【日産】クルー(K30型)

1993年に発売された日産・クルーは、タクシー用に開発されたFR4ドアセダン。

快適な後席、信頼性の高い構造、運転のしやすさなど、専用設計のメリットが溢れるクルマでした。

 
 
 
 
 
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【日産・クルー(K30型)の歴史】

 

 

1960年代後半にマイカー時代が到来する前、自家用車が夢の時代には、国内の乗用車としてのニーズはほとんどがタクシーでした。大都市圏ではトヨペット・クラウン(初代RS/S20/S30型)や日産・セドリック(初代30型)、地方都市ではトヨペット・コロナ(2代目T20/30型)やダットサン・ブルーバード(初代310型)がよく用いられました。

1990年頃になると、タクシーとして使用される車種も増え、トヨタ・クラウン(8代目S130型)、トヨタ・マークⅡ(6代目X80型)、トヨタ・コロナ(7代目T140型)、日産・セドリック/グロリア(Y31型)、日産・ローレル(5代目C32型)、日産・ブルーバード(6代目910型)、三菱・ギャランΣ(5代目E10型)、マツダ・ルーチェ(5代目HC型)、マツダ・カスタムキャブ(HB型)、マツダ・カペラ(5代目GD型)などがタクシー仕様を生産していました。
このうち、クラウン、マークⅡ、セドリック/グロリア、ルーチェは、販売の主力は既に4ドアハードトップでしたが、4ドアセダンも生産する二重体制。コロナ、ローレル、ブルーバード、ギャランΣは、一般向けは既にFF化、ハードトップ化、モデルチェンジなどを果たしていましたが、タクシー向けに旧モデルを継続生産している体制でした。

日産では、ブルーバードが1979年発売モデル、ローレルは1984年発売モデルと旧態化が進んでいる中、小型タクシー用に新たなクルマを開発し、それが1993年に登場したクルーでした。

駆動方式は、タクシーではオーソドックスなFR。
ローレル(5代目C32型)のフロントに、セドリック/グロリア(Y31型)のキャビンとリアフロアパンを組み合わせ、耐久性や整備性に考慮した強固な足回りを実現しました。
フロントにストラット式、リアに5リンク式のサスペンションも、簡素ながら頑丈なもの。

エンジンは、82psの「NA20P型(直列4気筒SOHC・1998cc)」のLPG仕様と、94psの「RD28型(直列6気筒SOHCディーゼル・2825cc)」の2種類。
NA20P型は、ダットサントラックやアトラスなどの商用車向けに開発されたエンジンで、セドリック/グロリアのタクシー仕様にも1991年から搭載されており、クルーにも採用されました。
トランスミッションは、4速ATと5速MTを用意。

 
 
 
 
 
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全長4595mm×全幅1695mm×全高1460mmのボディサイズは、小型タクシー枠の全長4.6mに収まるもの。当時のセダンは全高1400mm以下が流行していましたが、それよりも十分高く取ったルーフにより、室内の居住空間を確保しました。
また、運転席ドアと左側後席ドアの使用頻度が高いため、これらを50mmほど大きく取った左右非対称設計になっており、当初からタクシーとして使用することを前提とした設計であることも特徴的。

デビュー時は、個人タクシー向け上級グレードの「GLX」「GL」、法人タクシー向けの「E-L」「E」。
タクシーとしての実用性重視のクルマ作りの結果、業界からは好評を得て、一躍小型タクシーの定番モデルとなっていきました。

 
 
 
 
 
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1994年1月になると、自家用向けグレードのサルーン系を発売。当時のセダン市場では、ボディの大型化による3ナンバー化、スタイリング重視のハードトップ化、過剰な豪華装備による高級化、MT車の減少などが進んでおり、これを好まない年配のユーザーをターゲットにしたもので、6気筒エンジンを搭載した保守的なセダンとして発売されました。
130psの「RB20E型(直列6気筒SOHC・1998cc)」を搭載し、「LXサルーン」「LXサルーンBタイプ」「LSサルーン」「LSサルーン-F」の4グレードを設定。

1994年4月には、パトカー仕様車を追加。6気筒エンジンを搭載しなければいけない規定があるため、自家用向けと同様のRB20E型が搭載されました。

5月には、LXサルーンにRD28型を搭載したディーゼル車を追加しました。

1995年2月、LXサルーンBタイプを廃止し、上級グレードの「LXサルーンGタイプ」を新設定。15インチアルミホイールや本革巻きステアリングなどを装備しました。

1998年6月には、タクシー向けのNA20P型を改良して85psにパワーアップ。
GLXとGLに「カスタムパッケージA/B」をオプション設定し、カラードバンパーやメッキドアハンドルなどが装備可能となりました。

1999年8月、ディーゼルエンジンが「RD28E型(直列6気筒SOHCディーゼル・2825cc)」に変更され、インジェクション化されて100psとなりました。

2002年6月に、自家用向けとパトカー仕様が生産中止となり、LPGエンジンのみとなりました。質実剛健なFRセダンでしたが、保守的なクルマを求めるユーザーはそう多くなかったことと、日産の企業改革による車種整理もあり、自家用向けはお役御免となってしまいました。

 
 
 
 
 
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2005年11月の改良では、グレード整理のほか、ウインカー類のクリア化、リアコンビネーションランプのデザイン変更、ハイマウントストップランプのLED化を実施。

2007年7月に教習者向けが廃止。

2009年6月にはタクシー向けの生産も終了となり、日産のラインナップから小型タクシーが姿を消しました。後継モデルは中型タクシー枠のセドリック営業車とされましたが、こちらも1987年から販売する旧型であるが故、2014年に生産を終了しており、日産のセダンタイプのタクシーは完全に消滅してしまいました。

 
 
 
 
 
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小型タクシー向けに設計されたクルーは、16年間に渡り地方都市のタクシー業界を支えました。しかし、1995年に同様のコンセプトでトヨタ・コンフォートシリーズ(XS10型)がデビューすると、クルーの勢いは一気に衰え、コンフォートの独走状態となったのです。
そのコンフォートも2018年には販売を終了してしまいましたが、これらの販売開始から30年が経つ2020年代に入ってもまだ、多くが街を駆け回る姿を見ると、質実剛健な営業車向けのクルマ作りは、年を経ても不変なのかもしれません。

 

 

 

 

【諸元】

 

 

 

日産・クルー(K30型)

全長×全幅×全高 4595mm×1695mm×1460mm
ホイールベース 2665mm
乗車定員 5名
エンジン NA20P型 直列4気筒SOHC 1998cc(82ps/4600rpm)(~1998.6)
NA20P型 直列4気筒SOHC 1998cc(85ps/4600rpm)(1998.6~)
RB20E型 直列6気筒SOHC 1998cc(130ps/5600rpm)(サルーン/パトカー仕様・1993.1~2002.6)
RD28型 直列6気筒SOHCディーゼル 2825cc(94ps/4800rpm)(~1999.8)
RD28E型 直列6気筒SOHCディーゼル 2825cc(100ps/4800rpm)(1999.8~2002.6)
駆動方式 FR
トランスミッション 4AT/5MT
タイヤサイズ 175SR14
175/80R14
185/70R14
195/65R15