【トヨタ】シエンタ(初代XP80型)

コンパクトサイズのミニバンとして、トヨタが2003年に発売したシエンタは、国内の道路事情に合ったサイズが受け入れられ、人気となりました。

一度製造中止もありながら、12年に渡るロングセラーモデルとなりました。

 

 

 


トヨタシエンタ(初代XP80型)の歴史】

 

 

1990年代、多人数乗車が出来る3列シート車の主流は、それまでの商用バンをベースにしていた1BOXワゴンタイプから、乗用車専用に開発されたいわゆるミニバンへと変化していきました。

日産・エルグランド(初代E50型)が大ヒットし、強力なライバルとしてアルファード(初代AH10型)がデビューするハイルーフ3ナンバーミニバン、ミニバンブームの火付け役となったホンダ・オデッセイ(初代RA1-5型)に代表されるロールーフ3ナンバーミニバン、ホンダ・ステップワゴン(初代RF1/2型)や日産・セレナ(2代目C24型)が販売競争を繰り広げたハイルーフ5ナンバーミニバン、トヨタイプサム(初代XM10型)が開拓したロールーフ5ナンバーミニバンなどが主なクラス分け。
これらのミニバンは、狭い路地の多い都市部のユーザーや、平日は子供の送り迎えに使用する女性ユーザーにとっては、取り回しがしづらい面があり、さらに小型の3列シートミニバンが要望されるようになりました。

最も小型なサイズでは、軽1BOXを小型乗用車枠まで拡大したモデルがいくつか存在しており、1998年まではスバル・ドミンゴ(2代目FA型)、それ以降はスズキ・エブリィ+(DA32型)、三菱・タウンボックスワイド(U60型)、ダイハツ・アトレー7(S220/230型)などで、アトレー7はトヨタにスパーキー(S220型)としてOEM供給されていました。
しかしこれらは、軽商用車がベースであることから、居住性や運転性能などは悪く、ファミリーカーとして使用するには無理がありました。

先行したのはホンダで、フィット(初代GD1-4型)をベースに、全長4m程度の中で7人乗りを実現したモビリオ(GB1/2型)を2001年12月に発売。ショートノーズ化と低床化によって室内空間を確保し、特に女性ユーザーからの支持を得て好調な販売を見せていました。

一方の日産は、既存のキューブ(2代目Z11型)のホイールベースと全長を170mm延長し、3列シート7人乗りを実現したキューブキュービック(Z11型)を2003年9月に発売。既存車種のストレッチ版であることから、3列目の居住性は実用には乏しく、大人が長時間乗車するには無理のあるパッケージングでした。

トヨタが開発したシエンタは、ファンカーゴ(XP20型)用のNBCプラットフォームをフロントに、カローラスパシオ(2代目E120型)用のMCプラットフォームをリアに使用し、多人数乗車時のリアにかかる負荷を考慮。
サスペンションは、フロントはストラット式、リアはトーションビーム式で、4WD車の場合にはリアがカローラシリーズと同じくダブルウィッシュボーン式となりました。

4WDシステムは、Vフレックスフルタイム4WDが採用されており、通常走行時にはフロントに100%の駆動力が配分されるのに対し、コーナーリング時やスリップ時には50:50まで自動で駆動力配分を変化させるもの。

エンジンは「1NZ-FE型(直列4気筒DOHC・1497cc)」1種類のみで、FF車が110ps、4WD車が105psの最高出力を発揮。
トランスミッションは、FF車がCVT、4WD車は4速ATを採用しました。

全長4100mm×全幅1695mm×全高1670/1680mmのボディサイズで、全高を除いて先行していたモビリオとほぼ同等。女性ユーザーをターゲットに、丸型ヘッドライトを用いた可愛らしいデザインを採用しました。後席の乗降性に考慮し、両側スライドドアを採用したのは、モビリオと共通でした。

3列目シートはヘッドレストを付けたままの状態で、2列目シートの下に格納が可能で、ラゲッジスペースを最大限有効活用できる設計。シートの格納には、女性ユーザーでも簡単に出来るように、特に大きな力を必要とせずに片手で行えるように考慮されています。

2003年9月に発売開始し、通常グレードの「X」と装備を充実させた「G」をラインナップ。XのFF車には廉価版の「Eパッケージ」も用意しました。
シエンタの発売に伴い、スパーキーは販売を終了。

2004年12月には特別仕様車「Xリミテッド」「Xリミテッド ナビパッケージ」を発売。Xをベースに、助手席側パワースライドドアを設定し、ディスチャージヘッドランプや専用ファブリックシート、メッキアウタードアハンドルなどを装備しました。

 
 
 
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2006年5月にマイナーチェンジを受け、フロントマスクやリアコンビネーションランプに意匠変更を加え、ドアミラーウインカーを全車に標準装備。
Xに専用エアロパーツを装着した「Sエディション」も新たに設定しました。
また、ネッツ店での販売を終了してカローラ店専売車種となりました。

2007年6月には新たな「Xリミテッド」を特別仕様車として発売。挟みこみ防止機能付きのパワースライドドアを助手席側に採用し、上級グレードで採用のオプティトロンメーターも装備しました。

2010年10月、2008年から発売されていたパッソセッテ(M500/510型)に後を譲る形で販売終了。
パッソセッテは、ダイハツ・ブーンルミナス(M500/510型)のOEM車種で、全高が低く、スライドドアを採用しない点などに違いがありましたが、シエンタはデビューから既に7年が経過した2010年に、販売を終えた形となりました。

しかし、ライバルとなるホンダ・フリード(初代GB3/4/GP3型)と比較すると、2,3列目の居住空間やシートアレンジの豊富さ、スライドドアの有無など、パッソセッテが明らかに劣っており、販売面では大きく苦戦を強いられました。
そこで2011年5月、マイナーチェンジを経たシエンタを販売再開。専用フロントデザインなどを採用した「DICE」も新設定しました。

 
 
 
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2012年4月には、DICEをベースに、助手席側パワースライドドアや、オートエアコン、アームレストなどを装備した特別仕様車「DICEリミテッド」を発売。

2013年9月、VSCとTRCをFF車に標準装備したほか、プロジェクターヘッドランプを全車に拡大設定。また、助手席側パワースライドドア、赤外線カットガラス、オートエアコン、プラズマクラスター、アームレスト、本革巻きシフトノブ、ピアノブラック調のインパネ加飾などを施した「DICE-G」を追加設定しました。

2014年9月に4WD車の販売を先行終了した後、2015年7月に2代目XP170型にフルモデルチェンジ。ワンフォルムにも見えるサイドシルエットや、バンパープロテクターが特徴的な洗練されたデザインを採用し、ハイブリッド車を主力とした新たなコンパクトミニバンとして生まれ変わりました。

2003年のデビュー時には、決して売れ筋クラスではなかったコンパクトミニバンでしたが、その後市場は拡大し、2010年代後半以降は人気クラスの1つとなりました。
2,3列目のパッケージングや居住性に力を入れたトヨタとホンダが、その後クラストップを争っていることを見れば、当時の力の入れ具合が伺えます。

 

 

 

 

【諸元】

 

 

 

トヨタシエンタ(初代XP80型)

全長×全幅×全高 4100mm×1695mm×1670/1680mm
4120mm×1695mm×1670/1680mm(DICE)
ホイールベース 2700mm
乗車定員 7名
エンジン 1NZ-FE型 直列4気筒DOHC 1496cc(110ps/6000rpm)(FF車)
1NZ-FE型 直列4気筒DOHC 1496cc(105ps/6000rpm)(4WD車)
駆動方式 FF/4WD
トランスミッション CVT/4AT
タイヤサイズ 175/70R14