【三菱】RVR(初代N10/20型)

RVブームの中で1991年にデビューしたRVRは、RVテイストを持ったトールワゴン。クルマの多様化を具体化したかのようなRVRの登場は、いかにも三菱らしい独自路線でした。

室内の広さ、手頃なサイズ感、使い勝手の良さなど、多様化時代にマッチしたパッケージングが好評を博しました。

 

 

 


【RVR(初代N10/20型)の歴史】

 

 

1980年代に流行が始まったRVブームの主役は、三菱・パジェロ(初代L040/140型)やトヨタハイラックスサーフ(初代N60型)、日産・テラノ(初代WD21型)、いすゞ・ビッグホーン(初代UBS12/13/17/52/55型)などの、ラダーフレームを採用してオフロード性に優れ、デザインも無骨な本格4WD。
これに対して、乗用車と同様のモノコック構造を採用したものを、後に「クロスオーバーSUV」と呼ぶことになりますが、街乗りではセダンのように快適で、かつセダンよりも高い視点を持ち、ミニバンよりも運動性能に優れるなどの「良いとこ取り」が人気の一因となっています。

国産車クロスオーバーSUVの始祖は、1972年のスバル・レオーネ(初代A20/60型)のエステートバン4WD。

kuruma-bu.hatenablog.com

それから10年が経った1982年に登場したのがトヨタスプリンターカリブ(初代L20型)で、ターセル(2代目L20型)をベースにセミトールワゴンのボディを載せ、4WD化したモデル。いずれも、雪の多い地域での需要や、林道を走行する必要のある保守用車両としてなど、比較的特定の用途において固定客を獲得していました。

1990年代に入るとますます多様化が進み、各メーカー共にクロスオーバーSUVを開発。1991年のRVRが最も早く、1994年にトヨタRAV4(初代XA10型)と日産・ラシーン(NB14型)、1995年にホンダ・CR-V(初代RD1/2型)、1997年にスバル・フォレスター(初代SF型)など、それぞれ個性の異なるクロスオーバーSUVがデビューし始めたのです。

三菱は1980年代から、4WDに力を入れてきたメーカー。パジェロの存在はさることながら、ピックアップトラックのフォルテ(初代L020型)のシャシーに、1BOXボディを載せたデリカスターワゴン(2代目L型)の4WD車は1982年にデビューし、1983年にはトレディア(A210型)にパートタイム4WDを追加、1984年にはコルディア(A210型)とシャリオ(初代D0型)にも4WDを追加するなど、他メーカーに先行して4WDを導入してきました。

そんな三菱がクロスオーバーSUVの姿として選んだのが、スライドドアを持つトールワゴンスタイル。短いノーズを持ち、背を高く仕上げた1.5ボックスのスタイリングは、当時としては独特なもので、3ヶ月後にフルモデルチェンジするシャリオ(2代目N30/40型)を短くしたようなものでした。シャシーもシャリオ用をショート化して使用。FFと4WDが当初から用意されました。

エンジンは、140psの「4G63型(直列4気筒DOHC・1997cc)」が搭載され、SOHC版を搭載していたシャリオとは差別化が図られました。トランスミッションは5速MTと4速ATから選択が可能でした。

 
 
 
この投稿をInstagramで見る

Dorito(@expodorito)がシェアした投稿

ボディサイズは5ナンバー枠内の全長4290/4360mm×全幅1695mm×全高1625/1640/1680mm。後席ドアは左側のみにスライドドアを配置する4ドアで、リアゲートは跳ね上げ式。
フロントマスクやリアコンビネーションランプの意匠はシャリオと共通のイメージを持たせ、グレードによってグリルガードなどを装備してRV感を演出しました。

シートは2列仕様のみとしたことで、室内スペースを広く確保することができました。その2列目の仕様により、4人乗りと5人乗りがラインナップされ、特に4人乗りはロングスライドシートにより広大な室内空間を作り出すことが可能で、多用途性に優れていました。
1991年2月のデビュー時は、FF車は「S」のみ、4WD車は5人乗りの「R」と4人乗りの「X」と、3グレード体制で販売をスタート。価格は139.6万円~197.3万円でした。

4か月後の6月には、新たに「4G93型(直列4気筒SOHC・1834cc)」を搭載した「Z」グレードを追加し、FFと4WDが設定され、いずれも4人乗り仕様のみをラインナップしました。

1992年10月、当時のRV車の流行でもあった大型のグリルガードを装備し、スペアタイヤを背面に背負った新グレード「スポーツギア」を追加。オーバーフェンダー装着によって全幅は1740mmとなり、3ナンバー登録となりました。
2.0Lの4G63型エンジンはハイオク仕様となり、160psにまでパワーアップ。
また、Zの4WD車には「4D68型(直列4気筒SOHCディーゼルターボ・1998cc)」搭載車を追加し、スポーツギアにもこのディーゼルエンジン搭載車を設定しました。

1993年5月には、Z(1.8L FF車)をベースに、ルーフレールやグリルガードなどを標準装備した特別仕様車「Z スペシャルバージョン」を発売しました。

 
 
 
この投稿をInstagramで見る

YUUUG(@sekiya_yuga)がシェアした投稿

1993年8月、前席に電動オープンルーフを採用した「オープンギア」を追加設定。後席スライドドアを持たない3ドア仕様となり、2.0Lのみで、FFと4WDをラインナップ。

1994年1月には、Z(1.8L 4WD車)をベースに、ルーフレールやフロントスポーツシートを装備した特別仕様車スペシャルエディション」を、6月には、オープンギア(FF車)をベースに、グリルガードやキーレスエントリーを装備した特別仕様車「オープンギアリミテッド」を発売するなど、ラインナップの充実化を図りました。

1994年9月にマイナーチェンジを受け、フロントバンパーやヘッドランプのデザインを変更し、RV感を強調。
230psを発揮する「4G63型(直列4気筒DOHC ICターボ・1998cc)」を新たに設定しました。搭載されたのは、新グレードの「X3」「スーパースポーツギア」「スーパーオープンギア」。
スポーツギアには、1.8L搭載車も追加され、ワイドフェンダーを持たない5ナンバー車でした。

翌10月には、2.0Lのスポーツギアをベースに、専用アンダーガードバーを装着し、大型のストライプを施した特別仕様車「ワイルドギア」を発売。

1995年5月には、ディーゼル車を排ガス規制に適合させるマイナーチェンジを実施。同時に、ボディカラーの設定を一部変更。

6月には2.0LのSをベースに、ルーフレールや運転席エアバッグなどを装備した特別仕様車「バージョンS」を発売、10月には特別仕様車「ワイルドギア」を新たに専用大型グリルガードを装備して再発売、12月には1.8Lのスポーツギアをベースに、ルーフレールや運転席エアバッグ、キーレスエントリーなどを装備した特別仕様車「スポーツギアリミテッド 1.8」を発売しました。

1996年1月にも、2.0Lのスポーツギアをベースに、アルミホイールカセットデッキを装備した特別仕様車「スポーツギアリミテッド 2.0」と、X3をベースにフロントサイドスポイラーとリアスポイラーなどを装備した特別仕様車「X3スペシャル」を発売。

1996年5月には3度目のマイナーチェンジを受け、運転席エアバッグを全車に標準装備。スポーツギアは2.0Lのみとなり、新たに「スポーツギアZ」を新たに設定しました。

1997年1月には、大型のエアロパーツを装備した「ハイパースポーツギアZ」「ハイパースポーツギアR」を発売。ハイパースポーツギアRには、250psにパワーアップさせたエンジンが搭載されました。
同時に、スポーツギアをベースに、ABSやキーレスエントリーを装備した特別仕様車「スポーツギアV20」を発売しました。

9月には、スポーツギアをベースに、ルーフレールやキーレスエントリー、ABSなどを装備した特別仕様車「フィールドエクスプレス」を発売。

そして1997年11月、2代目N60/70型にバトンタッチし販売を終了しました。人気グレードのスポーツギアは2代目でも設定され、好調な販売でスタートしましたが、流行の変化や、三菱のリコール隠し問題などが重なり、2003年には一旦幕を閉じました。
7年の空白を置いた2010年、3代目GA3/4型で復活を果たし、流行に乗ったコンパクトSUVとして生まれ変わっています。

セダンのような走行感覚、街乗りでも煩わしさのないボディサイズ、多用途に使えるシートアレンジ、遊び心溢れるデザイン。クロスオーバーSUVが人気を得た理由は、このようなところにあると考えられます。
多様化したSUVや、ステーションワゴン、ミニバンなどが次々に登場し、高級セダンや高性能スポーツカーが憧れだった1980年代から、時代が変わった瞬間だったと言えます。

 

 

 

 

【諸元】

 

 

 

三菱・RVR(初代N10/20型)

全長×全幅×全高 4290/4350/4360mm×1695mm×1620-1690mm(~1994.9)
4270/4320mm×1695mm×1625-1690mm(1994.9~)
4375mm×1740mm×1690mm(スポーツギアZ)
4440mm×1740mm×1740mm(ハイパースポーツギア)
4460mm×1740mm×1730mm(スポーツギア・~1994.9)
4460mm×1695/1740mm×1680/1720/1730mm(スポーツギア・1994.9~)
ホイールベース 2520mm
乗車定員 4/5名
エンジン 4G93型 直列4気筒SOHC 1834cc(120ps/6000rpm)
4G63直列4気筒DOHC 1997cc(140ps/6000rpm)
4G63直列4気筒DOHC 1997cc(160ps/6500rpm)
4G63直列4気筒DOHC ICターボ 1997cc(230ps/6000rpm)
4G63直列4気筒DOHC ICターボ 1997cc(250ps/6000rpm)
4D68型 直列4気筒SOHC ターボ 1998cc(88ps/4500rpm)
4D68型 直列4気筒SOHC ICターボ 1998cc(94ps/4500rpm)
駆動方式 FF/4WD
トランスミッション 4AT/5MT
タイヤサイズ 185/70R14
205/65R14
205/65R15
215/65R15