【三菱】デリカ(2代目L型)
初のフルモデルチェンジで2代目に移行したデリカは、RV色を一気に強め、9人乗りのスターワゴンが人気モデルとなりました。
特に、後に追加された本格4WD車は、現代まで続くデリカのスタイルを確立したモデルでした。
【三菱・デリカ(2代目L型)の歴史】
1966年に発売されたマツダ・ボンゴ(初代FSA型)が大ヒットすると、他メーカーもライバルとなる小型1BOX車を次々に投入。三菱が1968年に発売したのがデリカ(初代T100/120型)でした。
ラダーフレームを使用した三菱らしい丈夫な造りによって、タフさが求められる商用車として一定の評価を受けました。
一方で、徐々に高まりつつあったアウトドアユースにも対応しており、1972年にはポップアップテントやベッド、キッチン台、ガスレンジなどを装備したキャンピングバンも設定。
しかし、乗用タイプのコーチは排ガス規制に対応できず、1976年には廃止となり、以降は商用バンとトラックのみのラインナップで販売展開をしていました。
1970年代後半になると、ライバル各車は軒並みモデルチェンジを敢行していました。クラスリーダーのボンゴは1977年にトラック、1978年に1BOXを2代目BA2型へ移行し、日産・サニーキャブ/チェリーキャブ(初代C20型)は1978年にサニーバネット/チェリーバネット(初代C120型)へ生まれ変わりました。トヨタ・ライトエースのモデルチェンジはデリカと同じ1979年でしたが、1976年からは上級車種のタウンエース(初代R10/20型)を投入してラインナップを強化していました。
ライバル各車に共通したのは、乗用モデルに力を入れたこと。アウトドアブーム等によるクルマの多用途化や多目的化に伴って、様々な快適装備を備えた上級仕様のワゴンモデルを設定し、その魅力をアピールしました。
後発のモデルチェンジとなったデリカもその点では同様で、数年間廃止となっていた乗用モデルを「スターワゴン」として復活させました。
1979年6月当初の駆動方式は先代同様にFRのみ。
エンジンはギャランなどに採用されていたサターンエンジン2種類をラインナップしました。86psの「4G32型(直列4気筒SOHC・1597cc)」と、82psの「4G33型(直列4気筒SOHC・1439cc)」で、1.4Lはトラックとバンに設定され、ワゴンは1.6Lのみ。
トランスミッションは4速MTを基本に、1.6L車には5速MTも用意されました。
室内のスペース効率やユーティリティ効率を高めるため、先代の丸みを帯びたスタイルから一転し、直線を基調としたスクエアなスタイリングに一新。特に全幅は150mmも拡大され、小型車枠一杯の1690mmとなり、バンは「バンワイド」と称されました。
トラックは、後輪に小径タイヤを採用することで、低床でもタイヤハウスの出っ張りをなくし、使い勝手に優れるものとなり、これを「マイティロー」と称しました。
3列シートを持つスターワゴンは、コラムシフトの採用により9人乗車が可能。シートアレンジもでき、2,3列目のフルフラットが可能だっただけでなく、2列目のドア側の1席は補助席のような造りで、折り畳むことができ、乗降性にも配慮されていました。また、3列目を畳めば十分に広いラゲッジスペースが現れ、荷物の多いアウトドアなどにも重宝されました。
1980年6月には、通称シリウスエンジンと呼ばれる「4G62型(直列4気筒SOHC・1795cc)」を、スターワゴンにラインナップ。ギャランΛ/エテルナΛ(2代目A160型)やランサー(2代目A170型)に搭載されたもので、100psを発揮しました。1.8L車は全車がハイルーフ仕様で、電動サンルーフもオプション設定されました。
1981年10月、スターワゴン「XLスーパー」に、2,3列目回転対座シートが標準装備され、3速AT仕様も追加されました。
1982年10月にマイナーチェンジを実施。75psの「4D55型(直列4気筒SOHCディーゼル・2346cc)」を搭載車をバンワイドとトラックに追加し、バンワイドには後席ドア後方をストレッチしたロングボディ仕様を設定しました。
スターワゴンは、ヘッドランプが丸型2灯から角形2灯式に変更となり、1.8L車はフロアシフト化されて8人乗り仕様となりました。
さらに、4列シート10人乗りのロングボディ仕様が追加されたほか、「4D55T型(直列4気筒SOHCディーゼルターボ・2346cc)」搭載車も設定されました。
そして、同時に追加されたのが4WD車。パジェロ(初代L040/140型)のシャシーを流用した本格4WDで、副変速機を持つパートタイム式。ラダータイプのサブフレームが組み込まれたことと、大径タイヤを装着したことで車高は高くなり、パジェロに相当する十分なオフロード性能を発揮しました。
エンジンは1.8Lの4G62型を搭載し、フロントグリルガードやスペアタイヤなどで、オフロード感やアウトドア感を演出しました。
4WD車はバンワイドにも設定され、スターワゴンと同じく1.8Lエンジンを搭載。
1983年11月に、バンワイドとトラックも角型2灯式ヘッドランプに変更。
スターワゴン4WDは、「4G63型(直列4気筒SOHC・1997cc)」に変更されました。
また、2列目のキャプテンシートとした「エクシード」を2WD/4WDそれぞれに追加しました。
1984年2月には、4WDに2.3Lディーゼルエンジン車を追加しました。バンワイドにはNA仕様、スターワゴンにはターボ仕様を搭載。
1985年10月、後の3代目P型で人気モデルとなる特別仕様車「シャモニー」を初めて設定。4WDのディーゼルターボ車をベースに、内外装や装備面をスキー仕様にしたモデルで、2トーンの専用ボディカラーや専用シート地を採用しました。
1986年6月にバンワイドとスターワゴンはフルモデルチェンジを受けて3代目P型に移行。より洗練された乗用ワゴンらしいデザインとなっただけでなく、よりRV車らしいスタイリングを纏い、引き続きスターワゴン4WDが大人気モデルとなりました。
一方、トラックはマイナーチェンジが実施されて継続生産されました。フロントマスクにガーニッシュを装着して外観をリフレッシュし、ディーゼルエンジンは84psの「4D56型(直列4気筒SOHCディーゼルターボ・2476cc)」に変更されました。
1988年にはトラックにも4WD車が設定されました。三方開きの高床デッキ車のみで、2人乗り仕様でした。
その後1994年5月までトラックの生産が続き、8年遅れてようやくフルモデルチェンジを受けて3代目P型に移行しました。
長い歴史を持つデリカにとって、4WD車の追加が運命を変えた瞬間でした。1BOX車に4WDを設定したのはデリカが先駆だっただけでなく、その4WDシステムは何せジープ譲りの本格派。デリカの後を追って、1985年前後にはライバル他車も4WDを設定していきましたが、優れた悪路走破性やオフロード感溢れるスタイリングなどにより、1BOXの4WDといえばデリカであり、デリカといえば4WDというイメージが根付くことになりました。
そのイメージは後年にまで脈々と受け継がれており、スペースギアやD:5でも大いにアウトドアユーザーを惹きつけました。
【諸元】
三菱・デリカ(2代目L型)
全長×全幅×全高 | 3990/4015/4240mm×1690/1695mm×1800/1935mm |
4095/4405mm×1695mm×1810/1850/1860mm(トラック) | |
ホイールベース | 2200mm |
2350mm(ロング) | |
乗車定員 | 2/3/6/7/8/9/10名 |
エンジン | 4G33型 直列4気筒SOHC 1439cc(82ps/5200rpm) |
G32B型 直列4気筒SOHC 1597cc(86ps/5000rpm) | |
G32B型 直列4気筒SOHC 1597cc(86ps/5200rpm) | |
G62B型 直列4気筒SOHC 1795cc(100ps/5500rpm) | |
G63B型 直列4気筒SOHC 1997cc(110ps/5500rpm) | |
4D55型 直列4気筒SOHCディーゼル 2346cc(75ps/4000rpm) | |
4D55T型 直列4気筒SOHCディーゼルターボ 2346cc(84ps/4000rpm) | |
4D55T型 直列4気筒SOHCディーゼルターボ 2346cc(96ps/4200rpm) | |
4D56T型 直列4気筒SOHCディーゼルターボ 2476cc(84ps/4200rpm) | |
駆動方式 | FR/4WD |
トランスミッション | 3AT/4MT/5MT |
タイヤサイズ | 5.50-13 6P |
5.50-13 6P / 4.50-12 6P | |
5.50-13 6P / 5.50-13 8P | |
6.00-13 6P / 4.50-12 6P | |
175SR13 | |
195SR14 |