【ダイハツ】フェローMAX(2代目L38/39型)

自家用車と言えば軽自動車が主流だった1960年代から一転、マイカー時代が到来した1970年頃には、軽自動車の需要は縮小傾向でした。スタイリッシュな外観や高出力なエンジンを武器に、ダイハツを支えた屋台骨が、フェローMAX。

軽自動車初のハードトップモデルなど、話題にも富んでいました。

 

 

 


ダイハツ・フェローMAX(初代L38/39型)の歴史】

 

 

1958年のスバル・360(K111/212型)発売以降、各メーカーから軽自動車がリリースされ、1960年代の国民の足として活躍したのは、軽自動車でした。
トヨペット・コロナ(3代目T40型)やダットサン・ブルーバード(2代目410型)に代表される小型セダンなど、庶民にはまだ手の届くものではなかったのです。

時代が変わったのが1966年。トヨタ・カローラ(初代E10型)とダットサン・サニー(初代B10型)が発売されると、一気にマイカー時代が到来し、自家用車の主流は瞬く間に小型乗用車に移っていきました。
軽自動車の需要は一気に衰退し始め、軽自動車メーカー各社は、より洗練されたデザインや、高級装備による快適性、他車よりハイパワーなエンジンなど、上級化の方向へと進んでいくことになりました。

ダイハツは、1966年からフェロー(初代L37型)を生産。

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高出力化を武器にライバル各車に挑みましたが、不運も重なり目立たない存在となっていました。
1970年を目前に、スポーツモデルのパワー競争が激化する中、フルモデルチェンジ無くしてそれ以上の競争は挑めない状況となり、1970年4月に「MAX」のサブネームを付けたフェローMAXがデビューしました。

フェローをはじめとする多くの軽自動車は、FRかRRの後輪駆動を採用していた中、ホンダに続いていち早く前輪駆動に移行しました。FFレイアウトは、限られたボディサイズの中でスペースを有効に使える利点がありました。前輪にはストラット式、後輪にはセミトレーリングアーム式のサスペンションを採用し、四輪独立懸架を先代に続いて踏襲。

エンジンは、従来のZM型の圧縮比を10.0にまで高めた、「ZM4型(2ストローク直列2気筒・356cc)」を搭載し、シングルキャブで33psを発揮。
トランスミッションは、フルシンクロの4速MTでした。

ボディスタイルは、先代の3ボックススタイルから一転して、流行に沿った2ボックスとなり、ロングノーズを意識したスポーティなもの。
サイズは軽自動車枠に収まる全長2995mm×全幅1295mm×全高1310mm。2ドアセダンと3ドアバンの2バリエーションでスタートしました。

1970年7月には、ツインキャブ仕様のスポーティグレード「SS」と「S」を追加しました。「ZM5型(2ストローク直列2気筒・356cc)」で、40psを発揮。三菱・ミニカ(2代目A100/101/104/105/106型)のツインキャブ仕様の38psを抜く、当時の軽自動車では最もパワフルなもので、最高速度は120km/hを記録しました。

1970年10月には、装備を充実させて豪華仕様とした「ハイカスタム」を追加。エンジンはシングルキャブを搭載しました。

1971年3月のマイナーチェンジでは、シングルキャブのエンジンを改良し、排気ポートを備えた「ZM8型(2ストローク直列2気筒・356cc)」となったほか、内外装の高級化を図りました。

そして8月には軽自動車初のハードトップモデルを発売。三角窓とセンターピラーを廃した開放的でスポーティなデザイン、シャープなボディライン、丸型4灯式の端正なフロントマスクなど、軽自動車とは思えないほどの特別感を演出しました。ツインキャブの「GXL」「SL」、シングルキャブの「GL」「TL」の4グレードを持ち、トップグレードのGXLにはレザートップのホワイトルーフも設定されました。
ツインキャブ車には「ZM9型(2ストローク直列2気筒・356cc)」が搭載され、ZM5型と同様の40psを発揮しました。

 
 
 
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1972年3月にマイナーチェンジを実施し、フロント周りやインパネのデザインを変更。ハードトップには、シングルキャブの豪華仕様車である「GHL」を追加しました。また、ZM9型は、出力40psのままシングルキャブ化されました。

1972年10月、新たに4ドアセダンを発売しました。全てシングルキャブ仕様で「デラックス」「カスタム」「ハイカスタム」の3グレードを用意。
同時に、全車のエンジンを排ガス規制に対応。40ps車は「ZM13型(2ストローク直列2気筒・356cc)」で37psに、33ps車は「ZM12型(2ストローク直列2気筒・356cc)」で31psとなりました。

 
 
 
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1973年5月にマイナーチェンジが実施して、フロントマスクを変更。2ドアセダンとハードトップのリアデザインを大幅に変更したほか、グレードの再編を実施。

1975年2月には、37psのZM13型搭載車は廃止され、全車31ps仕様となりました。
また、軽自動車のナンバープレート大型化に伴って前後バンパーの形状を変更。

1976年5月には、ハードトップは廃止。
また、1月の軽自動車規格変更に伴い、新たに「AB10型(直列2気筒SOHC・547cc)」を搭載した、550シリーズを追加しました。2ドアと4ドアのセダンがラインナップされ、バンパーが延長されたのみで、車体は360ccサイズのままでした。

1977年7月、新規格に対応するビッグマイナーチェンジを実施し、MAXクオーレ(初代L40型)にバトンタッチ。MAXクオーレは、クオーレ/ミラクオーレ(L55型)発売までの約3年間生産されました。

ライバル他社よりパワフルなエンジンを搭載して人気を獲得したフェローMAXでしたが、1970年代中盤になると、排ガス規制への対応に追われ、フェローMAXに限らず、ハイパワーでスポーティな軽自動車は衰退の道を辿りました。
その後、軽自動車の主流は、物品税が免除される4ナンバー登録のバンに移っていき、子育て世代の女性や、主婦の買い物の足など、家庭のセカンドカーの役割を軽自動車が担うようになっていきました。

 

 

 

 

【諸元】

 

 

 

ダイハツ・フェローMAX(2代目L38/39型)

全長×全幅×全高 2995mm×1295mm×1295/1305mm
2995mm×1295mm×1245mm(ハードトップ
3120mm×1305mm×1320mm(550)
ホイールベース 2090mm
乗車定員 4名
エンジン ZM4型 2ストローク直列2気筒 356cc(33ps/6500rpm)(1970.4~1971.3)
ZM8型 2ストローク直列2気筒 356cc(33ps/6500rpm)(1971.3~1972.10)
ZM12型 2ストローク直列2気筒 356cc(31ps/6000rpm)(1972.10~)
ZM5型 2ストローク直列2気筒 356cc(40ps/7200rpm)(1970.7~1972.3)
ZM9型 2ストローク直列2気筒 356cc(40ps/7200rpm)(1972.3~1972.10)
ZM13型 2ストローク直列2気筒 356cc(37ps/6500rpm)(1972.10~1975.2)
AB10型 直列2気筒SOHC 547cc(28ps/6000rpm)(1976.5~)
駆動方式 FF
トランスミッション 4MT
タイヤサイズ 5.20-10 4P
135SR10