【三菱】eKワゴン/スポーツ/クラッシィ/アクティブ(初代H81型)

軽トールワゴン全盛の時代に入り、ライバル競争が激化する中、実用性を重視した新たなモデルとして登場したのがeKワゴン

当初はシンプルさを売りにしたeKワゴンのみでしたが、多様なバリエーションの姉妹モデルも登場しました。

 

 

 


【三菱・eKワゴン/スポーツ/クラッシィ/アクティブ(初代H81型)の歴史】

 

 

1990年代以降、軽乗用車は背の高いトールワゴンが主流となりました。その先駆的なモデルが、1990年に登場した三菱・ミニカトッポ(初代H20型)で、ミニカ(6代目H20型)のキャビンをハイルーフにして広い室内が売りでした。

その後、4人が快適に乗車できる新たな軽トールワゴンとして1993年に登場した、スズキ・ワゴンR(初代CT21/51/CV21/51型)が、爆発的な大ヒットを記録し始めると、ダイハツ・ムーヴ(初代L600/610型)やホンダ・ライフ(2代目JA4型)などが後に続き、軽乗用車の一大ジャンルとして大ブームとなりました。
1998年の軽自動車規格が改正されると、各メーカー一斉にモデルチェンジ。ミニカトッポはトッポBJ(初代H40型)として独立モデルとなり、ライバル各車に対抗していました。

そんな中で、ミニカとトッポBJの間を埋めるサイズの新型車として企画されたのがeKワゴン。キャッチコピーは「シンプル&クリーン&ベーシック」とされ、実用性に特化した使い勝手のいいトールワゴンが目指されました。

基本的なコンポーネンツは、コストダウンのためにミニカやトッポBJと共用されました。ホイールベースも共通の2340mmで、軽自動車としては十分長いもの。
FFのほかに4WDも当初からラインナップされました。

エンジンは、50psの「3G83型(直列3気筒SOHC・657cc)」で、ミニカやトッポBJにも搭載されていた12バルブ仕様のもの。
トランスミッションは3速ATのみで、コラムシフトを採用しました。
当初は、ターボ車もMT車も設定がありませんでした。

1550mmに抑えた全高は、立体駐車場にも入ることが出来るサイズとなっており、それまでのトールワゴンよりも一回り小柄なもの。
シンプルすぎるほどベーシックなスタイリングは、コストダウンも考慮されたものでしたが、結果として老若男女から愛されるものとなりました。

内装の特徴は三菱初のセンターメーターを採用したことで、その他はいたってシンプルな造形。
ルームライトやミラーに至っては、ライバル車であるムーヴの部品をそのまま流用するなど、極めて割り切った仕様とすることで、リーズナブルな価格を実現しました。
フロントシートはアームレスト付きのベンチシートを採用し、リアシートはワンタッチで可倒する5:5分割シートでリクライニング機構も備えました。

2001年10月に発売され、基本は「M」のモノグレードで、これに「Xパッケージ」が選択できました。Xパッケージは、アルミホイールやルーフスポイラーなどの装備を充実させたもの。
一方でボディカラーは9色揃えて選択肢を広げています。

2002年9月には、スポーティな外観に仕上げたeKスポーツを発売しました。eKワゴンと同様の50ps仕様の「Z」と、ターボエンジンを搭載した「R」をラインナップ。ターボエンジンには「3G83T型(直列3気筒SOHCターボ・657cc)」で64psを発揮。Zは3速AT、Rは4速ATを採用しました。
さらに、eKスポーツのRをベースに、専用レカロシートなどを装備した、新グレード「RS」を2003年2月に追加しました。

2003年5月には、新シリーズeKクラッシィを追加。外観をクラシック調に仕上げているほか、装備をeKワゴンよりも上質なものにして差別化したもので、サスペンションのチューニング見直しにより快適性も向上させました。NAエンジンのみで、「L」のみのモノグレード展開。

2003年8月の改良では、eKワゴンに4ATの「G」を追加したほか、eKスポーツはZとRSを廃止してRのみのモノグレードとなりました。
さらに、地域限定特別仕様車阪神タイガースエディション」を発売しました。eKクラッシィのFF車をベースに、専用色のイエローソリッドを纏い、ドアを開けると「六甲おろし」がオルゴールの音色で流れるなど、阪神タイガースファンに向けた仕様が話題となりました。

さらに11月には、eKスポーツをベースにした「阪神タイガースエディション」も限定発売され、従来仕様に加え、阪神タイガース仕様の2DINオーディオやスペシャスピードメーターを採用。

2004年5月には、4つめのシリーズとしてeKアクティブを発売しました。NA仕様の「V」と、ターボ仕様の「VT」のグレード体系で、最低地上高を高く設定した、正式なクロスオーバーSUVで、大型バンパーや大径タイヤ、ルーフレールなどでSUV感を演出しました。

2004年12月、eKシリーズ初となる5速MT車eKワゴンのMに設定。
また、Mには電動格納式ドアミラー、GにはABSなどが標準装備化されたほか、エアコンの改良やエアコンコントロールパネルの変更、eKスポーツとeKクラッシィのリアデザイン変更など、仕様を大幅に変更しました。

2005年6月からは、eKワゴンeKスポーツを、オッティとして日産にOEM供給開始。

2005年10月には、地域限定特別仕様車「eK倉敷」を限定販売しました。ご当地ナンバーの倉敷ナンバーを記念したモデルで、「空気清浄機」「ラゲッジマット」「シートアンダートレイ」「キーレスエントリー」の、「く・ら・し・き」を標準装備したものでした。

2005年12月の改良では、一部グレードのシート地の変更や、ハイマウントストップランプの全車標準化などが行われるなど、仕様変更を実施。
同時に、eKクラッシィは販売を終了しました。

2006年9月、2代目H82型へモデルチェンジとなり、販売終了。2代目は、ほとんど変わらないというほどのキープコンセプトで、メカニズムもほとんどがキャリーオーバーであるため、H81型のビッグマイナーチェンジとも呼べるものでした。
3代目以降は、日産・デイズシリーズとの共同開発車として、人気モデルとなっています。

セミトールワゴンとも言うべきボディスタイルを確立したeKワゴン。実用性に優れたパッケージングをユーザーに提案したそのスタイルは、年齢や性別を問わず愛されるクルマとなりました。
その後、各メーカーから多種多様な軽トールワゴンが出るようになり、ワゴンRとムーヴの2強の時代から、新しい時代へと変化していくのです。

 

 

 

 

【諸元】

 

 

三菱・eKワゴン/スポーツ/クラッシィ/アクティブ(初代H81型)

全長×全幅×全高 3395mm×1475mm×1550mm
3395mm×1475mm×1600mm(eKアクティブ
ホイールベース 2340mm
乗車定員 4名
エンジン 3G83型 直列3気筒SOHC 657cc(50ps/6500rpm)
3G83T型 直列3気筒SOHC ICターボ 657cc(64ps/6000rpm)
駆動方式 FF/4WD
トランスミッション 3AT/4AT/5MT
タイヤサイズ 155/65R13
155/55R14
165/60R14(eKアクティブ