【トヨタ】セラ(XY10型)

バブル景気に押されて企画された小型スペシャリティカーのセラと言えば、何と言ってもガルウイングドアが最大の特徴。

大きな話題となった割に、販売成績は今一つ。走りが平凡すぎたことが原因でした。

 

 

 


トヨタ・セラ(XY10型)の歴史】

 

 

空前の好景気の中で開催された、1987年の東京モーターショーに、トヨタが出展した小型スペシャリティのコンセプトカー「AXV-Ⅱ」。ガラスを多用したボディにガルウイングドアを装備し、観客の注目を集めました。
その注目の大きさから、トヨタはこれを市販化する準備を進め、1990年3月に発売されたのがセラでした。

ベースとなったのは当時開発途中だったスターレット(4代目P80型)。サスペンション周りもスターレットと共通の、前輪がマクファーソン式、後輪がトレーリングアーム式を採用。ブレーキも共通で、前輪にシングルピストンのVディスク、後輪にはドラム式を採用しました。4輪ABSがオプション設定され、装着した場合には後輪ブレーキがディスク式に変更。

ガルウイングドアやガラスの多用の結果、剛性確保のためにボディが重くなったため、エンジンに関してはスターレット用の1.3Lを流用は出来ませんでした。
ロングストローク化して開発したエンジンは「5E-FHE型(直列4気筒DOHC・1496cc)」で、最高出力は110psを発揮しました。
トランスミッションには5速MTと4速ATを用意。

全長3860mm×全幅1650mm×全高1265mmのコンパクトなクーペスタイルで、ルーフにまで回り込むガルウイングドアやサイドウインドウ、大きな曲面を描くリアウインドウなど、AXV-Ⅱのコンセプトをそのまま具現化しました。

セラに採用されたガルウイングドアは、正確にはバタフライドアの一種で、ルーフ部とAピラー下部の2点のヒンジを軸に、上方向にドアを開く方式。通常レーシングカーなどでは、ドライバーが迅速に交代できるために採用されますが、セラの場合には、開放感の大きなグラスキャノピーを可能にするためと、話題性の高い新しいクルマを作るためなどであり、当時としては高い技術でこれを実現したことで、トヨタの企業イメージをアピールする効果もありました。

一般的なハッチバックドアなどに採用されるガスストラットは、封入されたオイルの粘度により、気温に応じて動作の固さが変わってしまうことがよくありますが、セラにはドアダンパーに加えて温度補償ダンパーをドア内部に組み込むことで、温度にほとんど依存しないガスストラットを実現しました。
また、バタフライドアとしたことで、全開時の高さや、開閉時の横方向への張り出しを最小限に抑え、通常ドアよりも狭いスペースでの開閉も可能としました。

大きなガラスルーフによって作り出されるパノラマの開放感は、オープンカーに匹敵するほど高いもので、その抜群の開放感を天候や寒暖に関係なく満喫することができました。
一方で、キャビンの重量が嵩んだことで重心が高くなってしまうことや、室内が外から丸見えとなるなどのデメリットも少なからず存在していました。

運転席を主体としたダッシュボードの造形や、メーターや操作系の配置など、インパネが外から見えやすいことを考慮して、デザイン性の高いものを採用。後席に2名が乗車可能な4人乗りでしたが、後席は窮屈で、補助的なもの。
また、ガラスルーフの遮熱性は高いものでしたが、大きなガラスエリアによる室温変化は大きく、エアコンは同クラス車よりも大型のものが採用されています。

オーディオにもこだわり、音響解析をして最適配置されたスピーカーを装備した、スーパーライブサウンドシステムをオプション設定。反響音や残響音を調節するDSP(デジタルシグナルプロセッサー)や、10スピーカーシステムなど、当時としてはトップレベルの音響システムでした。

メタリック系のボディカラー6色でデビューし、そのカラフルさも話題となりました。
話題性に富んだスタイリングや、豪華・快適装備なども備えながら、160.0万円~188.1万円と、リーズナブルな価格も実現しました。

1991年3月には、ボディカラーが見直されてソリッドカラーもラインナップ。シート地の改良や、キー抜き忘れ警報装置も装備されました。

1992年6月のマイナーチェンジでは、サイドドアビームの標準採用や、運転席エアバッグとリア3点式シートベルトをオプション設定するなど、安全装備を充実化。

1993年2月に、リア3点式シートベルトが標準装備化となったほか、エアコンを新冷媒に変更しました。

1996年1月に販売終了。6年間で約1万6千台が生産されました。
当時は、RVブームの中でSUVステーションワゴンが流行し、一方では好景気に押されて高級車や高級スポーツカーが売れた時代。個性的ではあったものの、走りは平凡だったセラには、あまり手が伸びませんでした。マイナーチェンジや改良を重ねても結果は変わらず、販売面は苦戦し、バブル崩壊後の車種整理のため、生産を終えました。

 
 
 
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遊び心の少ない、平凡な車種が多いイメージのあったトヨタにとっては、個性あふれる斬新なクルマを生み出すことで、トヨタにも魅力的なクルマがあることを知らしめる効果がありました。
開発余力のある大手メーカーだからこそ作り出すことが出来たクルマであり、販売価格を見ても採算を考えたクルマではなかったのでしょう。

 

 

 

 

【諸元】

 

 

 

トヨタ・セラ(XY10型)

全長×全幅×全高 3860mm×1650mm×1265mm
ホイールベース 2300mm
乗車定員 4名
エンジン 5E-FHE型 直列4気筒DOHC 1496cc(110ps/6400rpm)
駆動方式 FF
トランスミッション 5MT/4AT
タイヤサイズ 175/65R14