【トヨタ】タウンエース(初代R10型)

1970年に登場したライトエースの上級版として登場したタウンエースは、ハイエースとの間を埋める役割だけでなく、レジャー需要の高まりから乗用ワゴンに力を入れたクルマでした。

現代のミニバンの基礎ともいえる、手頃なサイズ感と実用性のある多目的車として人気となりました。

 

 

 


トヨタ・タウンエース(初代R10型)の歴史】

 

 

500~750kg積級のキャブオーバー車市場は、1966年に発売されたマツダ・ボンゴ(初代FSA型)が開拓。その後、1968年発売の三菱・デリカ(初代T100/120型)、1969年発売の日産・サニーキャブ/チェリーキャブ(C20型)、1970年発売のトヨタ・ライトエース(初代M10型)と次々にライバル車が投入され、市場は一気に活気づきました。

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当時のトヨタの1BOXラインナップは、コロナがベースのハイエース(初代H10型)、カローラがベースのライトエース、そしてパブリカがベースのミニエース(P100型)の3車種体制。
1967年に発売されていたミニエースは、800ccエンジンを搭載した1BOXバン・トラックとして、エントリークラスを担ってきましたが、空冷エンジンだったことで排ガス規制を達成できず、1975年に販売を終了することになりました。
そこで、ライトエースをエントリークラスに位置づけ、その上級モデルであるタウンエースを発売することで、「ハイエース、ライトエース、ミニエース」の3車種体制から、「ハイエース、タウンエース、ライトエース」の体制に移行することとなったのです。

ライトエースのコンポーネンツをベースに、全長と全幅を拡大。ホイールベースも、ライトエースの2050mmから延長されて2190mmに設定されました。
エンジンは、ライトエースにも搭載されていた「3K-J型(直列4気筒OHV・1166cc)」に加え、バンに「2T-J型(直列4気筒OHV・1588cc)」をラインナップ。また、ワゴンには「12T型(直列4気筒OHV・1588cc」が準備されました。トランスミッションは全車4速コラムMT。

 
 
 
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ボディサイズは、全長3990mm×全幅1650mm×全高1760mm(ワゴンは1745mm)で、ライトエースと比べると全長120mm、全幅90mm大きく設定されました。
1976年10月の発売当初は3/6人乗りバンと8人乗りワゴンの2車種で、バンが「スタンダード」「デラックス」、ワゴンは「スタンダード」「デラックス」「カスタム」のグレード設定。

ワゴンの2,3列目は倒すとフルフラットにすることができ、3列目を折り畳むと荷室スペースを拡大することができました。2列目シートは簡単に折り畳めるようになっており、3列目への乗降性にも考慮。2,3列目用のリアヒーターもオプション設定されており、レジャーユースの拡大を見込んでいました。
上級グレードのカスタムは、専用サイドストライプや専用ホイールキャップなど、乗用車を意識した外観のほか、ラジアルタイヤやディスクブレーキ、FM付オーディオなどが標準装備されました。
しかし一方では、パワーウィンドウやパワーステアリングは設定されなかったほか、AT車でさえラインナップされておらず、商用車の派生であることは色濃く残っていました。

発売翌月の11月からは、ダイハツにデルタワイドバン/ワゴンとしてOEM供給。既にライトエーストラックがデルタ750としてOEM供給されていたため、「ワイド」の名で販売されました。

1978年2月、バン1.2L車のエンジンを「4K-J型(直列4気筒OHV・1290cc)」に変更し排気量アップを図りました。

1978年10月、レジャーユース拡大に伴ってワゴンの仕様変更を実施。エンジンは昭和53年排ガス規制適合のため、「13T-U型(直列4気筒OHV・1770cc)」に変更されました。
足回りの見直しにより操作性を向上させたほか、全高1975mmのハイルーフ車の追加、サンルーフの設定、最上級グレード「カスタムエクストラ」の追加設定など、ワゴンのラインナップを増強させました。

また、同時にトラックを新たにラインナップ。一般的な低床と高床のほかに、荷台高を低くしたジャストローを設定し、各々に標準デッキとロングデッキがラインナップされました。当初のジャストローは、まだダブルタイヤは装着しておらず、高床モデルをベースに、径の小さいラジアルタイヤを装着して荷台をやや下げたもので、高床とさほど変わらないものでした。
エンジンは、ハイエースに搭載されていた「12R-J型(直列4気筒OHV・1587cc)」が採用されました。

 
 
 
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1979年10月には、ライトエースのモデルチェンジに合わせてマイナーチェンジを実施。年々拡大するレジャーユースに対応すべく、フロントマスクやインパネデザインを変更してカジュアル性を向上させ、カラーバリエーションも追加されました。
ワゴンのカスタムエクストラは「スーパーエクストラ」に名称変更されたほか、バンの1.6L車には最上級グレードの「ハイデラックス」を設定してラインナップを強化。トラックは、排ガス規制適合のために、ワゴンと同じ1.8Lの13T-Uに変更。ジャストローのリアタイヤに12インチダブルタイヤを採用したことで、荷台高を大幅に低く設定しました。

1980年12月に2度目のマイナーチェンジが実施され、ワゴンのヘッドラインプは角形2灯式に変更し、バンもヘッドランプベゼルなどの塗装色を変更。ワゴンの足回りは再度見直しが行われ、3速フロアATと5速フロアMTを設定。
新設定された最上級グレードの「グランドエクストラ」には、2列目を回転させることができる対座シートを装備しました。一部グレードを除いてサンルーフが電動に改められたほか、吊り下げ式クーラーに代わるエアコンの装備や、床置き式に代わるオーバーヘッドリアクーラーに変更。多目的化が進むライバル車との競争に、豪華さを向上させて対抗しました。
また、バンのハイデラックスが1.3L車にも設定され、トラックのジャストローには木製デッキ車が追加されました。

1982年2月には、1列目にチルトアップ式のムーンルーフが追加され、簡易ベッドを備えたキャンパー仕様の「キャニオンパッケージ」も追加設定されました。

1982年11月、2代目R20/30型へフルモデルチェンジとなり、販売終了。さらに豪華さや快適さを向上させて乗用ワゴンとして発展し、マイナーチェンジを繰り返しながら、ワゴン/バンは1996年まで生産が続きました。
その後、ミニバンブームに乗るように、3代目R40/50型ではタウンエースノアとサブネームを付けたあと、ノア(初代R60)へと系譜が続いていくことになります。

使い勝手がよく、機能性の高い1BOXワゴンが注目されるようになり、タウンエースはその魅力を存分に発揮して人気を博しました。当然ながらライトエースも同じ魅力を持ち合わせていましたが、その「上級モデル」という位置づけも、タウンエースのイメージアップに繋がったものと思います。
それまでの、商用車にシートを多く配置しただけのワゴンから、現代のミニバンへと続く新しい1BOX車が登場した瞬間でした。

 

 

 

 

【諸元】

 

 

トヨタ・タウンエース(初代R10型)

全長×全幅×全高 3990mm×1650mm×1760/1990mm(バン)
3990mm×1650mm×1745/1975mm(ワゴン)
4110/4125mm×1650/1695mm×1840/1860mm(トラック標準デッキ)
4300/4315mm×1650/1695mm×1840/1860mm(トラックロングデッキ)
ホイールベース 2195mm(バン/ワゴン)
2170/2295mm(トラック)
乗車定員 3/6/8名
エンジン 3K-J型 直列4気筒OHV 1166cc(64ps/5800rpm)(バン・~1978.2)
4K-J型 直列4気筒OHV 1290cc(72ps/5200rpm)(バン・1978.2~)
12R-J型 直列4気筒OHV 1587cc(80ps/5000rpm)(トラック・~1979.10)
12T型 直列4気筒OHV 1588cc(85ps/5400rpm)(ワゴン・~1978.10)
2T-J型 直列4気筒OHV 1588cc(93ps/6000rpm)(バン)
13T-U型 直列4気筒OHV 1770cc(92ps/5000rpm)(ワゴン・1978.10~/トラック・1979.10~)
駆動方式 FR
トランスミッション 3AT/4MT/5MT
タイヤサイズ 5.50-13 6P
5.50-13 6P/5.50-13 8P
165SR14