【日産】テラノ(初代WD21型)

1980年代から盛り上がり始めたSUVブーム。キャンプや釣り、マリンスポーツにウインタースポーツと、アウトドアに出かけるためのクルマとして人気がありました。

他メーカーから一歩遅れて日産が1986年に発売した初代テラノは、北米でデザインを行った自信作。しかしそれが裏目に出てしまい、パジェロとサーフの二大人気SUVには及ばないのでした。

 

 

 


【テラノ(初代WD21型)の歴史】

 

 

 

 

1970年代、アウトドアの人気が出始めた頃は、まだ商用バンと遜色のないような1BOX車やステーションワゴンしか選択肢がなく、スキー板程度であればセダンの屋根にキャリアを付けて対応していた時代。
1980年代に入ると、メーカー各社はアウトドア向きの本格的な「遊びグルマ」を開発し始め、北米のSUVをお手本に、小型ピックアップ車のシャシーを使ってハードトップボディを被せる手法を用い、アウトドア等の利便性に優れながら、悪路走破性も兼ね備える車を実現していきました。

1981年にいすゞ・ロデオビッグホーン、1982年にはSUV人気に火をつけた三菱・パジェロ1984年になるとトヨタハイラックスサーフがデビュー。
1985年には、ピックアップベースではないものの、本格4WDであるトヨタ・ランドクルーザーのライトデューティー仕様(後のプラド)もリリースされ、SUV市場は一気に活気づいていました。

日産は他社から一歩遅れたものの、少し異なる手法を採用しました。それは、SUV人気の本場である北米でデザインを手掛けること。カリフォルニア州にあった自社のスタジオ「ニッサン・デザイン・インターナショナル(NDI)」で、他社とは一味異なるデザインを作り出そうとしました。

当時の北米の流行を取り入れた結果、直線基調としながら、土臭さや無骨さを無くしてスタイリッシュなデザインを採用し、ボディは2ドアスタイル。ウィンドウは大きく取り、サイドのセンターにはユニークな三角窓を配しました。

ダットサントラック(9代目D21型)をベースに開発され、リアサスペンションは開発途中のサファリ(2代目Y60型)から流用されました。駆動方式はFRと4WDとの切替可能なパートタイム4WD。既存車種の高い運転ポジションとは異なり、低い着座位置に設定され、乗用車からの乗り換えも意識していたことが伺えます。エンジンは新開発された「TD27型(直列4気筒OHVディーゼル・2663cc)」が搭載されました。

北米向けは1986年5月から「パスファインダー」の名称でデビュー。国内では8月から「テラノ」として、ワゴンとバンの2仕様がデビューしました。それまでのライバル車とは異なる、北米デザインの都会的なスタイリングが評判を呼び、のちの1988年にはグッド・デザイン賞も獲得しました。

1987年10月には140psの「VG30i型(V型6気筒SOHC・2960cc)」搭載車を追加。さらに、3.0L車には電子制御式の4AT車も設定されました。

1988年11月、ディーゼルエンジンを出力向上の声に応える形でターボモデルを追加。「TD27T型(直列4気筒OHVディーゼルターボ・2663cc)」で、NAの85psに対し100psを発揮。この時、ディーゼル車にも4AT車が追加されています。

多目的車としてのニーズに応える形で、1989年10月に4ドア車を追加。2ドア車で特徴的だったサイドウィンドウは無理があったため、一般的な四角形のウィンドウとなっています。
また、3.0L車は「VG30E型(V型6気筒SOHC・2960cc)」に変更され、155psまでパワーアップ。

1993年1月には、マイナーチェンジを実施。オーバーフェンダーを装着したワイドボディ車が追加されたほか、ディーゼルNA車と4ナンバーバンが廃止され、グレード整理を受けました。

1994年11月、ディーゼルターボエンジンの改良により115psにパワーアップ。この際に、国内向けの2ドア車は販売を終了しました。

そして1995年9月、2代目へフルモデルチェンジして販売終了。2代目では4ドアのみの設定となり、個性も薄くなったことも災いしてか販売は低迷。国内向けは2代で幕を閉じることになりました。
一方海外向けのパスファインダーは、その後も2005年から3代目、2012年から4代目が発売され、人気車種となっています。

力を入れて北米でデザインした、都会的で洗練されたスタイリングでしたが、当時の国内のSUVユーザーは、無骨でオフロード車らしいモデルを求めており、オーバーフェンダーの装着や出力向上等によってイメージアップを図るも、人気モデルのパジェロハイラックスサーフを上回る販売成績を収めることは出来ませんでした。
しかしながら、その後1990年代にライバル各車がモデルチェンジを迎えると、こぞって都会派で洗練されたデザインを纏ってデビューするのでした。テラノは流行を少し先取りしすぎただけだったのかもしれません。

 

 

 

【諸元】

 

 

 

日産・テラノ(初代WD21型)

全長×全幅×全高 4365mm×1690mm×1680mm(標準ボディ)
4715mm×1795mm×1695mm(ワイドボディ)
ホイールベース 2650mm
乗車定員 5名
エンジン TD27型 直列4気筒OHVディーゼル 2663cc(85ps/4300rpm)
TD27T型 直列4気筒OHVディーゼルターボ 2663cc(100ps/4000rpm)
TD27T型 直列4気筒OHVディーゼルターボ 2663cc(115ps/4000rpm)
VG30i型 V型6気筒SOHC 2960cc(140ps/4800rpm)
VG30E型 V型6気筒SOHC 2960cc(155ps/4800rpm)
駆動方式 4WD
トランスミッション 4AT/5MT
タイヤサイズ 215SR15(標準ボディ)
265/70R15(ワイドボディ)