【日産】ラシーン(NB14型)

1994年に日産が送り出したラシーンは、サニーがベースのコンパクトクロスオーバーSUV。都会にも似合う背の低いワゴンスタイルのSUVは、手頃に味わえるSUVとして人気を博しました。

1980年代後半に一大ブームを巻き起こした「パイクカー」の流れを汲んだ、レトロ風で飽きの来ないデザインも人気の一因となりました。

 

 

 


ラシーン(NB14型)の歴史】

 

 

1990年頃に巻き起こったSUVブーム(当時は「RVブーム」)の主役は、トヨタハイラックスサーフ(2代目N130型)や三菱・パジェロ(2代目V10/20/30/40型)、日産・テラノ(初代WD21型)、いすゞ・ビッグホーン(2代目UBS25/26/69/73型)といった、オフロード色と乗用車的な乗り味を併せ持った、比較的大柄なSUV
スズキ・エスクード(初代TA01/11/31/51/TD01/11/31/51/61型)やダイハツ・ロッキー(F300型)など、コンパクトなSUVも一部存在しており、これらもオフロード色の強いモデルでした。

異色なSUVモデルとして1980年代から存在しており、ラシーンと似たコンセプトを持つのが、トヨタスプリンターカリブ。1982年に登場した初代L20型はターセル/コルサ/カローラⅡ(L20型)がベース、1988年にモデルチェンジした2代目E90型はカローラ/スプリンター(E90型)がベースで、最低地上高を多めに取り、SUVの味付けをしたステーションワゴンスタイルで、全車4WD。後の「クロスオーバーSUV」の先駆け的な存在でした。

そんな中、1994年にトヨタRAV4(初代XA10型)を、1995年にホンダはCR-V(初代RD1/2型)を発売し、エスクードなどのコンパクトSUVクラスへと参入し、それぞれ大ヒットを記録しましたが、日産がターゲットとしたのはスプリンターカリブをライバルとする背の低いSUVクラスでした。

サニー(7代目B13型)の4WD車のシャシーをベースとし、全車フルタイム4WDを採用。
エンジンは「GA15DE型(直列4気筒DOHC・1497cc)」1種類のみで、トランスミッションは4速ATと5速MTが用意されました。

2ボックスの5ドアステーションワゴンスタイルは、直線基調のボクシーなもの。Be-1(BK10型)やパオ(PK10型)、フィガロ(FK10型)で一大ブームを巻き起こした、「パイクカー」の要素を多く含み、レトロ調なデザインを多く採用しました。
一般的な立体駐車場に入れるよう、全高1450/1515mm(ルーフレールの有無)に設定し、SUVらしくない背の低いスタイルとなりましたが、トップグレードにはフロントグリルガードを装備し、テールゲートは上下2分割式を採用、そのテールゲート背面にはスペアタイヤを配置するなど、SUVらしさを演出しました。

 
 
 
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ベースグレードが「タイプⅠ」で、その廉価版が「タイプⅠ B仕様」、タイプⅠに背面スペアタイヤとファッションルーフレールを装着した「タイプⅡ」、さらにフロントグリルガードや大型ガラスサンルーフ、専用アルミホイールを装備した「タイプⅢ」と、4グレード体制で1994年12月に発売されました。

当時既にモデル末期となっていたスプリンターカリブとは印象も異なるラシーンは、新しいジャンルのSUVとして人気を博し、順調な販売成績を記録しました。
当時はアウトドアで使えるクルマが人気となっていた中で、普通のステーションワゴンでは物足りないものの、通常のSUVやミニバンでは大きすぎ、街でもアウトドアでも使いやすい5ナンバーワゴンが欲しいユーザーに受け入れられたのでした。

1995年8月には、タイプⅠにルーフレールやウッド調のインテリアを装備した特別仕様車「タイプF」を、1996年4月には、タイプⅠにルーフレールや背面スペアタイヤ、ボディ同色ドアミラー、専用ホイールキャップなどを装備した特別仕様車「タイプL」、1996年9月には、タイプⅠにルーフレールやボディ同色ドアミラー、キーレスエントリー、ABSなどを装備した、特別仕様車「タイプJ」を追加しました。

1997年1月にマイナーチェンジを行い、外観上の違いはフロントグリルのデザイン変更と、フロントウィンカーをクリアレンズ化したこと。その他、全車にデュアルエアバッグやABSを標準装備して安全性を向上。
新グレードとして「ft」シリーズも追加しました。ftシリーズは全車4速ATで、125psを発揮する「SR18DE型(直列4気筒DOHC・1838cc)」が搭載され、センターデフとビスカスカップリングを組み合わせた4WDシステム「ATTESA」を採用。(従来の4WDは、センターデフを持たないビスカスカップリング方式)
グレード構成も見直され、タイプⅢとタイプⅠ B仕様は廃止されました。

1998年4月には、間接的なライバルであり、大ヒットしていたRAV4CR-Vに対抗すべく、「SR20DE型(直列4気筒DOHC・1998cc)」を搭載した「フォルザ」を新設定。前後オーバーハングを延長して専用バンパーを備え、オーバーフェンダーを装着、丸型4灯式ヘッドランプや専用ラジエターグリルでスポーティに仕上げたモデルで、全幅が1700mmを超えたため3ナンバー登録となりました。4WDシステムはftシリーズと同様にATTESAを搭載し、トランスミッションは4速ATのみ。

1990年代末になると日産は経営危機に陥り、ルノー傘下となることが決定。「日産リバイバルプラン」のもとに大規模な車種整理が実施され、ラシーンも2000年7月に生産終了となりました。
ラシーンの直接的な後継車は作られませんでしたが、RAV4CR-Vと同車格となるエクストレイル(初代T30型)を2000年に発売。好調な販売を見せ、2001年から2010年までの間、SUVトップシェアを誇りました。

パイクカーの経験を生かして作られた新感覚SUVラシーンは、優れたデザイン性を持つ唯一無二のクルマとして成功を収めました。
明確なコンセプト設定と、独自性が高く新鮮でシンプルなデザインのおかげか、その後も中古車市場では人気モデルであり続け、生産終了から20年以上が経った今でも、数多くの中古車が出回っており、記憶に残る日産車の一つと言えるでしょう。

 

 

 

【諸元】

 

 

日産・ラシーン(NB14型)

全長×全幅×全高 3980mm×1695mm×1450mm(タイプⅠ B仕様/タイプⅠ)
3980mm×1695mm×1515mm(タイプF)
4115mm×1695mm×1515mm
4210mm×1695mm×1515mm(タイプⅢ)
4150mm×1720mm×1515mm(フォルザ)
ホイールベース 2430mm
乗車定員 5名
エンジン GA15DE型 直列4気筒DOHC 1497cc(105ps/6000rpm)
SR18DE型 直列4気筒DOHC 1838cc(125ps/6000rpm)(ftシリーズ)
SR20DE型 直列4気筒DOHC 1998cc(145ps/6400rpm)(フォルザ)
駆動方式 4WD
トランスミッション 4AT/5MT
タイヤサイズ 185/65R14
195/55R15(フォルザ)