【日産】キューブ(初代Z10型)

コンパクトハイトワゴンが台頭してきた1990年代後半、日産が送り出したキューブは、スクエアで個性的なデザインを採用した、実用性に優れたクルマ。

発売当初は月販1万台を超す大ヒットとなりました。

 

 

 


日産・キューブ(初代Z10型)の歴史】

 

 

1990年代の国内市場は、1BOX車やRV車などのブームによって多様化が進み、1BOX車は商用派生型から乗用専用に開発されるようになって「ミニバン」となり、RV車はかつての本格4WDよりも都会派なコンパクトRVが流行。乗用車の乗り味のままに、使い勝手に優れるクルマが求められるようになりました。

1990年代後半には当然ながらコンパクトカー市場にもその流れが到達し、各メーカーが開発したのがコンパクトハイトワゴンという新しいジャンル。
当時のコンパクトカーは、トヨタスターレット(5代目P90型)や日産・マーチ(2代目K11型)、ホンダ・ロゴ(GA3/5型)、ダイハツシャレード(4代目G200型)、スズキ・カルタス(3代目GA11/21/GB21/31型)など、背が低いスタイルが主流でしたが、これらをベースにしたコンパクトサイズながら、背を高くして広い室内空間を実現したコンパクトハイトワゴンが、次々とデビューしました。

その先陣を切ったのがキューブで、ベースとなったのはマーチ。シャシーなどは流用されており、2360mmのホイールベースや、フロントがストラット式、リアが5リンク式のサスペンション形式も同一。
エンジンは当初1種類で、82psの「CG13DE型(直列4気筒DOHC・1274cc)」を搭載し、トランスミッションは4速ATとCVTから選択が可能でした。

全長3750mm×全幅1610mm×全高1625mmのボディサイズで、全てマーチより大きく作られていますが、特に全高は200mも高く設定されました。
低く流麗なスタイリングが王道だったそれまでとは異なり、実用性に優れるよう、高く四角いスタイリングが特徴。テールゲートは上開きで、バンパー上部まで開くことができるようになっており、大きい荷物や重い荷物の積み下ろしにも配慮し、ガラスハッチのみの開閉も可能となっていました。

インパネは使い勝手を考慮したシンプルなものとし、シフトレバーはコラム式を採用。ステアリングは180SX(S13型)と同じものが装備されており、シンプルさの中にもスタイリッシュさを備えました。後席シートは分割可倒式とし、長尺ものを積載した状態で3人乗車が可能でした。

1998年2月、114.8万円~144.1万円で発売。廉価グレードの「F」、標準グレードの「S」、上級グレードの「X」、さらにオーテックジャパンがプロデュースしたスタイリッシュな「ライダー」の4グレードでスタートしました。
販売は上々で、生産累計台数は10か月で10万台を突破し、日産としては1982年に発売されたマーチ(初代K10型)に次ぐスピード達成でした。

オーテックジャパンによる特別仕様車が度々発売され、1998年12月には「イエローバージョン」、1999年4月には「プレミアム」を発売。

1999年11月にマイナーチェンジを実施して、新たに4WD車が設定されました。搭載エンジンは85psの「CGA3DE型(直列4気筒DOHC・1348cc)」に変更され、CVT車は「N-CVT」から「ハイパーCVT」に変更。メーターやステアリングのデザイン変更や、ライダーのカラーバリエーション追加、プレミアムの一部仕様変更などが行われました。

1999年12月の「スペシャルエディション」、2000年5月の「Sリミテッド」、2000年6月の「NAVIエディション」と、立て続けに特別仕様車を発売。

2000年9月にマイナーチェンジを実施し、前後バンパーやフロントグリルのデザインを変更。リアシートにはスライド機構が追加され、4人乗りだった乗車定員は5人乗りとなりました。
同時に、丸型ヘッドランプを装備したオーテックジャパン特別仕様車「スクエア」を発売し、代わりにライダーは日産扱いに変更されました。

2001年5月には、搭載エンジンをCGA3DE型のまま、ハイオク仕様として101psにまで引き上げた「αシリーズ」を追加しました。
グレード体系は見直され、アウトドアブランドのコールマンとのタイアップモデルである「コールマンバージョン」を期間限定で発売。

2001年8月、アウトドアブランドのサロモンの協力によって開発された、「バージョン-S」「バージョン-S-α」を期間限定で発売しました。

2002年10月に2代目Z11型にフルモデルチェンジ。キープコンセプトではあるものの、左右非対称デザインや角を丸めたデザインなどで、初代のシンプルさとは異なる魅力で再スタートを切り、2代目も大ヒット作となりました。その後、3代目Z12型へ引き継ぐも、市場の変化と共にコンパクトワゴン市場は衰退し、2020年に生産を終えました。

キューブの大ヒットにより開拓されたコンパクトハイトワゴン市場は、同年にホンダ・キャパ(GA4/6型)、翌年にはトヨタファンカーゴ(XP20型)や三菱・ミラージュディンゴ(CQ1/2/5型)、2000年には最大のライバルとなるトヨタ・bB(初代XP30型)が発売されるなど、一気に活性化しました。
しかし次第にコンパクトハイトワゴン市場の中でも多様化が始まり、トヨタシエンタ(2代目XP170型)やホンダ・フリード(2代目GB5-8型)などのSサイズミニバンや、トヨタ・ルーミー/タンク/ダイハツ・トール(M900/910型)やスズキ・ソリオ(2代目MA26/36/46型)などのスライドドアを持つコンパクトカーに人気が移り、現代に生きています。

 

 

 

 

【諸元】

 

 

日産・キューブ(初代Z10型)

全長×全幅×全高 3750/3770mm×1610mm×1625mm
3815mm×1610mm×1625mm(スクエア)
ホイールベース 2360mm
乗車定員 4/5名
エンジン CG13DE型 直列4気筒DOHC 1274cc(82ps/6000rpm)(~1999.11)
CGA3DE型 直列4気筒DOHC 1348cc(85ps/6000rpm)(1999.11~)
CGA3DE型 直列4気筒DOHC 1348cc(101ps/6400rpm)(αシリーズ)
駆動方式 FF/4WD
トランスミッション CVT/4AT
タイヤサイズ 165/70R13
175/60R14