【日産】デュアリス(J10型)

日産の欧州戦略車として開発されたデュアリスは、ミドルサイズのクロスオーバーSUV。都会派を感じるスタイリングが魅力で、国内でも2007年から販売されました。

欧州市場では、英国工場の生産を増産対応するほどの人気車種となりました。

 

 

 


【日産・デュアリス(J10型)の歴史】

 

 

欧州市場における日産車の販売は、ピックアップトラックやそれをベースにしたSUV、またはB~Cセグメントの小型乗用車が中心でした。
1980年代には英国日産がブルーバード(日本名:オースター)の生産を開始し、1990年代に入ると、その後継であるプリメーラ(初代P10型)や、日本ではマーチとして販売されるマイクラ(K11型)などを生産。

一方、初代から欧州市場を意識して開発されていたパルサーは、国内生産車が欧州に輸出されており、チェリーやサニー、アルメーラの名称で販売されていました。このアルメーラが2代目N15型にフルモデルチェンジされた2000年からは、英国日産で現地生産されるようになり、日産の欧州市場の屋台骨となっていました。ちなみにこのN15型アルメーラの国内版は、ブルーバードシルフィ(G10型)として販売されました。

2002年頃には、この次期モデルであるN16型の開発が始動したものの、十分な採算が見込めないことから、開発は一旦中止。代わりに、欧州市場で人気が高まりつつあったミドルサイズのクロスオーバーSUVの開発が始動し、全く新しいクルマとして生まれたのがデュアリスであり、これがアルメーラの後継車とされました。

プラットフォームには、輸出向け小型セダンのセントラ(6代目B16型)や、セレナ(3代目C25型)で実績のあるCプラットフォームを採用。
駆動方式はFFと4WDがラインナップされ、4WDシステムは車台を共有するエクストレイル(初代T30型)と同様の、オールモード4x4を採用しました。
サスペンションは新開発され、フロントがマクファーソン式、リアがマルチリンク式で、高剛性スタビライザーやハイスピードダンピングコントロールショックアブソーバーを組み合わせました。

エンジンは、137psの「MR20DE型(直列4気筒DOHC・1997cc)」を搭載し、トランスミッションにはエクストロニックCVTが用意されました。
欧州向けにはこの他にも、1.6Lガソリンや2.0Lディーゼル、1.5Lディーゼルなどのエンジンや、5速MT、6速MT、6速ATのトランスミッションもラインナップされました。

エクステリアデザインは、英国のデザインセンターを中心に開発。フェンダーからルーフ、リアへと流れるラインや、サイドやリアウィンドウ周りの造形などは、クロスオーバーSUVらしい都会的で流麗なもの。一方で、力強さ溢れるフロントマスクやリアコンビネーションランプなどは、スポーティでタフなイメージを演出しました。
また、日産車としては初めてCFD(計算流体力学)解析が導入され、SUVトップクラスのCd値0.35を達成しました。

ボディサイズは全長4315mm×全幅1780mm×全高1615mm。エクストレイル(2代目T31型)やホンダ・CR-V(3代目RE3/4型)より250mm程度短く、トヨタRAV4(3代目XA30型)と同等サイズのショートスタイル。

内装は、センターコンソールを比較的高く設定したことや、黒基調のインパネにメタリック調の加飾を加えることにより、スポーティさを演出。
流麗なスタイリングからくる大きなフロントガラスは開放感に繋がりました。さらに、一部グレードには大開口のガラスルーフも装備されました。

2007年3月に欧州で「キャシュカイ」として販売が開始された後、国内では5月から販売されました。当初は英国日産のサンダーランド工場で生産され、国内向けは英国からの輸入販売でした。
標準グレードの「20S」「20S FOUR」と、上級グレードの「20G」「20G FOUR」の4タイプで、195万円~243万円。月販目標2000台に対して、発売1週間で約5000台の受注を受けるなど、国内でも好調な販売を記録。
欧州市場でも好調で、3ヶ月で6万台の受注を記録しました。

2007年12月、欧州での生産性向上のため、国内向けの生産を九州工場に移管。

2008年5月には、特別仕様車「アーバンフレア」を発売。20Gと20G FOURをベースに、ブラックとカカオの2トーン専用内装色と、オレンジとブラウンの2トーン専用シート色が設定されました。

2008年9月にカスタマイズカー「クロスライダー」を発売しました。オーテックジャパン扱いの特装車で、20Sと20S FOURをベースに、専用デザインの内外装を与えられたモデル。専用のフロントグリルや前後バンパー、17インチアルミホイール、センター出しマフラー、アルカンターラシートなどを装備しました。

2008年12月には、SRSカーテンエアバッグやSRSサイドエアバッグなどを標準装備化する仕様向上を実施。さらに、特別仕様車「アーバンブラウンレザー」を発売しました。欧州向けに設定されるブラウンの本革シートや本革調ドア、アームレストを装備したモデルで、前席シートヒーターや運転席ランバーサポートなども装備されました。

2009年9月の改良では、フォグランプやサイドクロームメッキモールの標準装備化や、フロントグリルのデザイン変更を実施。

2010年1月には特別仕様車「アーバンブラックレザー」を発売しました。アーバンブラウンレザーのブラック本革版で、18インチアルミホイールも装備されました。

2010年8月にマイナーチェンジが実施され、フロントグリルのデザインを変更。
エコドライブ支援機能として、メーター内に燃費情報やメンテナンス情報を表示する車両情報ディスプレイや、スムーズ発進アシスト機能、ECOモード機能などを装備しました。
ボディカラーが全色入れ替えられたほか、20S FOURは廃止となりました。

2011年6月に、特別仕様車「アーバンブラックレザーⅡ」を発売。

2013年12月、エクストレイルのフルモデルチェンジによって統合となり、国内向けの生産を終了し、2014年3月に販売を終了しました。
好調な欧州市場ではキャシュカイもフルモデルチェンジを受け、2代目J11型に移行。デザインは異なるものの、実質エクストレイル(3代目T32型)のショートホイールベース版となりました。

 
 
 
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都会的で流麗なデザインや、ショートボディのスタイリングから、ハッチバックSUVを合わせたような性格となったデュアリス。現代のコンパクトSUVブームのルーツの1つとも言えるかもしれません。
特に欧州市場では、ハッチバック車からの乗り換え需要も多く、まさにクロスオーバーSUVとしてのお手本のようなクルマとなりました。

 

 

 

 

 

【諸元】

 

 

 

日産・デュアリス(J10型)

全長×全幅×全高 4315mm×1780mm×1615mm
4365mm×1780mm×1595mm(クロスライダー)
ホイールベース 2630mm
乗車定員 5名
エンジン MR20DE型 直列4気筒DOHC 1997cc(137ps/5200rpm)
駆動方式 FF/4WD
トランスミッション CVT
タイヤサイズ 215/65R16
215/60R17
215/55R18