【日産】エルグランド(初代E50型)

2000年代以降、国内市場はミニバンブームに沸き、なかでもLLサイズと呼ばれる大型高級ミニバンが人気を集めています。

その高級ミニバンの元祖ともいえるのが日産・エルグランド。それまでの1BOX車とは一線を画す、広い室内空間や快適さを持ち、日本のミニバン市場に大きな影響を与えたモデルです。

 

 

【エルグランド(初代E50型)の歴史】

 

 

 

エルグランドの登場以前、日産のミニバンラインナップと言うと、Lサイズの1BOX車であるキャラバン/ホーミー、商用専売となったバネットから派生し独立していたMサイズミニバンのラルゴとセレナ、ロールーフミニバンの草分けであるプレーリー、大まかにこの3車種でした。

他メーカーでも、それまでの1BOX車から、安全基準の見直しのため小さなボンネットを持つ、現在でも主流であるセミキャブオーバータイプのミニバンに移行していた時期でした。
1996年、トヨタはグランビアを発売。欧州向けハイエースをベースとする3ナンバー専用ボディで、広い室内を持つ、当時のトヨタの最上級ミニバンでしたが、ハイエースとの共用部品も多いことなどから、内装は高級感がなくチープで、それまでの1BOX車と変わらず商用車の雰囲気を残しており、その後に発売される兄弟車(グランドハイエースハイエースレジアス、ツーリングハイエース)と共に、販売面では苦戦を強いられていました。

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1997年5月、日産はキャラバン/ホーミーの派生車種で、乗用専用として開発したミニバンとして「キャラバンエルグランド」「ホーミーエルグランド」を発売。短いボンネットを持つセミキャブオーバー型で、FRレイアウトを採用。全長4740mm×全幅1775mm×全高1940/1945mmの大きなボディサイズで、ホイールベースも2900mmと大きく取ったことも功を奏し、それまでの前席下にエンジンを置く1BOX車では叶わなかった、低床化を実現し、さらに前後席のウォークスルーも可能になりました。また、後席スライドドアは左側のみの4ドアで、7人乗と8人乗のバリエーションでした。

エンジンは170psを発揮する「VG33E型(V型6気筒SOHC・3274cc)」と、150psの「QD32ETi型(直列4気筒OHVディーゼルターボ・3153cc)」の2種類。搭載されたトランスミッションは全車4ATでした。
当初のグレードは、7人乗の高級仕様である「X」、8人乗の「V」、廉価グレードの「J」の3種で、装備には差があるものの、デュアルSRSエアバッグやABSなどの安全装備は、全車標準装備とされました。

 
 
 
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1998年1月、ラルゴやセレナでも人気グレードだった「ハイウェイスター」を追加。Vをベースに、エアロパーツや専用グリル、専用シートを装備しました。エアロパーツの装着により、全長や全幅が拡大されています。

一方5月には、高規格救急車であるパラメディックがフルモデルチェンジとなり、エルグランドがベースとなりました。先代モデルでは、アトラス20がベースとなったパラメディックと、キャラバンをベースとするパラメディックⅡが併売されていましたが、エルグランドがベースになったことで、これを統合。エルグランドのフロントに、Bピラー以降はキャラバンのリアを210mm拡幅したボディで、2017年末まで約20年間生産されました。

同年10月、X、V、ハイウェイスターに「ラウンジパッケージ」を設定。前席が回転して後席と対座できて、2列目が横向きに回転させることができました。シートバックテーブルや電動カーテンなども装備。また、Xにも8人乗仕様が追加されました。

1999年8月には初めてのマイナーチェンジを受け、ディーゼル車のエンジンを「ZD30DDTi型(直列4気筒DOHCディーゼルターボ・2953cc)」に変更。この時に、車名が「エルグランド」に統一され、キャラバンとホーミーの名は消滅。

12月、特別仕様車スペシャルエディション」を期間限定で発売。Vをベースに、本革コンビシートやステアリング、スーパーサウンドシステムやCDチェンジャーを装備し、専用のボディカラーも設定されました。
2000年4月、期間限定のスペシャルエディションとほぼ同様の装備内容とした、特別仕様車「プライムエディション」を発売。

同月、パラメディックをベースとした「ジャンボタクシー」を発売。10人乗で、ガソリン/ディーゼル共に設定されました。

8月には、2回目のマイナーチェンジを実施し、ガソリン車のエンジンを変更しました。90年代から日産のV6エンジンの主力となっている「VQ35DE型(V型6気筒DOHC・3498cc)」を搭載。また、足回りにも改良が加わり、安定性や乗り心地がアップ。フロントマスクも変更され、以前より増して高級感が高まりました。グレード体系は廉価グレードであるJを廃止し、最上級グレードとして「X-リミテッド」を発売。2列目シートに中折れ機構を持つコンフォータブルキャプテンシートを持ち、本革コンビシートや木目コンビステアリングなども装備しました。

12月、ハイウェイスター用のエアロパーツをVに装備した「リミテッドエディション」を期間限定で発売。本革巻ステアリングやプライバシーガラス、専用シートも装備しました。

2001年5月には、特別仕様車として「Sエディション」を発売しました。エアロパーツ、本革巻ステアリング、プライバシーガラス、専用シートを採用。この時、キャプテンシート仕様の7人乗のハイウェイスターも新設しました。
さらに、期間限定車として「コールマンバージョン」を発売。アウトドアで人気のあるメーカー「コールマン」社とタッグを組み、Vのラウンジパッケージ仕様車に、寒冷地仕様を追加し、100V電源コンセント、ラゲッジスポットランプ、専用シート、3列目シートのバックネット、バックドア連動リモコンシステムなどを装備しました。

8月、国内販売20万台を記念した「メモリアルセレクション」を発売。Vをベースに、プライバシーガラスや電動格納式メッキドアミラー、メッキドアハンドルなどを装備。
また、Vのラウンジパッケージ仕様車に、寒冷地仕様を追加し、100V電源コンセント、専用シートなどを装備した期間限定車「バージョンS」を発売。これは「サロモン&テーラーメイド」社との開発モデルでした。

2002年5月、2代目へフルモデルチェンジとなり生産終了。2代目でもFRレイアウトを引き続き採用するものの、より乗用車らしくなり、運動性能も向上しています。このモデルチェンジに合わせてトヨタが投入したアルファードと、販売戦争を繰り広げることになります。

多人数乗車ながら、乗用車として開発されたエルグランドは、その快適性や豪華さなど、国産車にはそれまでなかったコンセプトが好評となり、大柄で高価な車種ながら大ヒットを記録しました。
これをきっかけにアルファードが登場するなど、それ以降の日本のミニバン文化を大きく変えた1台と言っていいでしょう。

 

【諸元】

 

 

 

日産・エルグランド(初代E50型)

全長×全幅×全高 4740mm×1775mm×1940/1945mm
ホイールベース 2900mm
乗車定員 7/8/10名
エンジン QD32ETi型 直列4気筒OHV ディーゼルICターボ 3153cc(150ps/3600rpm)
ZD30DDTi型 直列4気筒DOHC ディーゼルICターボ 2953cc(170ps/3600rpm)
VG33E型 V型6気筒SOHC 3274cc(170ps/4800rpm)
VQ35DE型 V型6気筒DOHC 3498cc(240ps/6000rpm)
駆動方式 FR/4WD
トランスミッション 4AT
タイヤサイズ 215/65R15