【いすゞ】ミュー(初代UCS17/55/69型)/ミューウィザード(UCS69型)

RVブームに沸いた1980年代後半、ビッグホーンの成功によりRVに力を注ぎ始めたいすゞは、カジュアルでスタイリッシュな新モデルとしてミューを開発。

後にロングモデルも追加しますが、当初は3ナンバーサイズなのに2シーターという、存在感溢れるパッケージングが話題となりました。

 

 

 


いすゞ・ミュー(UCS17/55/69型)/ミューウィザード(UCS69型)の歴史】

 

 

1980年代後半のいすゞの乗用車は、ファミリーセダンのアスカ(初代JJ110/120/510型)、小型車のジェミニ(2代目JT150/190/600型)、スペシャリティカーのピアッツァ(初代JR120/130型)、そしてRVのビッグホーン(UBS12/13/17/52/55型)というラインナップ。
そんな中、クルマの多様化に伴い、市場は空前のRVブーム。ピックアップトラックをベースにしていた当時のRV車はいすゞの得意分野であることもあり、いすゞはRVに力を注ぐようになりました。

ピックアップトラックのロデオ/ファスター(TF型)のラダーフレームを切り詰めて採用。サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン式、リアは半楕円リーフスプリング式とし、ロデオ/ファスターやビッグホーン(初代UBS12/13/17/52/55型)と共通の構成としました。
エンジンは、1988年からビッグホーンにも搭載されていた、120psの「4ZE1型(直列4気筒SOHC・2559cc)」を採用。トランスミッションは5速MTのみが設定されました。

特徴的だったのはスタイリングで、Bピラー以降の大胆なカット。その開放部のバリエーションは、折り畳み可能な幌を持つ「ソフトトップ」と、FRP製のトノカバーを持つ「ハードカバー」の2種類でデビュー。ソフトトップは、貨物登録の1ナンバーとなり、乗車定員は2名もしくは4名。ハードカバーは、乗用登録の3ナンバーとなり、乗車定員は2名でした。

ボディサイズは全長4135mm×全幅1780mm×全高1695mm。迫力のあるブリスターフェンダーによって3ナンバー幅を誇りつつ、全長は短く収めたショートスタイルで、当時としては珍しいもので、その寸詰まりなフォルムから「実車チョロQ」とも言われました。
1989年4月にデビューした当初は、3ナンバー車なのに2人乗りという、「無駄」とも言えるパッケージングに否定的な評価も少なくありませんでした。

1990年8月には、荷室部分にスチール製のハードトップを付けた4人乗りの「メタルトップ」を追加しました。
また、当時のRVブームの中心だったディーゼルエンジンも追加され、110psの「4JB1-T型(直列4気筒SOHCディーゼルターボ・2771cc)」が搭載されました。

1991年9月のマイナーチェンジでは、フロントグリルなどのデザインを一部変更。ディーゼル車に限り、4速AT車がようやく設定されました。

1992年10月にもマイナーチェンジを実施し、フロントマスクの意匠変更やボディカラーの新設定、安全性強化を実施しており、同時にソフトトップが廃止されました。

1993年10月には、ガソリンエンジンは廃止され、残るディーゼルエンジンは「4JG2-T型(直列4気筒SOHCディーゼルターボ・3059cc)」に換装されました。タイヤは16インチにインチアップし、4輪Vディスクブレーキを採用するなど、動力性能を向上。ステッキ式だったパーキングブレーキはフロア式に変更されました。
また、RVブームの中で自社製RV車を持っていなかったホンダに対してOEM供給を開始し、ホンダ・ジャズとして1996年12月まで販売されました。

 
 
 
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1995年12月、内装デザインの変更と、安全装備の強化を実施。走行中に2WDと4WDの切替が可能なシフトオンザフライシステムを採用しました。
また、4ドアのロングボディを持つ「ミュー・ウィザード」を発売。北米では1991年から「ロデオ」としてロング版ミューが発売されていましたが、国内ではビッグホーンとの自社競合を避けるために販売されていませんでした。しかし、ビッグホーンが1991年のモデルチェンジで上級化したことで、ミューとの間にギャップが生まれ、中間車種をデビューさせることが急がれたのです。
北米向けとの最大の相違はエンジンで、V6ガソリンエンジンからディーゼルエンジンに変更されました。当時の国内RV市場での人気は、5ドア、ディーゼル、オートマチックが三種の神器とされており、これに沿う形で4JG2型のディーゼルターボが搭載されました。

1998年6月、2代目UES25/73型にフルモデルチェンジ。ミュー・ウィザードも同時にモデルチェンジしましたが、ミューの名は外れ、単に「ウィザード」を名乗るようになります。その後、いすゞが乗用車市場から完全撤退する2002年まで生産されました。

デビュー当初のミューは、日本のRV市場に大きなインパクトを与えました。実用性の乏しさから、賛否両論を招きましたが、1990年代のRVの多様化には大きな風を吹かせたモデルとも言えます。
また、いすゞは1993年に小型乗用車市場から撤退してSUVに専念しており、ビッグホーンと共にその時代を支えた大きなモデルでもありました。

 

 

 

 

【諸元】

 

 

いすゞ・ミュー(UCS17/55/69型)

全長×全幅×全高 4135mm×1780mm×1695mm(~1993.10)
4135mm×1780mm×1670mm(1993.10~1995.12)
4165mm×1780mm×1670mm(1995.12~)
ホイールベース 2330mm
乗車定員 2/4名
エンジン 4ZE1型 直列4気筒SOHC 2559cc(120ps/5000rpm)(~1993.10)
4JB1-T型 直列4気筒SOHCディーゼルターボ 2771cc(110ps/3600rpm)(~1993.10)
4JG2-T型 直列4気筒SOHCディーゼルターボ 3059cc(120ps/3600rpm)(1993.10~)
駆動方式 4WD
トランスミッション 4AT/5MT
タイヤサイズ 10.5R15-6
245/70R16

 

いすゞ・ミュー(UCS69型)

全長×全幅×全高 4585mm×1765mm×1750mm
ホイールベース 2760mm
乗車定員 5名
エンジン 4JG2-T型 直列4気筒SOHCディーゼルターボ 3059cc(120ps/3600rpm)
駆動方式 4WD
トランスミッション 4AT/5MT
タイヤサイズ 245/70R16