【マツダ】MPV(初代LV型)

北米の流行に合わせて開発されたMPVは、クロスオーバーSUV寄りのミニバンで、北米での好評を受けて国内でも発売されました。

1990年代以降に訪れるミニバンブームやSUVブームを予知したようなクルマは、日本のクルマ事情を大きく変えた先駆者なのかもしれません。

 

 

 


MPV(初代LV型)の歴史】

 

 

北米で1980年代に起こっていたミニバンブームの代表格はダッジ・キャラバン。1.5ボックスのボディスタイルを持つ3列シート車で、フルサイズバンよりも小型なサイズながら、広い室内空間や多目的に利用できるパッケージングが人気となっていました。

この流行に反応してマツダが計画したのがMPV。Multi Purpose Vehicle(多目的車)の頭文字を採った明解な車名で、カリフォルニアにあるデザインセンターでデザインされた、まさに北米のためのクルマ。
短いノーズを備えたボクシーな1.5ボックススタイルのボディは、全長4465mm×全幅1825mm×全高1745mmで、全幅は当時の日本車ではかなり広いサイズを誇りました。

シートレイアウトは2-2-3の7人乗りで、後席ドアにはヒンジ式を採用。3列目を畳めば大きなラゲッジルームとすることができたほか、2列目と3列目をフラットにすることも可能でした。さらに、当時としては珍しく2列目から3列目へのウォークスルーも備えていたことも特徴的。シートアレンジの多様さは、北米での流行そのままのスタイルでした。

ルーチェ用のLVプラットフォームがベースで、リアサスペンションは固定軸式に変更。
エンジンもルーチェに搭載されていた「JE型(V型6気筒SOHC・2954cc)」で、155psの出力を発揮。1700kgを超える重いボディを考慮した上での大排気量エンジンでした。トランスミッションは4速ATで、コラム式を採用。

北米では1988年にデビューしていましたが、日本では1990年1月から販売開始。当初はモノグレードで、ボディカラーも2色のみ(通常色とツートン色)。車両本体価格は355万円で販売されました。

1991年10月にはマイナーチェンジを実施。外観ではフロントグリルのデザインを変更しました。
当初は本革シートのみの設定でしたが、ファブリックシート仕様として、321万円の「タイプA」と293万円の「タイプB」の2グレードが設定されました。
また、マツダの5チャンネル化体制により、アンフィニMPVに改称。

1994年8月、グレード名称の整理が行われ、標準グレードが「タイプB」、強化サスペンションを採用した「タイプBツーリング」、装備を充実させた上級仕様の「タイプR」の3グレード体制になりました。

1995年10月のマイナーチェンジでは、フロントバンパーが延長されて全長4660mmとなり、フロントマスクの意匠を変更しました。内装デザインもリフレッシュし、当初開閉できなかったリアドアの窓が開閉式となりました。
「WL-T型(直列4気筒SOHCディーゼルターボ・2499cc)」と「G5-E型(直列4気筒SOHC・2494cc)」の2種類のエンジンも追加されたほか、2-3-3のシートレイアウトを持つ8人乗り仕様や、2列シートの5人乗り仕様、パートタイム4WD仕様(ディーゼルエンジンのみの設定)、最低地上高を上げた「グランツ」シリーズも追加されました。
グランツシリーズには、フォグランプステーやサイドステップ、傾斜計や方位計などもオプション設定されました。

1996年10月には、ルーフレールやリアスポイラー、メッキグリル、アルミホイールを装着した特別仕様車「タイプGリミテッド」が、1997年5月には、ルーフレールやリアスポイラー、ブライトフロントグリル、ABSを装着した特別仕様車「タイプGスペシャル」が発売されました。

1997年11月、アンフィニ店の廃止に伴って「マツダMPV」に再度戻され、ブランドマークも新しいマツダCIマークに変更されました。また、あわせてグレードの追加や、標準装備の見直しも行われました。

1998年6月には、700台限定の特別限定車「タイプG-セブン」を発売。前年に追加されていた「タイプG-L」をベースに、7人乗り仕様とし、トップグレードのタイプRで採用されていたボディ同色ドアミラーや、テールゲートプロテクター、専用アルミホイール、カーボン調インパネなどを装備しました。

1999年6月にフルモデルチェンジを受けて販売終了。
2代目LW型からは、爆発的にヒットしていたホンダ・オデッセイをライバルとする、FFベースで曲線的なボディラインを持つミニバンへと生まれ変わりました。その後、2006年に3代目LY型にバトンタッチするも、2016年には生産終了となりました。

マツダは2010年代後半にはミニバン市場から撤退し、SUVへと舵を切りました。かつてのミニバンユーザーの受け皿はCX-8(KG型)とされ、3列シートを持ち居住性に優れたSUVとして人気を得ています。
そのコンセプトは、大きく見ればMPVにも通じるところがあり、他メーカーにはない魅力を持つクルマを作るマツダのスタンスは、今も昔も変わっていないのかもしれません。

 

 

 

【諸元】

 

 

マツダMPV(初代LV型)

全長×全幅×全高 4465mm×1825mm×1745/1810mm(~1995.10)
4660mm×1825mm×1750/1785/1815/1850mm(1995.10~)
ホイールベース 2805mm
乗車定員 5/7/8名
エンジン G5-E型 直列4気筒SOHC 2494cc(120ps/4500rpm)
WL-T型 直列4気筒SOHCディーゼルICターボ 2499cc(125ps/4000rpm)
JE型 V型6気筒SOHC 2954cc(155ps/5000rpm)
駆動方式 FR/4WD
トランスミッション 4AT
タイヤサイズ 195/70R15
215/65R15