【トヨタ】トヨペット・コロナマークⅡ(初代T60/70型)

モータリゼーションの発展に伴って求められ始めたのがハイオーナーカー。コロナよりも豪華で快適で性能の優れるクルマを市場は求めました。

同年にデビューした日産・ローレルとともに切り拓いた新たなジャンルの始まりでした。

 

 

 


トヨペット・コロナマークⅡ(初代T60/70型)の歴史】

 

 

1950年代後半、ダットサン・乗用車(110型)に対抗すべく開発されたのがトヨペット・コロナ(初代T10型)。

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さらに日産はダットサン・1000(220型)へとモデルチェンジを果たし、販売成績はダットサンの圧勝でした。1959年にはダットサン・1000の後継となるブルーバード(初代310型)が発売され、シェアは広がる一方で、「BC戦争」の幕明けはトヨタの惨敗から始まったのでした。
その後、1960年にはコロナが2代目T20型にモデルチェンジ、ブルーバード(2代目410型)が1963年にデビュー、1964年にコロナ(3代目T40/50型)が発売され、年々販売競争は熾烈化していました。

1960年代後半にもなると、自家用車の普及と共に、市場は高級化と大型化を求めました。小型車であるコロナと、高級車であるクラウンの間に位置するクルマの開発です。当時のクラウンは、まだ自家用車にはハードルの高い、フォーマルな高級車だったことから、コロナの発展型を意味する「コロナマークⅡ」と名付けました。

一方ライバルの日産も、ブルーバードとセドリックの間に位置づけられたモデルを開発し、独立したモデル「ローレル」として、1968年3月に初代C30型が発表されていました。また、このクラスの先駆けだったのはマツダで、ルーチェ(初代SUA/SVA/M13P/SUAV型)が1966年にデビューしていましたが、国内市場では販売は伸び悩んでいました。

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ライバルのローレルは4ドアセダンのみでデビューし、商用モデルを設定しない販売戦略を取っていましたが、マークⅡは当初からワイドバリエーションを展開。4ドアセダンを基本に、2ドアハードトップ、5ドアワゴン、5ドアバン、ピックアップ(シングル/ダブル)と、なんと6種類ものボディバリエーションが用意されました。
セダンのボディサイズは全長4295mm×全幅1605mm×全高1405mmで、コロナよりも長く広く、そして低いスタイリングを採用。スラント形状のフロントマスクは、コロナのイメージを踏襲したもの。
また、ワゴンとバンは同一ボディながらリアコンビネーションランプのデザインが異なり、ワゴンはセダンのような横長形状、バンは商用車らしい縦長形状を採用しており、ワゴンは上級に見えるように、バンはリアハッチの開口面積を広く取るような区別がなされました。
ピックアップは、1列シート2人乗りで最大積載量500kgのシングルピックと、2列シート5人乗りで最大積載量300kgのダブルピックが用意されました。

デビュー当初のエンジンは、85psの「7R型(直列4気筒SOHC・1591cc)」をボトムラインに、そのツインキャブレター仕様である100psの「7R-B型(直列4気筒SOHC・1591cc)」、マークⅡ用に開発された100psの「8R型(直列4気筒SOHC・1858cc)」、さらにそのツインキャブレター仕様で110psの「8R-B型(直列4気筒SOHC・1858cc)」。それぞれツインキャブ仕様は「SL」グレードに搭載されました。
また、商用モデル用には77psの「2R型(直列4気筒OHV・1490cc)」が設定されましたが、バンの「デラックス」には7R型を搭載しました。

グレード構成は、セダンが「1600」「1600デラックス」「1600SL」「1900デラックス」、ハードトップが「1600」「1900」「1900SL」、ワゴンは「1600」のモノグレード、バンは「スタンダード」「デラックス」、ピックアップは「シングルピック」「ダブルピック」。

1968年9月、ローレルより半年遅れてデビューしましたが、メッキパーツを多用して豪華に見せたことや、内装の豪華さや充実した装備類、トヨタの強力な販売網などでローレルを凌駕し、販売成績はコロナマークⅡの圧勝。1815ccのエンジンを搭載して「1800」を名乗ったローレルに対し、わずか43cc上回るだけの1858ccのエンジンで勝負したコロナマークⅡは、四捨五入で「1900」を名乗ったことで、より高性能なイメージの「1900」に市場は反応したのでした。

 
 
 
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1969年9月には、ハードトップに「GSS」を追加。8R型をDOHC化したツインキャブレター仕様の「10R型(直列4気筒DOHC・1858cc)」を搭載し、140psを発揮して最高速度は200km/hを誇りました。高出力化に伴って、クラッチやブレーキ、足回りは強化され、LSDも装着。本革巻ステアリングや大径タコメーターなどが装備されたほか、4点式シートベルトやラジアルタイヤもオプション設定されました。

1970年2月に1回目のマイナーチェンジを受け、中期型となりました。フロントマスクの意匠変更を行ったほか、1.6Lは全て1.7Lエンジンに置き換えられました。シングルキャブで95psの「6R型(直列4気筒SOHC・1707cc)」と、ツインキャブで105psの「6R-B型(直列4気筒SOHC・1707cc)」が搭載されました。
また、上級グレードとして「GL」と「GSL」が設定され、ワゴンには1.9L車が追加されました。

1971年2月に2回目のマイナーチェンジ。通称「イーグルマスク」と呼ばれた、精悍で特徴的なフロントマスクに変更し、リアのデザインも変更されました。
また、ピックアップのエンジンは、83psの「12R型(直列4気筒OHV・1587cc)」に置き換えられました。

1972年1月にフルモデルチェンジで2代目X10/20型へ移行。2代目にはピックアップが設定されなかったため、ピックアップのみが1974年8月まで生産されました。
3年3ヶ月の販売期間で、ローレルの3倍近い約43万台を売り上げ、大ヒット作となりました。2代目以降、徐々に大型化しながら好調な売り上げを見せ続けたマークⅡに対し、日産は元々プリンスの車種だったスカイラインをも巻き込んで、販売競争に挑むことになるのでした。

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マークⅡのようなハイオーナーカーは、法人需要の多かったクラウンなどとは異なり、個人オーナーが持つ高級車として、時代の先頭を走り始めました。1970年代にはスポーティで高性能な小型車として、1980年代にはバブルを象徴するハイソカーとして。
しかし平成以降のセダン需要の落ち込みには勝てず、2004年にはマークⅡの名称は消滅。新たにマークXとして再出発することになりましたが、ついにマークXも2019年に幕を閉じました。

 

 

 

【諸元】

 

 

トヨペット・コロナマークⅡ(初代T60/70型)

全長×全幅×全高 4295mm×1605/1610mm×1405mm(セダン)
4295mm×1605/1610mm×1395mm(ハードトップ
4320mm×1605mm×1440mm(ワゴン/バン)
4320mm×1605mm×1435/1440mm(ピックアップ)
ホイールベース 2510mm
乗車定員 2/5/6名
エンジン 2R型 直列4気筒OHV 1490cc(77ps/5200rpm)(バン/ピックアップ)
12R型 直列4気筒OHV 1587cc(83ps/5400rpm)(ピックアップ)
7R型 直列4気筒SOHC 1591cc(85ps/5500rpm)
7R-B型 直列4気筒SOHC 1591cc(100ps/6200rpm)
6R型 直列4気筒SOHC 1707cc(95ps/5500rpm)
6R-B型 直列4気筒SOHC 1707cc(105ps/6000rpm)
8R型 直列4気筒SOHC 1858cc(100ps/5500rpm)
8R-B型 直列4気筒SOHC 1858cc(110ps/6000rpm)
10R型 直列4気筒DOHC 1858cc(140ps/6400rpm)(GSS)
駆動方式 FR
トランスミッション 2AT/3AT/3MT/4MT/5MT
タイヤサイズ 6.45-13 4P
6.45-14 4P