【スズキ】ワゴンR(初代CT21S/51S/CV21S/51S型)

軽自動車の量産・大衆化に成功したスバル・360の登場から35年が経った1993年、それまでの軽自動車の常識を変えた革新的なモデルが、スズキ・ワゴンRでした。

狭いイメージを払拭して、圧倒的な室内空間と利便性を持ち、昨今の軽ハイトワゴンブームの礎を築いたクルマです。

 

 

 【ワゴンR(初代CT21S/51S/CV21S/51S型)の歴史】

 

 

 

1993年にワゴンRが誕生するまで、軽自動車のイメージと言えば「狭い」。軽商用車(スズキ・アルト、ダイハツ・ミラ、三菱・ミニカ等)が売れ筋モデルで、スズキ・セルボやマツダ・キャロル等の軽乗用車モデルが販売されており、いずれも低車高で、室内が狭いことが弱点でした。
車高の高いワンボックスモデル(スズキ・エブリイやダイハツハイゼット等)は、専ら商用ベースのため、乗り心地が今ひとつ。
そこでワゴンRは、低車高モデルのような低い床面で乗降性を確保しつつ、座面を高く取ることで足が前に伸びない着座姿勢を実現し、限られた室内長を有効活用することに成功しました。また、視点が高くなったことで、視認性や解放感を向上させたことも成功の要因です。

1987年、スズキはトールタイプの新たな車種の検討を始めていましたが、物品税の税率(軽乗用車15.5%、軽商用車5.5%)により、まだ軽商用車(4ナンバー車)が販売の主流だったため、4人がゆったり乗車することが厳しく、商品化はされませんでした。その後、1989年に消費税が導入された際に物品税が廃止され、軽自動車も商用車(4ナンバー)から乗用車(5ナンバー)へと移行が進みました。

ワゴンRに先行して、1990年には三菱・ミニカトッポが発売されましたが、着座位置がベース車のミニカと同等の低さのため、頭上空間は広いものの、ワゴンRのような「広い軽」とは言えないものでした。
スズキも、1991年にアルトハッスルを発売。フランス車によくみられる、フルゴネットというスタイルで、日本では販売は振るいませんでした。

 
 
 
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そこで、4人が快適に乗車できる5ナンバートールワゴンとして開発されたのがワゴンR。全高1640~1695mmに設定されたトールボディは、直線を基調としたシンプルなスタイリングで、後席ドアは左側のみの4ドア(3ドア+ハッチゲート)とされました。
セルボから流用したフロアパネルを、二重構造にしてかさ上げし、フラットは床面を実現。リアゲートはエブリイからの流用。室内パーツやスイッチ類なども、様々な車種から流用することで、部品の共有化率を高め、コストの低減が重視されました。

エンジンは、アルトと共通の「F6A型(直列3気筒SOHC・657cc)」が搭載され、当初は最高出力55psのNA仕様のみ。トランスミッションは3ATと5MT、駆動方式はFFと4WDが設定されました。

1993年9月に発売された当時は、「RA」「RG」「RX」「RG-4」の4グレード体制。
11月には、ロフトとタイアップした特別仕様車「Loft」を発売。RGをベースに、サンルーフやパワーウインドウ(フロントのみ)を標準装備し、ボディサイドに大きなデカール(ロフトのロゴ)が貼られて人気を得ました。

1995年2月、「F6A型(直列3気筒ICターボSOHC・657cc)」を搭載した「RT/S」を追加。
10月には初のマイナーチェンジを受け、NAエンジンのトルク向上、ターボエンジンの出力向上(61ps→64ps)とトルク向上を実施しました。サスペンション周りの仕様変更、ホイールデザインの変更、ヘッドレストの形状変更やシート表皮の変更、リアシートのリクライニング設定(フルフラット可能)、パワードアロック採用、一部グレードではカラードバンパー化や運転席SRSエアバッグ設定、ターボ車のデュアルマフラー化など、当初のコストダウン重視路線から、好調な販売を裏付けるように、快適化や上級化が図られました。
この時、ターボエンジンを搭載した新グレード「RV」が追加され、サイドアンダーバーやアルミホイール、プロジェクターフォグランプを採用した外観に、専用のシート表皮が用意されました。
RT/Sは「RT」に名称変更され、新たに「RG-4S」を追加。

1996年4月には、初の5ドアモデルである特別仕様車「FXリミテッド」が登場し、8月のマイナーチェンジで5ドアがカタログモデルとなります。5ドアターボが「FT」、NAが「FX」、廉価グレードとして「FG」を追加。既存のRVにはFF車も追加されました。
一部グレードでクロームメッキグリルの採用やアルミホイールの標準化、RVではハイマウントストップランプ内蔵のリアスポイラーが標準化、パワーウインドウ車はリアもパワー化されるなどが行われました。

1997年2月には、最廉価グレードとして「RC」が追加され、69万8000円で販売されました。同時に、普通乗用車登録となる「ワゴンRワイド」が登場しています。

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4月には3回目のマイナーチェンジを受け、フロントグリルのデザイン変更、内装のデザイン変更、シートの形状変更、キー一体キーレスエントリーを採用。
RX・FX・Loftには58psの新エンジン「K6A型(直列3気筒DOHC・658cc)」が搭載され、「K6A型(直列3気筒ICターボDOHC・658cc)」を搭載した「エアロRS」も追加。エアロRSには、グリル一体型のフロントバンパーや、マットガード一体型のリアバンパー、サイドアンダースポイラー、ボンネットエアスクープ、3本スポークアルミホイールバケットタイプのスポーツシート、革巻きステアリングなど、エアロRS専用パーツが多く装備されました。

9月、リアススポイラー、リアスモークガラス、5.8インチ液晶カラーモニター、カラードミラーやドアハンドルを装備した特別仕様車「RXリミテッド」を発売。

11月には、前席をベンチシートとしてコラムATを採用した「ワゴンRコラム」を発売。K6A型エンジンを搭載した5ドアモデルで、丸型のヘッドライトやテールランプ、専用フロントグリルや木目調のインパネなど、専用パーツが多く採用され、当時他車種でも見られた、レトロな雰囲気を持ったモデルでした。Loftはこの時に廃止されました。

1998年1月には、「エアロRR」と「コラムターボ」の2グレードが追加されます。
K6A型エンジンを搭載したエアロRRは、専用フロントグリルや専用アルミホイールを装備し、純正オプションのエアロパーツを標準装備、10mmのローダウン、内装にも専用品を装備していました。
コラムターボは、F6A型ターボエンジンを搭載。

5月には、角形ヘッドランプの通常モデルの外観を持つ「コラムFX」「コラムFT」を追加。エアロRRには5ドア車の「エアロRR-F」を追加、特別仕様車「FM」を発売しました。また、RV・FT・RG-4S・RGは廃止され、モデル末期のグレード整理が行われました。

同年10月、新軽自動車規格に対応して大型化した2代目が登場し、販売終了となりました。約5年の間に、約90万台が販売される大ヒットモデルとなりました。1995年には最大のライバルとなるダイハツ・ムーヴも登場しており、この2台による熾烈な販売競争が繰り広げられました。

初代ワゴンRの登場から25年以上が経過し、今の売れ筋であり大ヒットとなっているのは、ホンダ・N BOXやダイハツ・タントに代表される、軽トールワゴンや軽ハイトワゴン。ミニバンにも劣らない居住性能を誇っており、ファミリーカーとしても十分使える程となっています。それも、このワゴンRの登場とヒットが無ければ、無かったのかもしれません。

 

【諸元】

 

 

 

スズキ・ワゴンR(CT21S/51S/CV21S/51S型)

全長×全幅×全高 3295mm×1395mm×1640-1695mm
ホイールベース 2335mm
乗車定員 4名
エンジン F6A型 直列3気筒SOHC 657cc(55ps/7500rpm)
F6A型 直列3気筒SOHC ICターボ 657cc(61ps/6000rpm)
K6A型 直列3気筒DOHC 658cc(58ps/7500rpm)
K6A型 直列3気筒DOHC ICターボ 658cc(64ps/6500rpm)
駆動方式 FF/4WD
トランスミッション 3AT/4AT/5MT
タイヤサイズ 135SR12
155/65R13