【マツダ】ルーチェ(初代SUA/SVA/M13P/SUAV型)

ジウジアーロによる美しいスタイリングを持ってデビューしたルーチェは、いわゆる「ハイオーナーカー」の元祖。そしてルーチェロータリークーペは、ルーチェとの血縁関係はほぼなく、専用設計された生粋のスペシャリティクーペ。

マツダのフラッグシップとして昭和の時代を支えたルーチェのそんな誕生を振り返ります。

 
 
 
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【ルーチェ(初代SUA/SVA/M13P/SUAV型)の歴史】

 

 

 

1960年にR360クーペ(KR型)で四輪乗用車市場へ進出したマツダ。1962年にキャロル(初代KPDA型)を発売すると大ヒットを記録し、1963年発売のファミリア(初代SS/SP/MP/MS/BS/BP型)も好調。バンからスタートしたファミリアは、4ドアセダン、2ドアセダン、クーペ、トラックと着実にバリエーションを充実させていきました。

次に計画されたのは、当然ながらファミリアよりも上級なクルマ。1963年と1965年のモーターショーには、ファミリアをベースとした上級セダンをプロトタイプとして展示。デザインは当時ベルトーネ所属のジョルジェット・ジウジアーロで、既に「ルーチェ」と名付けられていました。このプロトタイプは、マツダ社内で大幅にリデザインされた後、1966年8月に市販されました。

プロトタイプ譲りの美しいスタイリングは、直線を基調としながらもしなやかなボディラインを持ち、細いピラーや流麗なボンネットフードなど、ヨーロピアンな印象。
全長4370mm×全幅1630mm×全高1410mmのサイズは、当時のトヨタで言えば、クラウン(2代目S40型)とコロナ(3代目T40型)のちょうど中間に位置するもの。後に登場することになるトヨタ・コロナマークⅡ(初代T60型)や日産・ローレル(初代C30型)など、いわゆる「ハイオーナーカー」の先駆けだったと言えます。

新設計されたエンジンは「UB型(直列4気筒SOHC・1490cc)」で78psを発揮。トランスミッションはコラム式の4速MTの他にスーパードライブと呼ぶATも用意。プロトタイプではFFとしていた駆動方式はFRとなり、最高速度は150km/hを達成しました。水平基調のインパネが特徴的で、前席はベンチシートで6人乗りが特徴。

SUA型4ドアセダンのみでデビューし、「スタンダード」と「デラックス」の2グレードを用意。デラックスには、リアシートのセンターアームレスト、時計、自動アンテナ付きのカーラジオ、ヒーター、昼夜切替式ルームミラー、マップランプ、パネルライトコントロールなどを装備しました。

1967年6月には、スポーティな4ドアセダン「SS」を追加しました。エンジンはツインキャブ仕様の86psで最高速度は160km/h、フロントにはディスクブレーキを標準装備しました。フロアシフトのため前席はセパレートシートとなり5人乗り。

また、海外向けに生産されていた5ドアステーションワゴンをバン仕様とした、5ドアバンを追加しました。6人乗り時は300kg積、3人乗り時は500kg積が可能で、セダン同様のUB型のシングルキャブ仕様が搭載されました。

そして10月、コスモスポーツ(L10型)、ファミリアロータリー(2代目M10A型)に次ぐロータリー第3弾として、M13P型ルーチェロータリークーペがデビューしました。ルーチェと名乗ってはいながら、実はルーチェとの共通点はほぼ無い専用設計のニューモデル。スタイリングはルーチェと同様のベルトーネによるもので、デザインは確かにルーチェでした。
ボディサイズはセダンより大きく低くなり、ホイールベースはセダンより80mmも長く設定。エンジンは新開発の「13A型(2ローター・655cc×2)」を搭載して126psを発揮し、4速MTと組み合わせて190km/hの最高速度を誇りました。駆動方式はFFを採用しており、ルーチェとは異なるモデルだということがよく分かります。
「デラックス」(145万円)と「スーパーデラックス」(175万円)の2種類が発売されましたが、1968年に追加された高級2ドア車である、クラウンハードトップ(3代目S50型)で120万円前後でしたので、ルーチェロータリークーペは非常に高価なクルマでした。

 
 
 
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1968年9月にはセダンのマイナーチェンジを実施し、シートベルトやハザードランプを装備して法改正に対応したほか、SSには当時の流行だったレザートップ仕様が標準装備されました。

12月になると、「VB型(直列4気筒SOHC・1796cc)」を搭載したSVA型「ルーチェ1800」を追加しました。100psを発揮し、最高速度165km/hを誇りました。外観上の違いは、ボンネットフードに大きなエアスクープがあったこと。
この時から、1.5Lの標準仕様は「ルーチェ1500」と呼ばれることになりました。その後1971年3月には、1.5L車は廃止されて1.8Lに一本化されました。

1972年9月、ロータリークーペが生産終了。ライバル他車を凌駕する動力性能の評価は高かったものの、FFレイアウトの欠点である操縦性については酷評で、相当な「じゃじゃ馬」とされました。特にスーパーデラックスにはマツダ初のパワーステアリングが装備されていましたが、路面の感覚を捉えられないもので、直進するにもコツが必要だったと言われます。さらには先述のとおり価格面でも顧客を捉えることができず、わずか976台が生産されたに過ぎませんでした。

そしてセダンも1972年11月にはフルモデルチェンジとなり、2代目LA2/3型へ移行。2ドアモデルもラインナップされ、事実上ロータリークーペの後継とされました。以降、大型化を繰り返しながらモデルチェンジを重ねたルーチェは、最終モデルの5代目HC型ではクラウンやセドリック/グロリアに匹敵する高級セダンにまで成長。フラッグシップモデルとして1991年まで(営業車向けは1995年まで)マツダを支えました。

 
 
 
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欧州にも輸出されたルーチェは、そのヨーロピアンなスタイリングの美しさから非常に好評でした。一方国内市場では、そもそものマツダの顧客層にはあまりマッチしなかったことや、車格に対する1.5Lエンジンの非力さなども影響して、販売は伸び悩みました。
しかし、マークⅡやローレルより2年も早くハイオーナーカーの車格を創出していたことや、意欲的なハイオーナースポーツとしてロータリークーペを生んだことなど、国産車の歴史を語る上では忘れてはいけないモデルなのです。

 

 

 

 

【諸元】

 

 

マツダ・ルーチェ(初代SUA/SVA/M13P/SUAV型)

全長×全幅×全高 4370mm×1630mm×1410mm(セダン)
4585mm×1635mm×1385mm(ロータリークーペ)
ホイールベース 2500mm(セダン/バン)
2580mm(ロータリークーペ)
乗車定員 5/6名
エンジン UB型 直列4気筒SOHC 1490cc(78ps/5500rpm)
UB型 直列4気筒SOHC 1490cc(86ps/5500rpm)(セダンSS)
VB直列4気筒SOHC 1796cc(100ps/5500rpm)
13A型 2ローター 655cc×2(126ps/6000rpm)(ロータリークーペ)
駆動方式 FF(ロータリークーペ)/FR
トランスミッション 3AT/4MT
タイヤサイズ 6.45-14 4P(セダン)
165HR15(ロータリークーペ)