足だったことも一因でした。

本来は、最低でも直列6気筒3.0L、上級グレードになればV型8気筒5.7L級など、大きなトルクを発生する大排気量エンジンを搭載するような大型セダンに対し、既存の小型車用ロータリーエンジンを搭載しても、実用上は著しく性能不足。
それでいて燃費も悪く、60km/h低地走行で8.5km/L。4.4LのV8エンジンを搭載していたプレジデントの9.6km/Lより悪いものでした。

1977年8月に、間欠ワイパーやトランクオープナーが追加されたほか、ボディカラーも追加されました。

1977年10月に、ルーチェの上級版(実質的にはモデルチェンジ)として登場した、ルーチェレガート(3代目LA4型)が発売。5ナンバーサイズながら、大型化と上級化を遂げて価格も上昇したルーチェレガートは、新たにマツダの上級セダンの役割を担うこととなりました。
これに伴ってロードペーサーは生産を終了し、1979年まで約2年間、在庫車の販売が続けられました。総生産台数はわずか800台でした。

 
 
 
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ショーファードリブンの大型セダンという、需要が限られる市場に、果敢に挑戦した3社。いすゞ・ステーツマンデビル(HQ814型)は2年間で246台、三菱・クライスラーシリーズは3年間で240台と、いずれも成功した例はありませんでした。
国内向けの大型セダンには、日本らしい高級感や、日本らしい高い質感などが求められており、日本人が日本人のために作った高級車が好まれたのです。

 

 

 

 

【諸元】

 

 

マツダ・ロードペーサー(RA1型)

全長×全幅×全高 4850mm×1885mm×1465mm
ホイールベース 2830mm
乗車定員 5/6名
エンジン 13B型 2ローター 654cc×2(135ps/6000rpm)
駆動方式 FR
トランスミッション 3AT
タイヤサイズ 7.50-14 4P