【ダイハツ】フェロー(初代L37型)

1960年代、各メーカーから続々と実用性のある軽乗用車がデビューする中、ダイハツからもフェローが登場。

ライバル競争にあまり恵まれず、存在感の薄いモデルになってしまった反面、軽乗用車の高出力化競争のきっかけを与えたモデルでした。

 

 

 


【フェロー(初代L37型)の歴史】

 

 

 

1957年発売のミゼットや、1960年発売のハイゼットで、軽商用車の分野では既に十分な実績を持っていたダイハツが、満を持して軽乗用車市場へ参入したのがフェローでした。

スペース効率では劣りますが、ハイゼットで実績のある縦置きエンジン・FRレイアウトを採用。リアには独立したトランクを持つ3ボックススタイルで、そのスタイリングは「プリズムカット」と呼ばれました。3ボックスながら、大人4人が無理なく乗車できる広い室内を実現していました。

エンジンは、ハイゼットで実績のあるZL型を水冷化した「ZM型(2ストローク直列2気筒・356cc)」。サスペンションは4輪独立懸架とし、リアにはダイアゴナル・スイングアクスル式を採用したことは非常に稀で、国産車ではいすゞ・ベレットとフェロー以外には採用例はありません。

 
 
 
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1966年11月に発売され、主力の2ドアセダンの他に、3ドアバンとピックアップトラックの商用モデルもラインナップされました。商用モデルは、1964年から2代目のキャブオーバー型と併売されていた、初代ハイゼットの後継モデルの位置づけでした。

当時のライバル車は、1958年発売のスバル・360を筆頭に、1962年発売のマツダ・キャロルやスズキ・フロンテ、三菱・ミニカなどで、既に旧態化が進んでおり、優れた運転性能や乗り心地、新鮮なデザインなどが目立ったフェローは、順調に販売を伸ばしました。
しかし、発売から間もない1967年3月にホンダ・N360が登場。安価で高出力、スタイリングも優れていたN360に押されて一気に衰退。特に若年層には見向きもされない存在となってしまいました。

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N360対策として、1968年6月にマイナーチェンジとモデル追加を実施。フロントウインカーやリアコンビネーションランプのデザイン変更を実施しました。この時新たに追加されたのはスポーツモデルである「フェローSS」。エンジンをツインキャブ化、高圧縮比し、32psまでパワーアップ。4速フロアシフトを採用しました。専用シートやタコメーター、3本スポークステアリングなどを装備し、外観上も赤いラインを特徴とするなど、標準モデルとの差別化を図りました。

パワーアップしたエンジンは、最高速度115km/h、0→400m加速は21.2秒と、N360を凌ぎ軽自動車トップの実力でした。また、FFレイアウトのN360とは異なり、FRだったことが功を奏し、高出力化されても、軽快なステアリングフィールが実現できていました。

このSSの登場により、フェローの人気は復活し、若年層からも支持を受けました。しかしこの成功が、ライバル各社を刺激することとなり、スポーツモデル開発のきっかけを与えることになってしまいました。
1968年8月に36psのスバル・360ヤングSS、9月に36psのN360のツインキャブ仕様、11月に36psのフロンテSS、1969年12月に38psのミニカGSSと、パワー競争が起きることとなり、火付け役だったフェローSSはまたしても目立たない存在になってしまいました。

これ以上のパワー競争には、モデルチェンジが必要となり、1970年4月に2代目のフェローMAXへとフルモデルチェンジ。フェローMAXはFFレイアウトに移行して、足回りを強化するなどし、7月には40psにまで達した次世代SSを発売するに至るのでした。

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モデル最終期となる1970年4月1日、100台限定で「フェローバギィ」を発売。ハイゼットをベースに、ドアのないFRP製のボディに、ロールバーを備えるバギーでしたが、ホイールベースの長いシャシーに、10インチの小径タイヤを履いた2輪駆動では、決して悪路走破性が高いわけでもなく、さらに実用性もほとんどないため、人気を得るには至りませんでした。

 
 
 
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日本が誇るべき自動車文化である軽自動車。スバル・360の登場から現在に至るまで、様々な変遷を経てきましたが、軽自動車が発展の道を歩く第一歩ともいえる「高出力化」の、きっかけを作ったこのフェローが残した功績は、非常に大きいものだったと言えるでしょう。

 

 

 

【諸元】

 

 

ダイハツ・フェロー(初代L37型)

全長×全幅×全高 2990mm×1285mm×1350mm
2990mm×1295mm×1400mm(バギィ)
ホイールベース 1990mm
乗車定員 2名(バギィ)/4名
エンジン ZM型 2ストローク直列2気筒 356cc(23ps/5000rpm)
ZM型 2ストローク直列2気筒 356cc(26ps/5500rpm)
ZM型 2ストローク直列2気筒 356cc(32ps/6500rpm)
駆動方式 FR
トランスミッション 4MT
タイヤサイズ 5.00-10 4P
5.20-10 4P