【スズキ】スズライト・キャリイ(初代FB/FBD型)

軽商用車のニーズが三輪から四輪に代わり始めた1960年頃、スズキもその商機を逃さぬように開発したのがスズライト・キャリイ。

ライバル各車に比べて圧倒的に広い荷台を備えたことが最大の特徴でした。

 

 

 


【スズライト・キャリイ(初代FB/FBD型)の歴史】

 

 

1950年代、中小メーカーを含めた数々のメーカーから軽三輪トラックが登場。ドアの無い幌屋根で、バーハンドルで操舵する1人乗り仕様がほとんどで、その代表例はダイハツ・ミゼット(初代DK/DS型)でした。
その後、2代目MP型では上級移行し、ドア付きのキャビンや丸ハンドルを備え、マツダ・K360(TKBA43型)や三菱・レオ(LT10型)なども同じような仕様で登場しました。しかし、バーハンドル時代の軽便性は失われた上に、荷台長は短くなる結果となり、そこで台頭してきたのが、軽四輪トラックでした。

スズライト(初代SS/SL/SP/SD型)で1955年に軽自動車市場に参入していたスズキは、1959年には2代目TL型も発売し、市場の一角を担うメーカーへと成長し始めていました。軽四輪トラックのニーズが高まりに応える形で開発されたのがスズライト・キャリイで、短期間で開発が進められ、1961年10月に発売されました。

FRレイアウトのシャシーは低床ラダーフレームで、サスペンションは前後ともリーフスプリングと、構造が簡単で強度にも優れ、耐久性に考慮されたもの。
エンジンはキャリイ用に新開発された「FB型(空冷2ストローク2気筒・359cc)」で、二輪車用の単気筒エンジンを連結したような作りとなっており、高回転型の設計となっていました。実際にはトランスミッションでトラックとしての実用を重視した回転域に落とされました。トランスミッションは2速以上にシンクロ機構を持つ4速MTを採用。

全長2990mm×全幅1295mm×全高1550mmのボディサイズは当時の軽自動車規格に収まるもので、エンジンをシート下に配置したセミキャブオーバー型。先行していたボンネット型のダイハツハイゼット(L35/36型)やマツダ・B360(KBBA33型)に比べて、ボンネット長を短くすることができたことで、荷台面積を広く取ることに成功しました。
最大積載量は現代と変わらない350kg。荷台には幌もオプション設定されました。

フロントウィンドウは曲面ガラスを用いて視認性を向上。三角窓とベンチレーターを両方採用して車内環境にも配慮し、セミキャブオーバー型としたことで足元は広く、ライバル他車と比べて快適なことが売りでした。

1964年9月には、バンを追加。後席にはドアを持たない3ドア仕様で、最大積載量は2名乗車時300kg、4名乗車時200kgでした。

1965年6月にフルモデルチェンジを受け、2代目L20型にバトンタッチ。2代目はキープコンセプトのセミキャブオーバー型で登場し、翌1966年3月にはフルキャブオーバー型の3代目L30型が早くもデビュー。L20型とL30型は共に1969年7月のフルモデルチェンジまで併売されました。
その後、ダイハツハイゼットとライバル競争を繰り広げながら、軽トラックを代表するモデルへと成長し、現代に至っています。

日本の軽トラックは、荷台面積の確保、前方クラッシャブルゾーンの確保、特に空荷時の走行安定性(ホイールベース)などのいろいろな観点から、ボンネット型、フルキャブオーバー型、セミキャブオーバー型、リアエンジン車など、様々なレイアウトが試行錯誤されて現代まで発展してきました。
その中でも初代キャリイは、前述した3つの課題を当時として合格点でクリアしており、当初から出来のいいクルマだったことが伺えます。

 

 

 

 

【諸元】

 

 

 

スズライト・キャリイ(初代FB/FBD型)

全長×全幅×全高 2990mm×1295mm×1550mm
ホイールベース 1850mm
乗車定員 2/4名
エンジン FB型 空冷2ストローク2気筒 359cc(21ps/5500rpm)
駆動方式 FR
トランスミッション 4MT
タイヤサイズ 4.50-12 6P