【スズキ】ワゴンRワイド(MA61S/MB61S型)

ワゴンRの異例の大ヒットによって、軽自動車市場でシェアを拡大したスズキが、カルタスやエスクードだけでは競争力不足だった小型乗用車市場に、ニューモデルとして投入したのがワゴンRワイド。

軽自動車をベースに小型車化するノウハウは、ジムニーで十分積まれていました。

 

 

 

 


【スズキ・ワゴンRワイド(MA61S/MB61S型)の歴史】

 

 

1993年に登場したワゴンR(初代CT21S/51S/CV21S/51S型)は、軽自動車は狭いという常識を変えた革新的なモデルで、異例の大ヒットを記録。以降、軽自動車の売れ筋は常にハイトワゴンが占め、軽自動車の歴史を大きく変えたクルマとして知られています。

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軽自動車市場でダイハツとトップシェアを争ってきたスズキは、小型乗用車市場での成績は今一つ。ハッチバックやセダンに加えてワゴンもラインナップした小型車のカルタスクレセント(3代目GA11/21/GB21/31/GC21/GD21/41/GD21/31型)、ジムニーのワイド仕様が発展した小型SUVエスクード(初代TA01/11/31/51/TD01/11/31/51/61型)、その派生車である2シーターSUVのX-90(LB11型)、ジムニーのワイド版であるジムニーシエラ(初代JB31/32型)が、1990年代半ばの小型乗用車フルラインナップ。
競争力不足が否めず、小型車ラインナップの強化を図ることが最大の課題でした。

限られた費用と出来るだけ短い期間で開発を行い、高い費用対効果を望めるクルマを生み出すために考えられたのが、非常に高い人気を誇っていたワゴンRをベースに、小型車化すること。そのノウハウはジムニーで十分積まれていたため、スズキにとってその手法は好都合でもありました。

ホイールベースは2335mmのまま、前後のトレッドを拡大。1220/1210mmのワゴンRに対し、1360/1355mmまで広げました。
フロントがマクファーソン式、リアがI.T.L式のサスペンションは、ワゴンRと共通の形式のまま、専用セッティングがなされました。
フロントブレーキはベンチレーテッド化して強化し、4輪ABSもオプション設定。FFと4WDがラインナップされました。

新開発されたオールアルミ製エンジンは「K10A型(直列4気筒DOHC・996cc)」で、NA車が70ps、インタークーラーターボ車が100psの最高出力を発生するもの。トランスミッションには5速MTと電子制御4速ATを用意しました。

全長3400mm×全幅1575mm×全高1670/1705mmのボディサイズは、ワゴンRに比べて全長105mm、全幅180mm大きなもの。ドアパネルやフェンダー、前後ランプ類はそのままに、前後バンパーやフロントグリルなどを専用デザインとして小型車化しました。

インパネはオーディオが2DIN化された専用デザインとされたほか、フルトリム化や専用シート表皮を採用し、ワゴンRと差別化を図りました。室内長はほぼ同等ですが、室内幅は1180mmから1335mmにまで拡大され、5人乗車スペースを確保しました。

1997年2月にデビュー。廉価グレードの「XE」をベースに、エアコンやカラードバンパー装備の「XM」、キーレスエントリーやサイドアンダースポイラーを装備した「XL」、ターボエンジンを搭載した「XZ」の4グレードを設定。XLとXZで4WD車が選択できました。
当初はXEと4WD車は5速MTのみで、1997年6月に4WD車にも4速ATが追加されました。

1998年1月には、XZをベースに前後アンダースポイラーを装着し、CDプレーヤーやフルファブリックシートを装備した特別仕様車「XZリミテッド」を発売。
翌月の2月には、XZをベースにプロジェクター式フォグランプやサイドスカート、ルーフエンドスポイラー、本革巻ステアリングなどを装備した特別仕様車スペシャル」を発売しました。

1998年5月マイナーチェンジが行われ、フロント周りのデザイン変更や、シート表皮の変更、装備の充実化を実施しました。
さらに、丸型ヘッドランプ、グリルやヘッドライト周りのメッキ塗装、アンダースポイラー、専用アルミホイールなどのスポーティが外観を持つ「XR」を新たに設定。インテリアには、本革巻ステアリングやシフトノブ、木目調インパネ、ホワイトメーターなどを装備しました。

1998年10月にワゴンRは2代目MC11/12/21/22型へフルモデルチェンジしましたが、ワゴンRワイドは半年ほど継続販売され、1999年5月にフルモデルチェンジを受けてワゴンR+(MA34/63/64型)に生まれ変わりました。
その後ワゴンRソリオに改称し、2005年からはワゴンRの名称が外れてソリオへと改称。2010年に登場したソリオ(初代MA15型)からは、完全にワゴンRから独立したモデルとなり、コンパクトトールワゴン市場を牽引していくことになります。

ソリオへと系譜を繋ぐワゴンRのワイド系は人気モデルとなり、カルタスの後継であるスイフトと共に、スズキの小型車ラインナップの中核となりました。
取り回しのいいボディサイズながら、コンパクトハッチバックより使い勝手に優れることで、ハッチバックや軽自動車ユーザーからの乗り換えユースが生まれただけでなく、子供が巣立って3列シートが不要になった家族のためのクルマとしても重宝されたのでした。

 

 

 

 

【諸元】

 

 

 

スズキ・ワゴンRワイド(MA61S/MB61S型)

全長×全幅×全高 3400mm×1575mm×1670/1695/1705mm
3470mm×1595mm×1730mm(スペシャル)
ホイールベース 2335mm
乗車定員 5名
エンジン K10A型 直列4気筒DOHC 996cc(70ps/7000rpm)
K10A型 直列4気筒DOHC ICターボ 996cc(100ps/6500rpm)
駆動方式 FF/4WD
トランスミッション 4AT/5MT
タイヤサイズ 155/65R13
165/65R13
165/60R14