【ホンダ】トゥデイ(初代JW1-4/JA1-3型)

ホンダにとって11年ぶりとなる軽自動車が、1985年に発売されたトゥデイ。

ロングホイールベースとワイドトレッドにより、広い室内を実現しただけでなく、高い操縦安定性を確保しました。

 

 

 


ホンダ・トゥデイ(初代JW1-4/JA1-3型)の歴史】

 

 

1967年のN360(N360型)で始まったホンダ軽乗用車の歴史ですが、その後継モデルであるライフ(初代SA/WA/VA型)が1971年に登場。4ドアもラインナップしたライフは、室内の広さや静かさを実現し、軽ファミリーカーを目指して開発されたクルマでしたが、1974年に販売終了。
軽自動車の車検義務化、保安基準の改正、排出ガス規制への対応などにより、小型乗用車との価格差が縮まり、軽自動車市場自体の縮小傾向にある中、大ヒットしていたシビック(初代SB/SG/SE/VG型)に傾注するために、ライフの生産を打ち切ったのでした。

ライフの生産終了以降、軽トラックを除いて軽自動車市場から離れていたホンダでしたが、11年ぶりの軽自動車として開発されたのがトゥデイでした。
1979年に発売されたスズキ・アルト(初代SS30/40型)が大ヒットすると、4ナンバー登録となる軽ボンネットバン市場が活性化。1980年のダイハツ・ミラクオーレ(L55型)、1981年のスバル・レックスコンビ(2代目KM/KN型)、1984年の三菱・ミニカ(5代目H10型)など、維持費の安い4ナンバーモデルが、軽自動車の新たなスタンダードになっており、ホンダもこれに乗る形で、トゥデイを開発しました。

ホンダは「M・M思想」と呼ばれるコンセプトを掲げました。「Man-Maximum Mecha-Minimim」の略で、人の居住スペースを最大限に取り、機械のためのスペースは最低限にする、という意味。
これを実現するため、ホイールベースは2330mmと長く、トレッドはフロントが1225mm、リアが1230mmと広く設定しました。当時の軽自動車のホイールベースは2150~2250mm程度が一般的な中で、圧倒的に長いホイールベースを採用しており、ホンダの小型乗用車であるシティ(初代AA/VF型)の2220mmや、バラードスポーツCR-X(初代AE/AF/AS型)の2200mmよりも長いものでした。

エンジンは31psの「EH型(直列2気筒SOHC・545cc)」で、アクティ(初代TA/TB/TC型)のものをリチューンして搭載しました。大型二輪車用の水平対向4気筒1.1Lエンジンを半分にしたものと言われています。
トランスミッションは4速MTと3速ホンダマチックの2種類を用意しました。

当時の軽自動車規格内の全長3195mm×全幅1395mm×全高1315/1320mmのボディサイズで、ライバル他車が全高を1400mm以上とすることで室内の広さを確保していた反面、トゥデイは低く設定してスポーティさを演出していました。
水平に搭載されたエンジンの下にデファレンシャルギアを配置することで、エンジンルームの全長を短く、ショートノーズのスタイルとし、広い室内空間を実現。独特のスラントしたボンネットから続く、傾斜の大きいフロントウインドウは、非常に大きな面積を持つもので、これにダブルリンクのシングルワイパーを配置しました。

エンジンフードとフロントバンパーに食い込むように配置された丸型ヘッドランプや、リアバンパーに埋め込まれたリアコンビネーションランプなど、ユニークなデザインも多く採用され、個性を主張しています。

1985年9月に発売され、当初は4ナンバー登録のバンのみでデビューしました。独特なスタイリングだけでなく、ロングホイールベースとワイドトレッドの恩恵によって得られた、当時の軽自動車として抜群の操縦安定性が話題となりました。

1987年2月、女性向け装備を備え、専用色を設定した「ポシェット」を限定車として発売。

1988年2月にマイナーチェンジが実施され、エンジンを「E05A型(直列3気筒SOHC・547cc)」に変更。36psのキャブレター仕様と、40~44psの電子制御燃料噴射仕様もラインナップしました。
外観では、ヘッドライトが丸型から角型に変更となり、リアコンビネーションランプは横方向に長いものにデザインが変更されました。このリアコンビネーションランプは後に、1990年以降のアクティバン/ストリートや、バモスホビオ(HM3/4/HJ1/2型)に流用されています。
また、ホンダマチックは3速フルオートマチックに変更となったほか、グレード構成の見直しや、装備の充実化が図られました。

1988年3月からは、5ナンバーの乗用モデルを追加しました。バンと同様、キャブレター仕様と電子制御燃料噴射仕様をラインナップ。

1990年2月には、軽自動車規格の拡大に伴ったマイナーチェンジを実施。エンジンは「E07A型(直列3気筒SOHC・656cc)」となり、42psのキャブレター仕様と、48psの電子制御燃料噴射仕様が搭載されました。
全長は100mm延長され、デザインも変更が加わりました。また、限定車だったポシェットは、好評につきカタロググレード化されました。

翌月には、リアルタイム4WD車が追加となり、乗用・商用ともにラインナップ。4WD車には、新開発のリアサスペンションが搭載され、四輪独立懸架となりました。

1993年1月、乗用モデルがフルモデルチェンジとなり、2代目JA4/5型にバトンタッチ。商用モデルはビジネス向けの「トゥデイPRO」のみが継続生産されました。

1994年9月、2代目JA4/5型の販売不振や、4ナンバーユーザーの確保のため、4ナンバー登録の「トゥデイハミング」を発売。バンに、パワーウインドウやパワーステアリング、エアコンなどの快適装備を備えた上、カラードバンパーやカラードドアミラー、ホイールキャップなどで外観も整え、主婦層などに向けたモデルとして販売されると、2代目JA4/5型を上回る人気となりました。

1998年9月、軽自動車規格の変更を前に、2代目JA4/5型とともに生産を終了。ライフ(3代目JB1-4型)に事実上統合され、13年の歴史に幕を下ろしました。

ロングホイールベースやワイドトレッド、ショートノーズなどの合理的なパッケージングによって、広い居住空間を実現したトゥデイは、まさにホンダらしい独特な軽自動車でした。
全高が高いスタイリングが主流となる中で、低くスタイリッシュなデザインは新鮮で、モデルチェンジ後も長く人気を得ていた理由もこの辺りにあるのかもしれません。

 

 

 

 

 

【諸元】

 

 

 

ホンダ・トゥデイ(初代JW1-4/JA1-3型)

全長×全幅×全高 3195mm×1395mm×1315/1320mm(~1990.2)
3295mm×1395mm×1330/1350mm(1990.2~)
ホイールベース 2330mm
乗車定員 4名
エンジン EH型 直列2気筒SOHC 545cc(31ps/5500rpm)(~1988.2)
E05A型 直列3気筒SOHC 547cc(36ps/6500rpm)(1988.2~1990.2)
E05A型 直列3気筒SOHC 547cc(40ps/8000rpm)(1988.2~1990.2)
E05A型 直列3気筒SOHC 547cc(42ps/8000rpm)(1988.2~1990.2)
E05A型 直列3気筒SOHC 547cc(44ps/8000rpm)(1988.2~1990.2)
E07A型 直列3気筒SOHC 656cc(42ps/6000rpm)(1990.2~)
E07A型 直列3気筒SOHC 656cc(52ps/7500rpm)(1990.2~)
駆動方式 FF/4WD
トランスミッション 3AT/4MT/5MT
タイヤサイズ 135SR12
145/70R12
145/65R13