【ホンダ】ステップワゴン(初代RF1/2型)

ミニバン市場がキャブオーバー型のFRレイアウトが主流だった中、ボンネット型のFFレイアウトを用いて、優れたパッケージングを実現したステップワゴン。

新たなファミリーカーの姿として、以降のミニバンを変えた1台です。

 

 

 


ホンダ・ステップワゴン(初代RF1/2型)の歴史】

 

 

1980年代までの3列シート車と言えば、商用車派生型の1BOXワゴンが主流。これらのワゴンは、RVブームの中で、より乗用車らしくなりつつありました。トヨタ・タウンエース/ライトエース(R20型)は、商用モデルとは異なる外観を持たせ、豪華装備や快適装備を充実させて生産していました。マツダ・ボンゴ(3代目E8/F8型)や三菱・デリカ(3代目P型)も同様。日産・セレナ(初代C23型)は、バネットの派生車として1991年に登場しましたが、商用ベースでもセダンベースでもない専用設計で、使い勝手の良さが売りでした。

各メーカーは、どうしても商用車のイメージがつき纏う1BOX車を、いかに乗用車らしく見せるかを試行錯誤していましたが、基本的には従来どおりキャブオーバー型のFRレイアウトを踏襲しているものが多く、クラッシャブルゾーンを確保するために短いボンネットを持ち始める中でも、エンジンは前席下に搭載するものがまだ多かったのです。
唯一、FFレイアウトを採用していた例は、三菱・デリカスペースギア(PA/PB/PC/PD/PE/PF型)で、パジェロ譲りの悪路走破性を持つオフロード性能が売りのため、アウトドア向けといった要素が強く、ファミリー向けとは少し異なるモデルでした。

ホンダは1990年代に入ると、クリエイティブムーバーと称して、新たなライフスタイルを創造するクルマを開発。第1段のオデッセイ(初代RA1-5型)、第2段のCR-V(初代RD1/2型)と大ヒットを記録し、続く第3弾として開発されたのがステップワゴンでした。

ステップワゴンは、理想のファミリーカーを目指して開発されました。従来のファミリーカーと言えば、コンパクトセダンやミドルセダンが一般的で、ホンダで言えば、シビックやアコードなど。5人以下の家族であれば全員が乗れて、多少の荷物なら問題なく積むことができましたが、5人乗車すると決して十分な広さではなく、大きな荷物は積めませんでした。
家具や家電を大型量販店から自分で持ち帰るような買い物スタイルの変化や、キャンプやバーベキューなどのアウトドアレジャーがより一般的になる中で、そのようなセダンが理想のファミリーカーかと言われれば、そうではなかったのです。

床面を低くフラットにするため、ホンダのお家芸であるFFレイアウトを採用。全グレードで4WDも選択が可能でした。
サスペンションはオデッセイと共通の、フロントがストラット式
リアがダブルウィッシュボーン式を採用し、しなやかな乗り心地を実現しました。

搭載されたエンジンはCR-Vと共通で、「B20B型(直列4気筒DOHC・1972cc)」の1種類のみ、トランスミッションは4速コラムATのみとし、バリエーションを持たないことによるコスト削減が図られました。

ボディサイズは全長4605mm×全幅1695mm×全高1830mmの5ナンバーサイズ。直線を基調とした箱型のスタイリングとして、室内空間を拡大し、低床の効果もあって室内高は十分な1335mmを実現しました。
車体の角をランプやモールで覆ったデザインは、溶接痕の目隠しのためで、シール作業を省略することによってコストを削減しました。

広大な空間に3列シートを配し、2列目が1:2分割の回転対座シートと、3席一体で折りたたむことができる「ポップアップシート」の2種類を用意。一部グレードでは2列シート車も用意されました。
それまでの商用派生モデルとは異なり、室内空間に無駄がなく、まさに家族のためのリビングのような造りが目指されており、後席の座り心地はライバル他車とは一線を画すものでした。

ネーミングは、1972年に登場したライフステップバン(VA型)をもじったもの。ステップバンは、ライフ(初代SA/WA/VA型)をベースにした軽商用車で、特徴的なデザインもさることながら、室内空間の広さや使い勝手に優れたモデルで、まさに「多目的車」を先取りしたようなクルマでした。
そのパッケージングと、1.5ボックスのスタイルなど、共通する部分も多かったことから、「ステップワゴン」のネーミングがぴったりだったのです。

1997年8月の改良では、1-2列目シートがフルフラットに対応。運転席・助手席SRSエアバッグやABSを全車に標準装備したほか、ボディカラーも4色追加されるなど、さらに魅力を向上させました。

1998年1月には、FRP製ポップアップルーフを装備した「フィールドデッキ」を発売しました。マツダボンゴフレンディ(SG型)で人気だったもので、キャンプなどで重宝する、もっぱらアウトドア向け装備でした。

1999年5月にマイナーチェンジ。ヘッドランプがマルチリフレクタータイプとなり、フロントバンパーのデザインを変更。エンジンは最高出力を135psに向上させ、衝突安全ボディを採用したほか、EBD付ABSが全車に標準装備されました。
また、エアロ仕様の外観やスポーティな内装を装備した「スピーディー」も新設しました。

特別仕様車も発売しながら、2001年4月のフルモデルチェンジまで販売され、2代目RF3-8型にバトンタッチとなりました。
この頃になると、ライバル各車もFFレイアウトのファミリーミニバン化していましたが、スポーティな外観を持った「スパーダ」なども追加しながら、好調なセールスを記録しました。
現在ではトヨタ・ノア/ヴォクシー/エスクァイア日産・セレナと激しい販売競争を繰り広げています。

多人数が乗車出来れば良しとされていた3列シート車の概念を変え、家族が快適に楽しくドライブできるクルマに変えたのがステップワゴンでした。
商用バンなどを作っていなかったホンダだからこそ、作ることが出来たクルマであり、それはユーザーから見ても、新鮮に映ったのでした。

 

 

 

【諸元】

 

 

ホンダ・ステップワゴン(初代RF1/2型)

全長×全幅×全高 4605mm×1695mm×1830/1845mm(~1999.5)
4610mm×1695mm×1830/1845mm(1999.5~)
4605mm×1695mm×1955/1970mm(フィールドデッキ・~1999.5)
4610mm×1695mm×1955/1970mm(フィールドデッキ・1999.5~)
4615mm×1695mm×1915/1930mm(スピーディー/クラフティ―)
4615mm×1695mm×1955/1970mm(スピーディーフィールドデッキ)
ホイールベース 2800mm
乗車定員 5/8名
エンジン B20B型 直列4気筒DOHC 1972cc(125ps/5500rpm)(~1999.5)
B20B型 直列4気筒DOHC 1972cc(135ps/5500rpm)(1999.5~)
駆動方式 FF/4WD
トランスミッション 4AT
タイヤサイズ 195/65R15