【トヨタ】カリーナ(初代A10/30型)

ラインナップ拡充を図るトヨタが、1970年に発売した小型セダンのカリーナ。同時期に発売されたセリカ(初代A20型)とは、シャシーやエンジンを共用する兄弟車でした。

セリカほどの派手さまでは求めないものの、スポーティで高性能なクルマを欲したユーザーに人気となりました。

 

 

 


トヨタ・カリーナ(初代A10/30型)の歴史】

 

 

1966年のトヨタ・カローラ(初代E10型)や日産・サニー(B10型)の発売を機に、マイカー時代が到来。トヨタはラインナップの拡充を着実に図ってきており、ショーファードリブンのセンチュリー(初代G20型)を筆頭に、高級セダンのクラウン(3代目S50型)、ハイオーナーカーのコロナマークⅡ(初代T60/70型)、ベーシックモデルのコロナ(3代目T40/50型)、大衆クラスのカローラ/スプリンター(初代E10型)、エントリーモデルのパブリカ(2代目P30型)と、セダンモデルは既にフルラインナップに近い状態でした。

ユーザーの好みの多様化に合わせて、トヨタが1970年12月に発売したカリーナは、大衆車であるカローラ/スプリンターよりも上級で、コロナに近い車格でありながら、コロナよりもスポーティでフレッシュな印象を持たせた、スポーツセダンでした。
同時期に発表されたスペシャリティカーのセリカ(初代A20型)とは、型式からも分かるように、シャシーを共用。まさに「セダン版セリカ」としてデビューしました。走りを楽しめるクルマが欲しいが、セリカのような派手さはいらないユーザー、もしくは室内空間など実用性も必要なユーザーに訴求するモデルとなりました。

セリカは1.6Lが主力エンジン、1.4Lは廉価版という位置づけでしたが、カリーナは1.4Lを主力として、1.6Lは上級版という戦略を取りました。これは、同年にフルモデルチェンジしていたコロナ(4代目T80/90型)が1.5Lと1.6Lを主力としていたため、差別化を図ったもの。
1.4Lのベーシックエンジンは86psの「T型(直列4気筒OHV・1407cc)」、1.6Lはシングルキャブレター仕様で100psの「2T型(直列4気筒OHV・1588cc)」、ツインキャブレター仕様の「2T-B型(直列4気筒OHV・1588cc)」の105ps。
トランスミッションは5種類にも及び、3速コラムMT、4速フロアMT、5速フロアMT、2速または3速ATが用意されました。

ボディサイズは全長4135mm×全幅1570mm×全高1385mmと、コロナに近いサイズ。しかしスタイリングは、コロナのオーソドックスなセダンとは異なり、大ヒットしていたカローラの拡大版といったところで、当時のトレンドだったセミファストバックを採用しました。
そのセミファストバックのスタイルに合わせたテールレンズは、縦長の短冊形のものを、トランクリッド左右に配置した特徴的なもの。フロントは、カローラとの差別化のために丸型4灯式を採用し、外側のロービームはメッキで囲んだデザイン処理が個性を演出しました。

ボディラインナップは2ドアセダンと4ドアセダンの2種類で、グレード体系は「1400」「1400デラックス」「1600」「1600デラックス」「1600スーパーデラックス」「1600ST」。

1971年4月には、1600STをさらにスポーティに仕上げた「1600GT」を2ドアセダンに追加。セリカのGTに搭載されていた「2T-G型(直列4気筒DOHC・1588cc)」を搭載し、115psを発揮しました。レギュラーガソリン仕様も準備され、「2T-GR型(直列4気筒DOHC・1588cc)」で110ps。

1972年8月にマイナーチェンジが実施され、内外装の意匠変更を実施。車幅灯を兼ねていたフロントウィンカーと、リアウィンカーを兼ねていたブレーキランプが、分割型となりました。
2T-B型のレギュラーガソリン仕様で100psの「2T-GR型(直列4気筒SOHC・1588cc)」を追加。また、3速コラムMTは廃止されました。

1972年12月、好調な販売を見せていたカリーナにボディバリエーションを拡充すべく、
2ドアハードトップを追加しました。セダンと比べて45mm低く、スポーティなシルエットに仕上げられました。前後の窓は傾斜を強くしてスポーティさを演出しつつ、後部視界の確保とトランク開口面積の確保のためにリアウィンドウは多少立てられ、代わりにリアクォーターピラーを寝かせて流麗なサイドビューを実現。
フロントマスクはセダンとは異なり、ロービームとハイビームの間に車幅灯を配したもので、よりワイドな印象を与えました。リアコンビネーションランプは横長のもので、カリーナの特徴であった短冊形は採用されませんでした。
一方で、ドアパネルはコロナのハードトップから流用するなど、部品共通化も図られました。インパネはセダンと共通ながら、シートポジションが異なり、より低く設定。
エンジンはセダンと共通の6種類がラインナップされ、「1400デラックス」「1600デラックス」「1600スーパーデラックス」「1600ST」「1600SR」「1600GT」とグレードも豊富に用意されました。
また、4ドアセダンにも1600GTを設定しました。

1974年1月のマイナーチェンジでは、セダンのフロントマスクをハードトップと同意匠のものに変更。新たに「1400スーパーデラックス」を追加したほか、2.0Lエンジン搭載車をラインナップしました。コロナマークⅡ(2代目X10/20型)に搭載されていた、110psの「18R型(直列4気筒SOHC・1968cc)」や、電子制御燃料噴射装置を組み合わせた130psの「18R-E型(直列4気筒SOHC・1968cc)」、DOHCエンジン(レギュラーガソリン仕様)で140psの「18R-GR型(直列4気筒DOHC・1968cc)」、そのハイオクガソリン仕様で145psを発揮する「18R-G型(直列4気筒DOHC・1968cc)」をラインナップ。
18R-G型を搭載した「2000GT」は、最高速度205km/hを公称した屈指のスポーツモデルで、装備やオプションも充実させたトップグレードでした。

1975年1月には、ホンダからCVCCの技術供給によって開発された「TTC-V(トヨタ複合渦流方式)」を搭載して、昭和50年排ガス規制に対応したクリーンエンジン車を追加。80psの「19R型(直列4気筒SOHC・1968cc)」で、トランスミッションは5速MTのみでした。
また、ハイオクガソリン仕様車は廃止されました。

1975年10月のマイナーチェンジで全車を昭和50年排ガス規制に適合。1.6L車は「2T-U型(直列4気筒SOHC・1588cc)」で90psとなり、2.0LのSOHC車は19R型に置き換えられ、DOHC車は「18R-GU型(直列4気筒DOHC・1968cc)」となり130psに出力ダウンしました。出力低下により1.4L車は廃止され、「16R-U型(直列4気筒SOHC・1808cc)」搭載車を追加。
さらに、ボディサイズを拡大したほか、内装も大幅に変更されました。

1975年12月には、さらなるラインナップ拡充のため、バンを追加しました。カローラバン(3代目E30型)のバックドアを流用しましたが、リアコンビネーションランプのデザインを変えて差別化を図りました。
エンジンは「T-J型(直列4気筒OHV・1407cc)」と「2T-J型(直列4気筒OHV・1588cc)」をラインナップ。

1976年3月、2T-U型は85psの「12T型(直列4気筒OHV・1588cc)」に換装して昭和51年排ガス規制に適合したほか、2.0Lの19R型も規制に対応。18R-GU型も1977年1月には規制に対応しました。
1977年3月には、1.8L車も「3T-U型(直列4気筒OHV・1770cc)」を搭載して規制対応。

規制への対応に追われる中、1977年8月にフルモデルチェンジを受け2代目A40型にバトンタッチしました。2代目以降でもスポーティな路線を踏襲し、4代目T150/160型からはコロナと兄弟関係となっても、正統派路線のコロナよりもスポーティさを売りにして販売されました。
7代目T210型まで続いた歴史は2001年にアリオン(初代T240型)に継承されますが、コロナの後継車であるプレミオ(2代目T240型)と共に、2021年3月末に2代目T260型も生産終了となり、コロナのT系やカリーナのA系の系譜は完全に消滅してしまいました。

有名なキャッチコピーである「足のいいやつ」が示すとおり、セリカシャシーを共用したことで、スポーティさを売りにしたカリーナ。この頃、日産はブルーバードやスカイラインを上級車志向に振ったことで、前述したような「ちょうどいい」魅力が薄れてしまっていた中、カリーナは取り回しのいいボディサイズ、実用性のあるセダンやハードトップボディ、セリカ譲りのスポーティさ、これらを比較的安価な価格設定で実現したことで、成功を収めることができました。マーケティングの成功例として、トヨタが誇る歴史の1つです。

 

 

 

 

【諸元】

 

 


トヨタ・カリーナ(初代A10/30型)

全長×全幅×全高 4135/4155mm×1570mm×1385mm(セダン・~1975.10)
4155mm×1580mm×1340mm(ハードトップ・~1975.10)
4220mm×1595mm×1385mm(セダン・1975.10~)
4220mm×1595mm×1340mm(ハードトップ・1975.10~)
ホイールベース 2425mm
乗車定員 5名
エンジン T型 直列4気筒OHV 1407cc(86ps/6000rpm)(~1975.10)
T-J型 直列4気筒OHV 1407cc(80ps/6000rpm)(バン・1975.12~)
2T型 直列4気筒OHV 1588cc(100ps/6000rpm)(~1975.10)
2T-J型 直列4気筒OHV 1588cc(93ps/6000rpm)(バン・1975.12~)
2T-U型 直列4気筒OHV 1588cc(90ps/6000rpm)(1975.10~1976.3)
2T-BR型 直列4気筒OHV 1588cc(100ps/6000rpm)(1972.8~1975.10)
2T-B型 直列4気筒OHV 1588cc(105ps/6000rpm)(~1975.1)
2T-GR型 直列4気筒DOHC 1588cc(110ps/6000rpm)(1971.4~1975.10)
2T-G型 直列4気筒DOHC 1588cc(115ps/6400rpm)(1971.4~1975.1)
12T型 直列4気筒OHV 1588cc(85ps/5400rpm)(1976.3~)
3T-U型 直列4気筒OHV 1770cc(98ps/5700rpm)(1977.3~)
16R-U型 直列4気筒SOHC 1808cc(95ps/5600rpm)(1975.10~1977.3)
19R型 直列4気筒SOHC 1968cc(80ps/5500rpm)(1975.1~)
18R型 直列4気筒SOHC 1968cc(110ps/5500rpm)(1974.1~1975.10)
18R-E型 直列4気筒SOHC 1968cc(130ps/5800rpm)(1974.1~1975.10)
18R-GU型 直列4気筒DOHC 1968cc(130ps/5800rpm)(1975.10~)
18R-GR型 直列4気筒DOHC 1968cc(140ps/6400rpm)(1974.1~1975.10)
18R-G型 直列4気筒DOHC 1968cc(145ps/6400rpm)(1974.1~1975.1)
駆動方式 FR
トランスミッション 2AT/3AT/3MT/4MT/5MT
タイヤサイズ 6.45-13 4P
165HR14