【日産】マーチ(初代K10型)

1982年にデビューしたマーチは、エントリークラスのコンパクトハッチバックとして、日産を代表するモデルに成長しました。

ターボやスーパーターボなど、ホットハッチブームの代表格として人気だった、初代マーチのロングライフを振り返ります。

 

 

 


【マーチ(初代K10型)の歴史】

 

 

日本のコンパクトハッチバックの歴史の始まりは、1977年のダイハツシャレード(初代G10型)。

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1.0Lエンジンを横置きしたFF車で、「リッターカー」という言葉を生み出したほど人気を博しました。1978年にハッチバックスタイルに生まれ変わったトヨタスターレット(2代目P60型)は、依然FRレイアウトのままでしたが、その堅牢さと走りの良さが売り。1981年にはホンダ・シティ(初代AA/VF型)がデビューし、そのおもちゃのようなスタイルで爆発的な人気となり、コンパクトハッチバックの一大ブームが巻き起こりつつありました。

出遅れていた日産は、1981年の東京モーターショーにコンセプトカー「NX-018」を参考出品。1.0Lエンジンを搭載したコンパクトハッチバックで、ほぼ市販版マーチそのもの。すぐにデビューするものと思われましたが、日産は大規模なキャンペーンを打ち、車名を一般公募。500万を越える応募総数の中から選ばれたのが「マーチ」でした。

エンジンは新開発された「MA10S型(直列4気筒SOHC・987cc)」。小型・軽量・高性能を目指して69kgまで軽量化され、日産初のアルミ製シリンダーブロックを採用し、電子制御キャブレター仕様で57ps。

Cd値0.39の空力性能を実現した、ボクシーなハッチバックスタイルは、基本デザインはイタリアのジョルジェット・ジウジアーロで、その後社内で調整が行われたもの。高張力鋼板を採用するなど、ボディも徹底的な軽量化が図られました。サイズは全長3785mm×全幅1560mm×全高1395mmで、当初は3ドアのみ。

1982年10月にデビュー。ベースグレードの「E」、量販グレードの「L」、装備を充実させた「S」、スポーティさも持たせたトップグレードの「G」の、4グレードで販売開始。
半年後の1983年4月には、ファッショナブルな上級グレード「コレット」を追加しました。

1983年9月には5ドアハッチバック車「FC」「FT」を追加。開口部を大きく取った後席ドアを備え、ファミリーユースとしての実用性を高めました。
3ドアには、タコメーターやガラスサンルーフなども備えた、スポーティな「G-1」を新設定。
1984年2月には5ドアハッチバックの上級グレードとして「FV」を追加しました。

1985年2月にはマイナーチェンジが実施され、左右非対称のフロントグリルを採用し、リアコンビネーションランプのデザインも変更。
同時に、3ドアハッチバックに「ターボ」を追加しました。「MA10ET型(直列4気筒SOHCターボ・987cc)」を搭載し、85psを発揮。NA車は電子制御キャブレターだったのに対し、電子制御インジェクションを採用し、足回りのリチューンやマフラーはデュアル化されるなど、出力に見合った性能を奢り、外装でも専用エアロパーツやフォグランプなどが装備されました。専用メーターパネルのスピードメーターにはデジタル式を採用し、ブースト計も装着。バケットシートやガングリップシフトノブを装備するなど、スポーティなイメージを強調しました。

1986年9月には、女性向けのファッショナブル仕様車「パンプス」を追加。ホワイトで統一された外観に、好みに合わせて選択できるカラフルなシート表皮の設定が特徴。4速MT車には坂道発進時のアシスト機能「スロープストッパー」も装備されました。

1987年8月には2度目のマイナーチェンジを実施し、3ドア車にキャンバストップ仕様を追加。G-1はこの時廃止されました。

1989年1月のマイナーチェンジでは、初代マーチの代名詞ともいえる「スーパーターボ」を追加しました。
搭載された「MA09ERT型(直列4気筒SOHCターボ+スーパーチャージャー・930cc)」は、1988年8月に発売された競技専用車「R」に搭載されたもので、110psを発揮。930ccにダウンサイジングされたのは、モータースポーツのクラス分けにおいて、過給係数を掛けても1.6Lクラスに収まるようにするため。全ての回転域で高性能を発揮することが目指され、低回転域ではスーパーチャージャーが、高回転域ではターボが効果を発揮して高出力を得ています。ターボ効率向上のための大型インタークーラーも装備し、そのサウンドも刺激的なもの。
当然ながら足回りなども専用チューンとなり、5速MT車にはLSDを装備、フロントブレーキは大径のVディスクを採用しました。タコメーターは1万rpmまで刻印され、別置きの3連メーターを装備、バケットシートや本革巻きステアリングなども採用され、装備面でもスポーティ。走りは相当なじゃじゃ馬で、そのポテンシャルを引き出すには、相応のテクニックも必要とされました。

1992年1月にフルモデルチェンジを受け、2代目K11型へバトンタッチ。9年3ヶ月という異例のロングライフを終えました。
2代目では、日欧両市場をターゲットに、実用性を重視して開発され、初代のようなスポーティモデルは姿を消しました。しかしその曲面を豊かに使った可愛らしいボディスタイルが人気となり、2代目も10年に渡って生産される人気車となりました。

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当初はライバル他車に対して出遅れたマーチでしたが、イージードライブ志向の強い女性ドライバーの台頭を鑑みたグレード展開と、一方では過給エンジンを搭載したスポーティ路線という、相反するテーマを実現したことで好調な販売を見せ、日産を代表する車種へと成長したのでした。

 

 

 

【諸元】

 

 

日産・マーチ(初代K10型)

全長×全幅×全高 3735/3785mm×1560mm×1395mm
3730/3735mm×1560/1570mm×1385/1390mm(ターボ)
3735mm×1590mm×1395mm(スーパーターボ
ホイールベース 2300mm
乗車定員 5名
エンジン MA10S型 直列4気筒SOHC 987cc(57ps/6000rpm)
MA10ET型 直列4気筒SOHCターボ 987cc(85ps/6000rpm)
MA09ERT型 直列4気筒SOHC ICターボ+スーパーチャージャー 930cc(110ps/6400rpm)
駆動方式 FF
トランスミッション 3AT/4MT/5MT
タイヤサイズ 5.95-12 4P
145SR12
165/70HR12
165/70R12
175/65R13