【ダイハツ】ネイキッド(L750/760型)
ショーモデルが市販化されたネイキッドは、自由自在な使い方ができる新しい軽自動車。
露出したドアヒンジや、外側からボルト止めされたバンパーなど、見た目でも個性あふれる意欲作でした。
【ダイハツ・ネイキッド(L750/760型)の歴史】
1998年の軽自動車規格改定に伴い、軽自動車は一斉にフルモデルチェンジを実施しました。ダイハツは、ベーシックなミラ(5代目L700/710型)と、大ヒットしていたトールワゴンのムーヴ(2代目L900/910型)を中心に展開。
かつて人気を集めたスポーティなホットハッチモデルやオープンモデルは下火になり、スズキ・ジムニーの独占状態だったSUVクラスには、三菱・パジェロミニ(2代目H50型)やダイハツ・テリオスキッド(J100型)などが投入され、軽クロスオーバーSUVのスズキ・Kei(HN11/12/21/22型)も人気となるなど、軽自動車市場にも多様化の波が押し寄せていました。
ダイハツは、1997年の第32回東京モーターショーに、ネイキッドをプロトタイプとして出品。「ネイキッド」の名の通り、飾り気のないスタイリングに、機能主義にまとめられたクルマは、当初販売の予定はなかったものの、反響が大きかったため市販化を決定しました。
ベースになったのは1998年にフルモデルチェンジしたミラで、FFと4WDを設定。
エンジンは、58psの「EF-VE型(直列3気筒DOHC・659cc)」と、64psの「EF-DET型(直列3気筒DOHCターボ・659cc)」の2種類で、トランスミッションは全車で5速MTか4速ATを選択可能でした。
ボディサイズは全長3395mm×全幅1475mm×全高1550mmで、立体駐車場へも入れる全高に設定。かつ、最低地上高は180mm(4WD車は150mm)を確保しており、アウトドアシーンでの走破性も考慮されています。
直線基調としたスタイリングの中に、ドアヒンジをあえて露出させて道具感を演出。バンパーやフロントグリルは外側からボルト止めされていて、簡単に取外しができる構造だったほか、前後バンパーは3分割構造としてDIY感覚で簡単に交換できるように工夫されていました。
そのコンセプトは内装にも表れており、ピラーやドアトリムなどにはあえてボディ色を露出させ、これはアウトドアユースにおいてマグネットが使用できるなどの配慮でした。後席は折り畳むだけでなく簡単に取り外す事まで可能で、専用スタンドを使えばアウトドアチェアに変身。シートには撥水加工、マット類には防水処理が施され、天井部などには自由にバーや棚などを装着できるフックを用意しました。
一方で快適装備も充実しており、パワーステアリングやパワーウィンドウ、エアコンは標準装備で、「Gパッケージ」を装着するとデュアルSRSエアバッグやスモークドガラス、キーレスエントリー、後席ヘッドレスト、リアワイパーなどが装備され、軽自動車としては豪華仕様でした。
使い勝手向上のため、ラゲッジルームの床面はムーヴよりも低い490mmという高さを実現しており、荷室高そのものも1040mmを確保しました。その代わりに、通常はラゲッジルーム下に置かれるスペアタイヤは、ラゲッジルーム右側に立て掛けて配置されていました。
1999年11月にデビュー。NA仕様とターボ仕様の2グレードを基本に、先述のGパッケージを設定。
2000年5月に特別仕様車「Sエディション」を発売。Gパッケージの装備品に加えて、2DINオーディオや電動格納式ドアミラー、インナーピラーガーニッシュなどを装備した快適仕様でした。
2000年10月には、衝突安全ボディの性能強化や、安全インテリアの導入、クラッチスタートシステムの採用など、安全装備を充実させるための改良を実施しました。
また、従来のGパッケージ装備品は全車に標準装備とされ、グレード体系を見直し。NA車の「G」と「ターボG」を基本に、Gには廉価版の「Bパッケージ」と充実版の「Sパッケージ」、ターボGには14インチアルミホイール等を装備した「SPパッケージ」をラインナップしました。
後席リクライニングシートやスペアタイヤレス仕様車の設定、ボディ色と内装色の組み合わせ自由化なども実施。
2000年12月には、軽自動車で初となるディスチャージヘッドランプを採用し、専用グリルやメッキパーツなどを装備した「ターボX」を追加。
さらに、ターボXにゼブラパターンの内外装などを追加した「ネイキッド-@1.」を発売。
2001年5月には、Gをベースに、2DINオーディオ、後席リクライニングシート、スペアタイヤレス、メッキ電動格納ドアミラー、メッキドアハンドル、ピラーガーニッシュ、14インチアルミホイールなどを装備した、特別仕様車「メモリアルエディション」を発売。
2002年1月のマイナーチェンジでは、角形ヘッドランプを纏った「Fシリーズ」を追加しました。「F」と「ターボF」の2種類で、4速ATのみの設定でした。
Gシリーズのフロントマスクもリファインされ、AT車はコラム化してベンチシートとし、Fシリーズ専用インテリアのセットオプションも設定されました。
新たに、ディスチャージヘッドランプ、14インチアルミホイール、バックドアガーニッシュ、ホワイト色の大型リアコンビネーションランプ、革巻ステアリングホイール、メタル調メーターパネルなどを装備した最上級仕様の「GEAR」を設定し、4速ATのターボ車のみがラインナップされました。
2003年5月のグレード整理では、廉価グレードの「L」、装備を充実させた「G」、ターボエンジン搭載の「ターボG」の3グレード体制となり、Fシリーズは廃止。代わりに、角型ヘッドランプと専用グリルがセットになった「Fパック」が設定されました。
また、5速MTはGのみの設定に整理されました。
2003年8月にGとターボGをベースにした特別仕様車「Gリミテッド」「ターボGリミテッド」を発売。ディスチャージヘッドランプなどの装備を充実させた仕様でした。
2004年4月に販売終了となりました。事実上の後継車種はテリオスキッド。
16年が経過した2020年、同じコンセプトを持つ後継車種としてタフト(2代目LA900/910型)がデビューしました。
それまでになかった軽自動車に興味を示す人は少なくなかったものの、大きな期待とは裏腹に、ネイキッドの販売成績は低調でした。乗用車のように乗れて、SUVのような使い勝手を備える、遊びごころ溢れる「遊びのための軽自動車」は、当時のコンセプトとしては新しすぎたのです。
同コンセプトで大ヒットしたスズキ・ハスラー(初代MR31/41型)のデビューは2014年。ネイキッドは15年も時代を先取りしていたのです。
【諸元】
ダイハツ・ネイキッド(L750/760型)
全長×全幅×全高 | 3395mm×1475mm×1550mm |
3395mm×1475mm×1530mm(Fシリーズ) | |
ホイールベース | 2360mm |
乗車定員 | 4名 |
エンジン | EF-VE型 直列3気筒DOHC 659cc(58ps/7600rpm) |
EF-DET型 直列3気筒DOHC ICターボ 659cc(64ps/6400rpm) | |
駆動方式 | FF/4WD |
トランスミッション | 4AT/5MT |
タイヤサイズ | 155/65R13(Fスターエディション) |
165/65R13 | |
165/55R14 | |
165/65R14(GEAR) |