【ホンダ】シビック(初代SB/SG/SE/VB型)
軽自動車より一回り大きな2ボックススタイルにFFレイアウト、欧州の流れを先取りしたシビックは異色の存在でデビューしました。
当初から世界戦略車として開発されており、欧米でも大ヒットを記録。シビックによってホンダの名は世界に知られるようになりました。
【ホンダ・シビック(初代SB/SG/SE/VB型)の歴史】
N360で大成功を収めたホンダは、1969年に空冷エンジンのホンダ・1300を発売して小型乗用車市場へ参入。しかし空冷エンジンにFFセダンという独特なパッケージングから販売は不調でした。
1971年に発売された軽自動車ライフ(初代SA/WA/VA型)の上級モデルとして、1972年7月にシビックを発売。
国産車では軽自動車以外にはほとんど前例がない、2ボックスのハッチバックスタイルは、はじめから世界戦略車として開発された証し。
全長3405mm×全幅1505mm×全高1325mmのコンパクトなボディでしたが、前後のオーバーハングを切り詰めてホイールベースを長く取ることで、室内空間は大衆車クラスのライバル車を大きく凌いでいました。
搭載されたのは「EB1型(直列4気筒SOHC・1169cc)」で、それまでのホンダの売りである高回転高出力型ではなく、出力を抑えた実用的なエンジンでした。出力は60psに過ぎず、当時68psを発揮していたライバルのトヨタ・カローラの1.2Lと比べると控え目でした。しかしながら、その代わりにフラットなトルク特性を持つ扱いやすいもので、走行性能はホンダらしくキビキビした走りを実現。
当初は、独立したトランクを持つ2ドアのみでデビューし、翌月の8月には、ハッチゲートを備えた3ドアハッチバックを発売。また、圧縮比を高めて69psを発揮する上級グレード「GL」を2ドア/3ドアに追加しました。「EB2型(直列4気筒SOHC・1169cc)」が搭載され、大型バンパーやタコメーターを標準装備。
1973年5月、2速セミオートマチックの「ホンダマチック」搭載車を追加しました。通常走行を行う☆(スター)レンジで、発進から最高速までをトルクコンバータのスリップを利用して無段変速するものでした。登坂時や急加速時、エンジンブレーキが必要な降坂時のためにLレンジも備わっており、通常の2速相当までの無段変速を行うポジションでした。ショックのないスムーズな変速が出来ることや、他メーカーのAT車と違って自動変速機構を有しないことから安価で済むことがメリットでした。
同時にGLのエンジンへ改良が加えられ、トルク特性の改善のため出力は66psに低下。そして、GLには国産車では初となるリアワイパーが装着されました。
12月には、1.5Lエンジンを2種類追加しました。「EC型(直列4気筒SOHC・1488cc)」と、CVCC仕様の「ED型(直列4気筒SOHC・1488cc)」。CVCCは、ホンダが開発したリーンバーン(希薄燃焼)させて排出ガス中の有害物質を少なくする技術で、1970年代から80年代にかけてのホンダエンジンの代名詞とも言える技術。当時、クリアすることが不可能と言われた米マスキー法(排気ガス規制法)を世界で初めてクリアしたのがCVCCエンジンでした。
さらに、ユーザーからの要望を受けて、4ドアセダンも追加しました。セダンとは言うものの、ファストバックスタイルのノッチレスセダンであり、2ドアの全長をストレッチしたモデルで、1.5Lのみが設定されました。
そして1974年10月、初代シビックの代名詞「1200RS」を追加。「ロードセーリング」の略とされるスポーツモデルで、EB1型エンジンにCV可変ベンチュリ―ツインキャブを装着して76psを発揮しました。トランスミッションには5MTを組み合わせ、足回りを強化、ラジアルタイヤを装着し、最高速度は160km/hに達しました。
翌月の11月には、5ドアライトバンの「シビックバン(VB型)」を発売。4ドアセダンをベースに、全長を3745mmまで延ばしてラゲッジスペースを確保し、最大積載量は2名乗車時で400kg。1.5LのEC型が搭載され、CVCCエンジンはラインナップされませんでした。
1975年8月、1.2Lエンジンを「EE型(直列4気筒SOHC・1238cc)」に置き換えられてCVCC化され、バンを除く全車がCVCC搭載車となりました。これによって1200RSは生産を終了することになり、約10か月の短命に終わりました。代わりに「1500RSL」を追加。また、バンのエンジンも改良され、50年商用車排出ガス規制に対応しました。
1976年5月には、4ドアセダンに1.2Lエンジン搭載車を追加。
1977年9月には、4ドアセダンのラゲッジをハッチゲートとした5ドアハッチバックを追加し、1.5Lエンジンのみがラインナップされました。同時に、フロントグリルやバンパー、リアコンビネーションランプのデザインを変更。
1978年6月、1.2Lエンジンは1.3Lの「EJ型(直列4気筒SOHC・1335cc)」に置き換えられ、年々厳しくなる排出ガス規制をクリアしました。同時に、4ドアセダンは廃止され、5ドアハッチバックに統合。
そして1979年7月、2代目モデルにモデルチェンジされ販売終了。キープコンセプトながらボディは大型化され、ノッチバックセダンを追加するなど、バリエーションも拡大しながら販売を続けました。
その後も、RVモデルであるシビックカントリーやシビックシャトル、北米で人気のあったシビッククーペ、ホットハッチモデルのシビックタイプRなど、多岐に渡るモデルを投入し、国内でも海外でも成功を収めるモデルとなりました。
異色の存在でデビューしたシビックは、国内をはじめ欧米でも人気に。北米では、アメリカ車とは比較にならないほどの燃費の良さと、マスキー法をクリアしたことによる「クリーン」なイメージも後押ししました。
このシビックの大成功によって、4輪車の歴史が浅いホンダの名前を、国内のみならず世界に羽ばたかせることができた、小さくて偉大なクルマでした。
【諸元】
全長×全幅×全高 | 3405/3560mm×1505mm×1325mm(2ドアセダン) |
3405/3560/3640mm×1505mm×1325mm(3ドアハッチバック) | |
3590/3655/3730mm×1505mm×1325mm(4ドアセダン) | |
3730mm×1505mm×1325mm(5ドアハッチバック) | |
3745/3825mm×1505mm×1380mm(バン) | |
3650mm×1505mm×1320mm(1200RS) | |
3730mm×1515mm×1325mm(1500RSL) | |
ホイールベース | 2200mm(2ドアセダン/3ドアハッチバック) |
2280mm(4ドアセダン/5ドアハッチバック/バン) | |
乗車定員 | 5名 |
エンジン | EB1型 直列4気筒SOHC 1169cc(60ps/5500rpm)(1972.7~1975.8) |
EB1型 直列4気筒SOHC 1169cc(69ps/5500rpm)(1972.8~1973.5・GL) | |
EB1型 直列4気筒SOHC 1169cc(66ps/5500rpm)(1973.5~1975.8・GL) | |
EB1型 直列4気筒SOHC 1169cc(76ps/6000rpm)(1974.10~1975.8・RS) | |
EE型 直列4気筒SOHC 1238cc(63ps/5500rpm)(1975.8~1978.6) | |
EJ型 直列4気筒SOHC 1335cc(68ps/5500rpm)(1978.6~1979.7) | |
EC型 直列4気筒SOHC 1488cc(65ps/5500rpm)(1973.12~1975.8) | |
ED型 直列4気筒SOHC 1488cc(63ps/5500rpm)(1973.12~1975.8) | |
ED型 直列4気筒SOHC 1488cc(70ps/5500rpm)(1975.8~1976.10) | |
ED型 直列4気筒SOHC 1488cc(73ps/5500rpm)(1976.10~1977.9) | |
ED型 直列4気筒SOHC 1488cc(75ps/5500rpm)(1977.9~1979.7) | |
駆動方式 | FF |
トランスミッション | セミ2AT/4MT/5MT |
タイヤサイズ | 6.00-12 4P |
155SR12 | |
155SR13 |