【トヨタ】トヨペット・コロナ/コロナライン(初代T10型)

のちに熾烈な「BC戦争」を繰り広げることになるコロナ。その登場も、B=ブルーバードの先祖であるダットサン乗用車(110型)に対抗するためでした。

クラウンの成功とは裏腹に、急遽開発されたコロナの前に続く道は険しいものでした。

 
 
 
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トヨペット・コロナ/コロナライン(初代T10型)の歴史】

 

 

 

1955年に初の本格的な国産乗用車として発売されたクラウン(初代RS/S20/S30型)は、1.5Lクラスの中型タクシーをメインに販売は好調。

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当時、東京などの大都市では1.5Lクラスの中型タクシーが、地方都市では1.0Lクラスの小型タクシーが主流の時代で、小型タクシー市場は低価格で信頼性の高いダットサン乗用車(110型)の独断場。トヨタではこのダットサンに対抗する車種を急遽開発することになったのでした。
本格的な対抗モデルとしては、2代目T20型だったと言われており、初代T10型はそれまでの「つなぎ」として、1年弱の期間で開発されたもの。

クラウンのラダーフレームを切り詰め、前輪独立懸架の足回りも流用。エンジンはトヨエース(初代SKB型)に使われていた「S型(直列4気筒SV・995cc)」で、既に乗用車では時代遅れとなっていたサイドバルブ式。
ボディ中央部はマスター(RR型)の前後をカットしたもので、ドアもマスターのものでした。ボディスタイルは全体的に丸みを帯びており「ダルマ」と揶揄されました。

画期的だったことは、開発を担当した関東自動車工業(現在のトヨタ自動車東日本)が、かねてから独自に研究していたモノコック構造を採用したことであり、トヨタの量産乗用車としては初の採用でした。

1957年7月、4ドアセダンのコロナと、2ドアバンのコロナラインの2モデルで発売。トヨタの新型車発売に、デビュー当初は順調に販売を伸ばしましたが、クラウンの足回りを流用したことによる良好な乗り心地と、ダットサンに比べて低価格だったこと以外には、ダットサンに勝る点は見当たりませんでした。
3ヶ月後の10月には、日産は新たにOHVエンジンを搭載した「ダットサン1000(210型)」を発売。コロナにとっては大打撃となり、販売成績はダットサンの圧勝でした。

1958年4月には早速マイナーチェンジ。車体側面へのメッキモール追加や、ボンネット先端のエンブレムの変更、ドアハンドルのデザイン変更などが実施され、外観の豪華さを高めますが、売上を回復するまでのことはありませんでした。

一方の日産は、1959年7月にダットサン1000の後継となるブルーバード(初代310型)を発売。

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これでいよいよ「BC戦争」の火蓋が切って落とされましたが、ダットサンの新型車にコロナが太刀打ちできるはずもなく、コロナにとってさらに厳しい形勢となりました。

コロナは1959年10月に2度目のマイナーチェンジを実施してブルーバードに対抗。懸案だったサイドバルブのエンジンは「P型(直列4気筒OHV・997cc)」に変更され、33psだった出力も45psにまでパワーアップ。最高速度は100km/hの大台に乗りました。
後席寸法の拡大により乗車定員は4人から5人となり、より実用的に。フロントグリルのデザインも変更し、豪華さをアピールしました。

デビュー当初でさえ「ダルマ」と揶揄された古いボディデザインでは、いくらエンジンパワーで上回ってもブルーバードに対抗できるほどの魅力はなく、フルモデルチェンジで生まれ変わる他に手はありませんでした。そこで1960年4月に2代目T20型へとバトンタッチし、初代モデルは「つなぎ」の役目を終えました。

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トヨタが総力を挙げた2代目でも、ブルーバードの販売台数は揺るがず、初めてコロナがブルーバードを追い抜くのは、3代目T40/50型となった1965年のことになります。

かつて1990年代頃までは、クラウン、マークⅡ、コロナ、カローラという中心的なセダンラインナップの中で、ファミリーカーと呼ばれ、自家用車としても一般的だったコロナ。コンフォート(S10型)が登場する前までは、小型タクシー市場でも多く用いられました。
スタートから躓いてしまったコロナでしたが、その失敗と苦悩が、後にBC戦争を繰り広げる程の競争力に繋がったのではないでしょうか。

 

 

 

 

【諸元】

 

 

トヨペット・コロナ/コロナライン(初代T10型)

全長×全幅×全高 3912mm×1470mm×1555mm(コロナ)
3970mm×1475mm×1575mm(コロナライン)
ホイールベース 2400mm
乗車定員 4/5名
エンジン S型 直列4気筒SV 995cc(33ps/4500rpm)
P型 直列4気筒OHV 997cc(45ps/5000rpm)
駆動方式 FR
トランスミッション 3MT
タイヤサイズ 5.60-14 4P