【スズキ】セルボ(初代SS20型)

1977年に発売された初代セルボは、フロンテクーペの流れを汲んだ軽スペシャリティカー。

排ガス規制に悩まされたライバル各社が、スポーティな軽自動車から足を引く中、スズキのイメージリーダーとして登場したのがセルボでした。

 
 
 
 
 
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【スズキ・セルボ(初代SS20型)の歴史】

 

 

安価で高出力、そしてスタイリングも人気を得たホンダ・N360が登場したのが1967年。軽自動車メーカー各社はN360に対抗すべく、スポーティなモデルを続々と追加していきました。ダイハツ・フェロー(初代L37型)がスポーティモデルの「SS」を追加すると、スバル・360(K111/212型)は「ヤングSS」、スズキ・フロンテ(2代目LC10型)は「SS」、三菱・ミニカ(2代目A100/101/104/105/106型)は「GSS」を追加し、馬力競争へと発展しました。

その後、高性能なエンジンを搭載するだけでなく、よりスポーティなスタイリングを持つモデルが登場。1970年10月に先陣を切ったのがホンダ・Z(初代N360/SA型)、1971年5月には三菱・ミニカスキッパー(A101/102型)、8月にはダイハツ・フェローMAX(2代目L38/39型)のハードトップモデルが登場。そして9月にスズキから発売されたのが、フロンテクーペ(LC10型)でした。

フロンテクーペは、イタリアのジョルジェット・ジウジアーロによるデザインを基に、スズキ社内で修正を加えたとされる独特のスタイリングが特徴で、低いノーズや、深く傾斜させたフロントウィンドウとリアウィンドウなどにより、ライバル各車と比較しても車高は低く、非常にスポーティなクーペスタイルを実現していました。
リアに搭載されたエンジンは、356ccの排気量から37psを発生する高出力なもので、0→400m加速は19.47秒という俊足ぶりを発揮しました。インパネやシートなどの内装もスポーティさを演出しただけでなく、ロールバーやフルバケットシートなどの競技用パーツがオプション設定され、その本格さは他車を凌駕する唯一無二の存在となりつつありました。

しかし、1970年代半ばを迎えると、排ガス規制の波が押し寄せ、高出力でスポーティな軽自動車は衰退の道を辿りました。フロンテクーペも例外ではなく、1976年8月に生産終了となりました。

出力低下が顕著になった軽自動車は、1976年に規格変更を受け、550ccに排気量を拡大。それに合わせ、フロンテクーペの550cc版後継モデルとして新たに発売されたのがセルボでした。

駆動方式はフロンテクーペを踏襲したRRレイアウト。サスペンションは前輪がダブルウィッシュボーン式、後輪がセミトレーリングアーム式で、こちらもフロンテクーペ同様。ブレーキは4輪ドラムを基本とし、上級グレードでは前輪ディスクが装備されました。

エンジンは「T5A型(直列3気筒2ストローク・539cc)」で、最高出力は28ps。排ガス規制への対応のため、フロンテクーペよりも出力ダウンととなりました。
トランスミッションは4速MTのみ。

 
 
 
 
 
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スタイリングそのものはフロンテクーペを踏襲したものとしながら、新規格に合わせる形でバンパーなどを大型化し、全長3190mm×全幅1395mm×全高1210mm。ホイールベースも20mm延長されていました。
他に、ヘッドランプを角型から丸型に変更、角形フォグランプをフロントグリル内に移動、フェンダーミラーの形状変更、リアウィンドウのガラスハッチ化などが行われました。

スポーティな印象を残しつつ、内装は大幅に変更。廉価グレードを除いて6連メーターを備えたインパネ、ステアリングホイールの3本スポークから4本スポークへの変更、セミバケット型のシートなど、さらにスポーティさを強調しました。
リアシートを備える4人乗りでしたが、後席は補助的な扱いで、2+2のようなもの。この後席は可倒式となったことで、ラゲッジスペースとしても使用可能でした。

 
 
 
 
 
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1977年10月発売となり、グレード構成は「CX」「CX-L」「CX-G」の3種類。CXはスタンダードな廉価使用、CX-Lは女性向け仕様、CX-Gはトップグレードの豪華仕様で、60.8~69.8万円の価格設定。
ほぼ同時期に発売されたダイハツシャレード(初代G10型)の価格が65.3~79.2万円だったことを考えれば、軽自動車としては高価なものでした。

1978年にマイナーチェンジ。ハイバック型だったフロントシートは、ヘッドレスト分離型となるなど、小変更が加えられました。

その後、1982年まで生産が続けられ、2代目SS40型へフルモデルチェンジ。2代目では、クーペスタイルは踏襲しつつ、より女性をターゲットにしたクルマに生まれ変わりました。
1979年にスズキ・アルト(初代SS30/40型)の発売以降、軽自動車は税制面で優遇されていた4ナンバーのボンネットバンに人気が集中し、セルボはスペシャリティな軽自動車の人気は低迷していったのでした。

 
 
 
 
 
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日本の軽自動車の歴史は目まぐるしく変化していました。軽自動車の礎を築いた1960年代、高出力やスポーティさを売りにした1970年代、維持費の安い4ナンバーボンネットバンが人気となった1980年代、ワゴンRの登場によりトール系が大人気となった1990年代。
不遇にもその狭間にデビューしてしまったクルマは、人気車の陰に埋もれてしまい、歴史に残る名車でありながら、販売面では苦戦してしまったクルマの1つが、セルボだったのです。

 

 

 

【諸元】

 

 

スズキ・セルボ(初代SS20型)

全長×全幅×全高 3190mm×1395mm×1210mm
ホイールベース 2030mm
乗車定員 4名
エンジン T5A型 直列3気筒2ストローク 539cc(28ps/5000rpm)
駆動方式 RR
トランスミッション 4MT
タイヤサイズ 5.20-10 4P
145SR10