【トヨタ】アリスト(初代S140型)

セルシオやシーマのヒットによって、高級セダンが飛ぶように売れた1990年頃。トヨタは、走りを極めたハイパフォーマンスセダンとしてアリストをデビューさせました。

その高性能さは「国産最速セダン」と呼ばれるほどで、280psを発揮するツインターボエンジンが、スープラに先駆けて搭載されました。

 

 

 


トヨタ・アリスト(初代S140型)の歴史】

 

 

トヨタ・クラウン日産・セドリック/グロリアに代表される国産高級セダンは、かつては5ナンバーフルサイズが基本で、上級グレードの3ナンバー車には、サイドプロテクションや大型バンパーを装備する程度。その流れが変わったのは1987年9月に登場したクラウン(8代目S130型)で、3ナンバーのワイドボディ車には、トレッドを拡幅した上で、専用のフェンダーやドアが用意され、ようやく本格的な3ナンバーセダンとなりました。

1988年1月には日産・シーマ(初代Y31型)が3ナンバー専用車としてデビューして大ヒット、1989年10月にはトヨタセルシオ(初代XF10型)がさらに大きなボディを纏ってデビューするなど、その間に自動車税の税制が改正されて3ナンバー車に対するハードルが低くなったこともあり、各メーカーが3ナンバー高級セダンの発売に走ったのが1990年前後の出来事でした。
クラウン(9代目S140型)やセドリック/グロリア(Y32型)、ホンダ・レジェンド(2代目KA7)は3ナンバー専用ボディとなったほか、3ナンバー専用車として三菱・ディアマンテ(初代F10/20型)がデビュー、ホンダ・インスパイア/ビガー(CB5/CC2/3型)も3ナンバー車を設定するなど、好景気とも重なり、数々の高級セダンが市場に放たれていきました。

トヨタも例外ではなく、むしろ他メーカーより積極的に高級セダンをリリース。1992年頃には、セルシオ、アリスト、クラウンマジェスタ、クラウン、ウィンダム、マークⅡ/チェイサー/クレスタ、セプターと、3ナンバーセダンが乱立状態となるほどで、その中でも、ハイパフォーマンスな高級スポーツセダンに位置付けられたのが、アリストでした。

シャシークラウンマジェスタと共通のフルモノコック構造で、前後ともダブルウィッシュボーン式サスペンションの四輪独立懸架を採用。クラウンマジェスタに採用されたエアサスペンションは搭載されませんでした。ブレーキはツインピストンキャリパーを備えた大径のVディスク式。

当初のエンジンは2種類で、230psの「2JZ-GE型(直列6気筒DOHC・2997cc)」と、ツインターボ仕様で280psの「2JZ-GTE型(直列6気筒DOHCターボ・2997cc)」。
2JZ-GTE型は、日産のRB26DETT型と並んで、当時は国内最速エンジンとされたもので、トヨタが「2ウェイツインターボ」と呼んだシーケンシャルツインターボを搭載。2基のターボチャージャーを可変的に動作させ、低速域から高速域まで滑らかな加速感を実現しました。後に、スープラ(2代目A80型)にも搭載された、トヨタ屈指の高性能エンジンでした。
トランスミッションは4速ATのみで、MT車の設定はありません。

全長4865mm×全幅1795mm×全高1405mmのボディサイズは、セルシオとクラウンの中間に位置する堂々としたもので、4ドアピラードハードトップクラウンマジェスタに対し、プレスドアを持つ4ドアセダンを採用しました。
基本的なデザインはイタルデザインのジョルジェット・ジウジアーロによるもので、これをトヨタ社内でリファインしたもの。全体的に丸みを帯びたスタイリングで、空力性能にも配慮されており、Cd値は0.30を達成しました。

セルシオのイメージが漂う高い質感のインパネは、クラウンマジェスタとは異なるもので、オプティトロンメーターやパワーシート、本革巻きステアリングやシフトノブなどを標準装備。8スピーカーのスーパーライブサウンドシステムも全車に装備されました。
デビュー当初は、NA車の「3.0Q」と、ターボ車の「3.0V」の2グレードのみで、それぞれ380.0万円と474.0万円で発売。クラウンマジェスタの3.0L車が434.0万円~535.3万円だったことを考えれば、比較的安価な設定でした。

1992年10月には、4WDの「4.0Z i-Four」を追加。エアサスペンションを装備し、セルシオと同じ260psの「1UZ-FE型(V型8気筒DOHC・3968cc)」を搭載しました。
また、3.0L NA車にはラグジュアリー志向の「3.0Q-L」をラインナップ。

1993年からは、北米向けのレクサスブランドから「GS300」として販売開始しました。国内仕様の3.0Qに相当するNA車のみ。

1994年8月にマイナーチェンジを実施し、フロントグリルやリアコンビネーションランプ、リアバンパーなどのデザインを変更しました。
NA車には装備を充実させた「3.0Q Lパッケージ」、ターボ車には装備を簡略化した「3.0V Sパッケージ」を設定しました。

1995年8月には、ABSやデュアルエアバッグ、プリテンショナー付きシートベルトを標準装備とし、安全装備の充実化を図りました。
さらに、NA車にユーロチューンドサスペンションを装備した特別仕様車「3.0Q リミテッド」を設定。

1996年7月の改良では、エンジンをVVT-i(可変バルブタイミング機構)化。

1997年8月、2代目S160型にバトンタッチして販売終了。2代目でも、ツインターボエンジンを搭載するなどの路線は変わりませんでしたが、クラウンマジェスタとの姉妹関係は無くなり、より独立したモデルとなりました。
その後、国内でのレクサスブランド立ち上げに伴い、2005年にはレクサス・GS(初代S190型)へと後を継ぎ、アリストの名称は途絶えてしまいました。

アリストは、高性能と高品質を武器に国内でも一定の人気を誇っただけでなく、海外市場でもセルシオ(レクサス・LS)と共に高い人気を集めました。その評判はメルセデスベンツ・EクラスやBMW・5シリーズにも引けを取らないもので、トヨタやレクサスの高級セダンを世界に通用するものにした張本人だったのでした。

 

 

 

 

【諸元】

 

 

トヨタ・アリスト(初代S140型)

全長×全幅×全高 4865mm×1795mm×1420mm(~1994.8)
4920mm×1795mm×1420mm(1994.8~)
4865mm×1795mm×1405mm(4.0L車・~1994.8)
4920mm×1795mm×1405mm(4.0L車・1994.8~)
ホイールベース 2780mm
乗車定員 5名
エンジン 2JZ-GE型 直列6気筒DOHC 2997cc(230ps/6000rpm)
2JZ-GTE直列6気筒DOHC ICツインターボ 2997cc(280ps/5600rpm)
1UZ-FE型 V型8気筒DOHC 3968cc(260ps/5400rpm)
駆動方式 FR/4WD
トランスミッション 4AT
タイヤサイズ 215/65R15
215/60R16
225/55R16