【スバル】インプレッサ(初代GC/GF型)

スバルのコンパクトクラスを担う車種として1992年に登場したインプレッサ。欧州Cセグメントを狙った世界戦略車として開発されました。

ファミリーセダンから高性能スポーツモデルまで、様々なバリエーションが用意され、特にスポーツモデルが人気を博しました。

 

 

 


【スバル・インプレッサ(初代GC/GF型)の歴史】

 

 

スバル・1000(A12型)で1966年に小型乗用車市場へ進出したスバルは、1971年にレオーネ(初代A20/60型)を発売。水平対向エンジンと4WDを最大の特徴として販売していましたが、どの独特な機構や、どこか垢ぬけないスタイリングなどが災いし、決して万人受けするクルマではありませんでした。

1980年代には、生産コストの高い体質や、北米市場での販売不振、ヒット車がなかったことなどにより、業績不振に陥ったスバルは、2.0Lクラスの新型車としてレガシィを1989年にリリース。高性能な新エンジンや、洗練されたデザインを武器に、特にステーションワゴンが大ヒットを記録し、スバルは息を吹き返しました。

レガシィは、レオーネ(3代目AA/AG/AL/AP型)よりも上級移行したため、エントリーハッチバックジャスティ(初代KA型)との間に生まれた空白を埋め、さらに欧州Cセグメント市場を狙った新たな世界戦略車として開発されたのが、インプレッサでした。

レガシィのプラットフォームをベースに、ホイールべ―スは60mm短縮。サスペンションはレガシィと共通で、ストラット式の4輪独立懸架としました。
4WDシステムは、MT車にはビスカスLSD付きのセンターデフ式が、AT車にはトルクスプリット式が採用され、4WDの他にFF車も準備されました。

ラインナップされたエンジンは、240psを発揮する「EJ20G型(水平対向4気筒DOHCターボ・1994cc)」、115psの「EJ18E型(水平対向4気筒SOHC・1820cc)」、100psの「EJ16E型(水平対向4気筒SOHC・1597cc)」、97psの「EJ15E型(水平対向4気筒SOHC・1493cc)」の4種類。
トランスミッションは、5速MTと4速AT。

ボディバリエーションは、4ドアセダンの他にスポーツワゴンを設定。スポーツワゴンは、5ドアハッチバックにコンパクトなラゲッジスペースを備え、ステーションワゴンとしての使い勝手を盛り込んだものでした。
セダンが全長4340mm×全幅1690mm×全高1405/1415mm、スポーツワゴンが全長4350mm×全幅1690mm×全高1405/1415/1440/1450mm。

1992年11月にデビュー。1.5L車はセダンのFFのみで「CF」「CS」「CX」を設定。1.6L車は、セダンが4WDのみで「CF」「CS」、スポーツワゴンはFFのみで「CS」「CX」。1.8L車はともに4WDのみで、セダンが「HX」「HXエディション-S」、スポーツワゴンが「HS」「HX」「HXエディション-S」「HXエアサス」。2.0L車はセダンの「WRXタイプRA」と「WRX」で5MTのみの設定。

WRXシリーズは、それまでレガシィRSで参戦していたWRC世界ラリー選手権)に、インプレッサで参戦することになったための、ホモロゲーションモデルの役割。リアスポイラーやサイド&リアスカート、大径フォグランプ、205/55R15タイヤ、軽量アルミホイール、本革巻きステアリング&シフトノブ、バケットシートなども装備しました。

1993年9月には、要望の多かったスポーツワゴンWRXを追加しました。セダンWRXと同じEG20G型ですが、ワゴンの重量に合わせてタービンの小型化を行い、トルク重視型となり、220ps仕様のものを搭載。
また、セダンWRXにも4速AT車を設定し、ワゴンと同じ220psエンジンが搭載されました。

 
 
 
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1994年1月、STIコンプリートカーの「WRX STIバージョン」を発売。専用チューニングされたエンジンは250psを発揮しただけでなく、全域でトルクをアップさせ、街乗りでの扱いやすさも向上させています。ストラットタワーバーや強化ブレーキ、大型リアスポイラー、大口径マフラーなどを装備。セダンとスポーツワゴンの両方が発売されました。
当初のSTI仕様は、型式認証を受けていなかったため、購入時には改造車として陸運局で公認登録を受ける必要がありました。

1994年10月には、セダンWRX系のエンジンを260psに出力アップし、AT車は廃止されました。WRX系のアルミホイールは、全車16インチにサイズアップ。
さらに、セダンに「WRX RA STIバージョン」を発売し、275psを発揮するエンジンを搭載。

1995年1月、輸出向けの2ドアクーペを「リトナ」として国内販売を開始しました。1.5LのFF車と、1.6Lの4WD車を設定し、5MTと4ATをラインナップ。5MTの4WDシステムはセレクティブ4WDが採用されました。

1995年8月には、WRX STIがバージョンⅡとなり、セダンには275ps仕様、スポーツワゴンにはセダンWRXと同様の260ps仕様が搭載されました。大口径2本出しマフラーカッター、アルミフッ素ゴム製強化インタークーラーダクト、フルカーボンストラットタワーバー、クイックシフトなどを採用しました。

1995年10月、スポーツワゴンにRVの雰囲気を持たせた「グラベルEX」を設定。220ps仕様のEJ20G型を搭載し、車高をかさ上げし、フロントプロテクターやスペアタイヤキャリアを備えました。

1996年1月、WRC総合優勝記念の特別限定車「Vリミテッド」を発売。チャンピオンエンブレムやオリジナルバケットシートなどを装備し、WRXベースが1000台、WRXタイプRA STIバージョンⅡベースが555台が販売されました。
また、スポーツワゴンに2.0LのNAエンジンを搭載した特別仕様車「HX-20S」を追加。125psの「EJ20E型(水平対向4気筒SOHC・1994cc)」を搭載しました。

1996年9月にマイナーチェンジを実施。外観の小変更やアルミホイールのデザインを変更しました。セダンWRX系のエンジンは「EJ20K型(水平対向4気筒DOHCターボ・1994cc)」に変更され、当時の国内自主規制値である280psに到達しました。WRX STIはバージョンⅢに進化。
各エンジンもリファインされ、1.5Lは102psのEJ15J型に、1.8Lは120psのEJ18J型に、EJ20E型は135psに出力アップ。EJ20E型を搭載したHX-20Sはカタログモデルに昇格し、セダンにも設定されました。
1.6L車が廃止され、代わりに1.5L車に4WDを設定しました。また、2ドアクーペのリトナはこの時廃止されました。

 
 
 
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1997年1月に、2ドアクーペの「WRXタイプR STIバージョン」を追加。セダンのWRXタイプRA STIバージョンⅢ同等のハイスペックモデルで、オリジナルバケットシートやカラードフロントスカート、リア濃色ガラスなどを装備しました。

1997年9月には、運転席エアバッグを標準装備化し、助手席エアバッグをオプション設定。STIはバージョンⅣに進化し、タイプRAとタイプRにはリアブレーキにも対向キャリパーを装備しました。

1998年3月、3連覇を成し遂げたWRCカーを再現した「22B-STIバージョン」を発売。クーペボディで、専用ボディパネルや専用バンパーを纏っており、全幅は1770mmとなった3ナンバーモデル。「EJ22改(水平対向4気筒DOHCターボ・2212cc)」エンジンを搭載し、自主規制値の280psを発揮しました。500万円という価格設定ながら、限定400台はわずか2日で完売しました。

1998年9月にマイナーチェンジを受け、全車マルチリフレクターヘッドランプに変更になったほか、新設計のシリンダーブロックとシリンダーヘッドを採用し、動力性能や燃費性能、静粛性を向上させました。EJ15J型は95ps、EJ18J型は115psに変更。HX-20Sに代わって「SRX」が新設定され、155psの「EJ20E型(水平対向4気筒DOHC・1994cc)」を搭載しました。また、STIはバージョンⅤに進化しました。

1998年12月には、スポーツワゴンの1.5L車をベースに、クロームメッキのフロントグリルや丸型ランプなどを装備した、レトロ調の外観を持つ特別仕様車カサブランカ」を5000台限定で発売。

1999年9月には、主にWRX系の改良を行い、大型リアスポイラーの形状変更などを実施。STIはバージョンⅥとなり、MT車全車にクラッチスタートシステムが採用されました。また、カサブランカがカタログモデルに昇格しました。

2000年4月、STIによるコンプリートカー「S201 STIバージョン」を発売。専用のスポーツECUや吸排気系の変更によって、300psを発揮するモデルで、グリル一体式フロントエアロバンパー、大型エアスクープ、砲弾型ドアミラー、ダブルウイングリアスポイラーなどを装着して迫力ある外観に仕上げられています。

2000年8月に販売を終了し、2代目GD/GG型にフルモデルチェンジとなりました。キープコンセプトの2代目では、大規模なフェイスリフトを2度重ねながら、2007年まで生産されました。3代目GE/GH/GR/GV型以降は、スポーツワゴンは設定されずに5ドアハッチバックとなっただけでなく、クロスオーバーSUVの「XV」も派生させるなど、スバルを支える世界戦略車の1つとして活躍しています。

当初の開発コンセプトは、レオーネの後継となるモデル、いわば大衆セダンの開発でしたが、WRCで大活躍したことも手伝い、WRX系のスポーツグレードが大人気となりました。
コンパクトクラスの車種は通常4年程度でモデルチェンジを迎えることが多い中、8年もの間生産され、その間人気が衰えることはなく、多くのファン「スバリスト」を生んだ張本人が、このインプレッサだったと言えるでしょう。

 

 

 

【諸元】

 

 

 

スバル・インプレッサ(初代GC/GF型)

全長×全幅×全高 4340/4350mm×1690mm×1405/1415mm(セダン)
4340/4350mm×1690mm×1405/1415/1440/1450mm(スポーツワゴン)
4365mm×1690mm×1405mm(カサブランカ
4365mm×1770mm×1390mm(22B-STIバージョン)
4375mm×1690mm×1405mm(S201 STIバージョン)
4595mm×1690mm×1470mm(グラベルEX)
ホイールベース 2520mm
乗車定員 5名
エンジン EJ15E型 水平対向4気筒SOHC 1493cc(97ps/6000rpm)(~1996.9)
EJ15J型 水平対向4気筒SOHC 1493cc(102ps/5600rpm)(1996.9~1998.9)
EJ15J型 水平対向4気筒SOHC 1493cc(95ps/5200rpm)(1998.9~)
EJ16E型 水平対向4気筒SOHC 1597cc(100ps/6000rpm)(~1996.9)
EJ18E型 水平対向4気筒SOHC 1820cc(115ps/6000rpm)(~1996.9)
EJ18J型 水平対向4気筒SOHC 1820cc(120ps/5600rpm)(1996.9~1998.9)
EJ18J型 水平対向4気筒SOHC 1820cc(115ps/5200rpm)(1998.9~)
EJ20E型 水平対向4気筒SOHC 1994cc(125ps/5500rpm)(1996.1~1996.9)
EJ20E型 水平対向4気筒SOHC 1994cc(135ps/5600rpm)(1996.9~1998.9)
EJ20E型 水平対向4気筒DOHC 1994cc(155ps/6400rpm)(1998.9~)
EJ20G型 水平対向4気筒DOHC ICターボ 1994cc(220ps/6000rpm)(1993.9~1994.10・セダンWRX AT車/1993.9~1996.9・スポーツワゴンWRX
EJ20G型 水平対向4気筒DOHC ICターボ 1994cc(240ps/6000rpm)(~1994.10・セダンWRX MT車
EJ20K型 水平対向4気筒DOHC ICターボ 1994cc(240ps/6000rpm)(1996.9~1997.9/1998.9~・スポーツワゴンWRX
EJ20G型 水平対向4気筒DOHC ICターボ 1994cc(250ps/6500rpm)(1994.1~1994.10・セダンWRX STI/1994.1~1995.8・スポーツワゴンWRX STI
EJ20K型 水平対向4気筒DOHC ICターボ 1994cc(250ps/6000rpm)(1997.9~1998.9・スポーツワゴンWRX
EJ20G型 水平対向4気筒DOHC ICターボ 1994cc(260ps/6500rpm)(1994.10~・セダンWRX/1995.8~・スポーツワゴンWRX STI
EJ20G型 水平対向4気筒DOHC ICターボ 1994cc(275ps/6500rpm)(1994.10~・セダンWRX STI
EJ20K型 水平対向4気筒DOHC ICターボ 1994cc(280ps/6500rpm)(1996.9~・セダンWRX/WRX STI
EJ20K型 水平対向4気筒DOHC ICターボ 1994cc(300ps/6500rpm)(S201 STIバージョン)
EJ22改 水平対向4気筒DOHC ICターボ 2212cc(280ps/6000rpm)(22B-STIバージョン)
駆動方式 FF/4WD
トランスミッション 4AT/5MT
タイヤサイズ 165SR13
175/70R14
185/70R14
195/60R15
205/55R15(~1994.10・WRX系)
205/60R15(グラベルEX)
205/50R16(1994.10~・WRX系)
235/40ZR17(22B-STIバージョン)