【日産】ダットサン・ブルーバード(2代目410型)
トヨタとの販売競争に快勝した初代310型からのフルモデルチェンジで登場した2代目410型は、ピニンファリーナのデザインによるヨーロッパ風なスタイルでデビューした意欲作でした。
果たして、トヨペット・コロナとのBC戦争の第2戦の結果はいかに。
【ダットサン・ブルーバード(2代目410型)の歴史】
1959年に発売されたブルーバード(初代310型)は、ライバルのトヨペット・コロナ(初代T10型)を圧倒する人気を誇り、4年間で約21万台を生産し、輸出台数も3万台を越えるほどの大ヒット。
モータリゼーションの発展に伴い、道路網の整備が進み、高速時代が目前に迫る中、2代目の開発テーマは高性能化。さらに、輸出市場の拡大のため、海外市場での優位性を高めることにも重点が置かれました。
ラダーフレームを採用していた先代から一新し、日産初のフルモノコック構造を採用しました。生産性を飛躍的に向上させることができたほか、車両重量が軽くなって燃費性能が向上し、車高の低いスタイリングが可能となりました。サスペンションは、フロントにダブルウィッシュボーン、リアに半楕円リーフを踏襲しましたが、改良を加えてロードホールディング能力を向上させることに成功しました。
エンジンは、「C1型(直列4気筒OHV・988cc)」と「E1型(直列4気筒OHV・1189cc)」の2種類で、それぞれ45psと55psの出力。どちらも先代から踏襲されたものでした。ダイナモ(直流発電機)だった先代から、オルタネータ(交流発電機)に変更。
トランスミッションはシンクロメッシュの3速MTで、先代に引き続き「サキソマット」と呼ばれるオートクラッチ機構をオプション設定。
スタイリングを手掛けたのは、イタリアのピニンファリーナ。それまでの国産車とは一線を画す、ヨーロッパ風の曲線的なスタイルが特徴で、ボディを一周する滑らかな水平ラインと、尻下がりのシルエットでそれを演出しました。全長3995mm×全幅1490mm×全高1415mmのボディサイズで、全長は長く、全高は低く生まれ変わりました。
内装も一新され、比較的フラットなインパネの上にメーターユニットが目立つデザイン。ベンチシートとコラムシフトの採用により広い室内空間を実現しただけでなく、実際に室内長は先代と比べて175mmも長くなっていました。また、バケットタイプのセパレートシートもオプション設定。
1963年9月のデビュー時は、1.0Lはモノグレード、1.2Lは「スタンダード」「デラックス」「ファンシーデラックス」の3グレードで、1.2Lの「エステートワゴン」も発売されました。
女性向けグレードのファンシーデラックスは先代から踏襲されたもので、クリーム系のツートンボディに、女性に嬉しい専用機能が多数装備されたもの。
日産の大きな期待を背負ってデビューしましたが、市場の評判は芳しくなく、尻下がりのスタイリングが受け入れられなかったことが要因でした。
一方で1964年にフルモデルチェンジするトヨペット・コロナ(3代目T40/50型)は、「アローライン」と称する直線的でシャープなデザインが人気を呼び、さらには1.5Lエンジンを主軸に展開したことで大ヒットを記録することになったのです。
1964年3月、スポーツモデルの「1200SS」を追加。SSはスポーツセダンの略。E1型にSUツインキャブレターを搭載し、65psにまでパワーアップしました。
1964年9月には、マイナーチェンジを実施し、フロントグリルのデザインを変更。
この時、ベーシックモデルだった1.0L車は廃止され、代わりに2ドアセダンを追加しました。「スタンダード」「デラックス」の2グレードをラインナップ。
1965年1月、リクライニングシート仕様車を設定。翌2月には2ドアセダンに「1200SS」を追加し、ラインナップを拡充。
1965年5月には再度マイナーチェンジを実施し、エンジンを1.3Lに変更してコロナに対抗。「J型(直列4気筒OHV・1299cc)」で、標準仕様が62ps、SUツインキャブ仕様が72psを発揮しました。
また、スポーツモデルの新グレード「1600SSS」を追加しました。同年にデビューしたシルビア(初代S310型)やフェアレディ1600(S310型)に搭載された「R型(直列4気筒OHV・1595cc)」にSUツインキャブレターを装着し、出力は90ps。
1966年4月のマイナーチェンジでは、尻下がりのスタイルを改める変更を実施し、特徴的だった鍵形のテールランプも、標準的な形状に変更されました。SSとSSSには、専用デザインのフロントグリルを装着。
この時、エステートワゴンと同一ボディを持つ商用登録の「バン」を追加しました。
1966年6月には、デラックスとファンシーデラックスに、3速ATをオプション設定。
9月には、内装の仕様変更を行い、シート地やビニールトリムの意匠を変更したほか、アクセルペダルをスプーンタイプからオルガンタイプに変更しました。
1967年8月、3代目510型へフルモデルチェンジし、販売終了。
苦戦していた販売面を打開すべく登場させた3代目510型は大きな成功を収めました。大型化したボディと、直線的で低いスタイリングが市場に受け入れられ、国内のみならず北米市場でも大ヒットを記録しました。
デザインが時代とマッチしなかったことが要因となり、圧倒的な人気を誇ったコロナを前に終始苦戦を強いられ、BC戦争ではブルーバードが初めて敗戦を喫しました。
一方で輸出は好調で、アメリカの輸入車市場で日産はベストテンに入るほどにまで成長し、その立役者がこのブルーバード。国内外のどちらにも受け入れられるクルマを作ることが、いかに難しいのかを表しているような気がします。
【諸元】
ダットサン・ブルーバード(2代目410型)
全長×全幅×全高 | 3990/3995/4000mm×1490mm×1415/1425/1435/1440mm |
ホイールベース | 2380mm |
乗車定員 | 5名 |
エンジン | C1型 直列4気筒OHV 988cc(45ps/4800rpm) |
E1型 直列4気筒OHV 1189cc(55ps/4800rpm) | |
E1型 直列4気筒OHV 1189cc(65ps/6000rpm) | |
J型 直列4気筒OHV 1299cc(62ps/5000rpm) | |
J型 直列4気筒OHV 1299cc(72ps/6000rpm) | |
R型 直列4気筒OHV 1595cc(90ps/6000rpm) | |
駆動方式 | FR |
トランスミッション | 3AT/3MT/4MT |
タイヤサイズ | 5.60-13 4P |