【ダイハツ】リーザ(L100/110型)

スズキ・セルボの独占状態だった軽スペシャリティカー市場に、ダイハツが投入したリーザ。実用的なミラとは一線を画した、クーペ風ボディを纏って華々しくデビューしました。

後にはオープンモデルのリーザ―スパイダーも登場し、話題となりました。

 

 

 


ダイハツ・リーザ(L100/110型)の歴史】

 

 

スズキ・アルト(初代SS30/40型)の登場以降、軽自動車市場では物品税のかからない4ナンバーモデルが主流となり、アルト(2代目CA71/72/CC71/72型)やダイハツ・ミラ(2代目L70/71型)、三菱・ミニカエコノ(5代目H10型)、スバル・レックスコンビ(2代目KM/KN型)など、軽自動車を生産する各メーカーは主力モデルを揃えていました。

一方、1970年代に流行したスズキ・フロンテクーペ(LC10型)やダイハツ・フェローMAXハードトップ(L38型)、三菱・ミニカスキッパー(A101/102型)、ホンダ・Z(初代N360/SA型)などのスポーティなモデルは、排ガス規制の影響を受けて廃止となった例が多く、1980年代に存在していたのはフロンテクーペを源流に持つセルボ(2代目SS40型)のみという状況。ダイハツはここに目を付け、リーザの開発に乗り出しました。

ミラのシャシーをベースとして、ホイールベースは120mm短縮。サスペンションも、前輪がストラット式、後輪がセミトレーリングアームと、四輪独立懸架を採用。一部グレードでは、フロントディスクブレーキやラジアルタイヤも装備されました。

1986年12月の発売当初の搭載エンジンは、NA仕様で32psの「EB-10型(直列3気筒SOHC・547cc)」と、インタークーラーターボ仕様で50psを発揮する「EB-21型(直列3気筒SOHCターボ・547cc)」の2種類。
トランスミッションは5速MTのほか、女性ユーザーも意識して2速ATもラインナップされました。

ミラに比べて全高が80mm低いボディサイズは、全長3195mm×全幅1395mm×全高1335mm。全体的に丸みを帯びたラウンドスタイルで、スポーティなクーペスタイルを演出しました。前後アンダースポイラーやサイドアンダースポイラー、ルーフエンドスポイラー、ベルトラインスポイラーなどをオプション設定。
5ナンバー登録のセダンと、4ナンバー登録のバンの2種類がラインナップされ、ターボエンジンはバンにしか用意されないなど、あくまで主力は当時の主流であるバン。

バン登録できるように、一定の荷室を確保する必要があったため、後席スペースは狭められましたが、一方で運転席の着座位置を後方に下げることで、スペシャリティカーとしてのドライバーズポジションを確保。
フルトリム化された内装は軽自動車初で、インパネからドアトリム、バックドアへと続くラインで、広々とした高級感を演出しました。

1989年1月にマイナーチェンジが実施され、NA車はカラードバンパーやサイドストライプを標準装備し、3速AT車が追加されました。フルファブリックシートやカラードドアミラー、エアコンなどを装備した特別仕様車「ChaCha」を発売。ターボ車のトップグレードだった「Z」は廃止され、新たに「TR-ZZ」と「TR-ZZ EFI」を追加しました。TR-ZZにはキャブレター仕様の「EB-20型(直列3気筒SOHCターボ・547cc)」を搭載、TR-ZZ EFIにはインジェクション仕様の「EB-26型(直列3気筒SOHCターボ・547cc)」が搭載され、後者は自主規制値である64psを達成しました。

1989年10月には、特別仕様車「ケンドーン」と「クラブスポーツ」を追加。セダンには「ケンドーンS」が設定されました。

1990年8月に、軽自動車規格変更(660cc化)のためのマイナーチェンジを実施。ミラやハイゼットの新規格対応を急いだため、リーザの対応は半年ほど遅れました。キャブレター仕様の「EF-HL型(直列3気筒SOHC・659cc)」が搭載され、50psを発揮。ボディはそのままに、前後バンパーが大型化され、新規格枠いっぱいの全長3290mmとなりました。
また、物品税の廃止と消費税の導入により、4ナンバーバンのメリットが少なくなったため、全車セダンへと移行。グレード整理も行われ、廉価グレードの「R」、スポーツグレードの「OXY」、女性向けグレードの「ChaCha」の3種類のみとなりました。

1991年1月には、64psを発揮する「EF-JL型(直列3気筒SOHCターボ・659cc)」を搭載した「OXY-R」を発売。ビスカスLSDを標準装備しました。

1991年11月、リーザのスペシャリティ感をさらに向上させようと、ルーフを大胆にカットして幌を付けた2シーターオープンモデルの「リーザスパイダー」を発売。
ホンダ・ビート(PP1型)やスズキ・カプチーノ(EA11/21型)、オートザムAZ-1(PG6型)など、他社はオリジナリティ溢れる新型スペシャリティカーを投入していた中、ダイハツは既存モデルのオープン化という奇策に出ました。
しかし、走行時の幌のバタつきやボディの剛性不足が指摘されたことや、ライバル他車と比較するとどうしても見た目のバランスが悪いことなどから、販売台数は伸び悩み、380台ほどが生産されたに留まりました。

1991年12月に生産を終えて在庫対応となり、1993年には販売を終了。後継モデルは1992年1月に登場したオプティ(初代L300/310型)で、女性をターゲットにした丸みを帯びた可愛らしいスタイルとなりました。ライバルのセルボも新規格化の際にアルトの上位モデルとして生まれ変わっており、クーペテイストを持つ軽スペシャリティモデルは、時代の変化と共に消えていくことになりました。

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多様化を見せていた1980年代の自動車市場において、次なる軽自動車を模索していた各メーカーの中で、ダイハツはクーペに目を付けました。奇抜なデザインによって低迷したセルボ(3代目CG72/CH72型)を横目に、一定の販売成績を収めたリーザでしたが、その7年後にはハイトボディで実用性の高いスズキ・ワゴンR(初代CT21/51/CV21/51型)が発売されて異例の大ヒットを記録することを考えれば、既に軽クーペは時代遅れだったのかもしれません。

 

 

 

【諸元】

 

 

ダイハツ・リーザ(L100/110型)

全長×全幅×全高 3195/3295mm×1395mm×1335/1355mm
3295mm×1395mm×1345mm(リーザスパイダー)
ホイールベース 2130/2140mm
乗車定員 2/4名
エンジン EB-10型 直列3気筒SOHC 547cc(32ps/6000rpm)(~1990.8)
EB-21型 直列3気筒SOHC ICターボ 547cc(50ps/6000rpm)(~1990.8)
EB-50型 直列3気筒SOHC ICターボ 547cc(50ps/6500rpm)(1989.1~1990.8)
EB-26型 直列3気筒SOHC ICターボ 547cc(64ps/6500rpm)(1989.1~1990.8)
EF-HL型 直列3気筒SOHC 659cc(50ps/7500rpm)(1990.8~)
EF-JL型 直列3気筒SOHC ICターボ 659cc(64ps/7500rpm)(1991.1~)
駆動方式 FF
トランスミッション 2AT/3AT/4MT/5MT
タイヤサイズ 145/70R12
155/70R12