【日産】バネットセレナ(初代C23型)

RVブームを背景にマイカーの多様化を迎えた1990年代初頭、日産が送り出した新世代のミニバンがバネットセレナでした。

扱いやすいボディサイズながら室内が広い、現代にも通じるファミリーミニバンの原点です。

 

 

 


【バネットセレナ(初代C23型)の歴史】

 

 

バネットセレナ登場前の1980年代、3列シートを備えた1BOX車と言えば、商用バンを派生させたワゴン。日産では、バネットコーチ(2代目C22型)やその上級モデルのバネットラルゴ(2代目GC22型)、そしてキャラバンコーチ/ホーミーコーチ(E24型)がその例。乗り心地を良くし、快適装備を備えたとしても、商用車ベースであることは変わらないため、敬遠するユーザーも多く、人気を集めるモデルではありませんでした。

そんな中、スポーツアクティビティやキャンプなどのアウトドアブームに伴って、RVブームが到来。大柄なボディに無骨なデザインが人気を集めたSUVや、多くの荷物を積んで多人数で出かけられる1BOX車、積載能力はそのままにセダンのような乗り味を求めるステーションワゴンなど、マイカーの在り方も多様化の時代を迎えました。
そこで各メーカーが力を入れたのが、商用車の派生型ではない、乗用車として開発された3列シート車でした。

先陣を切ったのはトヨタで、北米でも通用する大きなボディサイズを持った、エスティマ(初代XR10/20型)を1990年にリリース。大きすぎる車体が仇となって当初の販売は苦戦しました。

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日産が考えた理想の姿は、セダンのような感覚で運転できることや、子供も乗り降りしやすいこと、会話が弾むちょうどいいサイズ感であることなど。それを実現するために、商用車ベースでもなく、セダンベースでもない、全く新しいモデルとして開発されたのが、バネットセレナでした。

 
 
 
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エスティマとも共通しているのは、前輪を前席より前に配置したこと。従来のバネットと比べて585mmも長いホイールベースを実現したことで、走行時の安定性や乗り心地を改善しただけでなく、フロントにクラッシャブルゾーンが生まれて衝突時の安全性を高めることが出来ました。
また、従来のキャブオーバー型1BOX車の場合には1列目シートの下にタイヤがあるため、1列目と2列目の間には空間が生まれ、運転するお父さんと家族との距離が遠くなってしまっていましたが、これを改善することができ、家族とのコミュニケーション性も各段に良くなりました。

エンジンはガソリン2種類、ディーゼル2種類を設定し、100psの「GA16DE型(直列4気筒DOHC・1596cc)」、130psの「SR20DE型(直列4気筒DOHC・1998cc)」、76psの「CD20型(直列4気筒SOHCディーゼル・1973cc)」、91psの「CD20T型(直列4気筒SOHCディーゼルターボ・1973cc)」。トランスミッションは5速MTと4速ATが用意されました。

スタイリングは、小さなボンネットを持つ1.5ボックスで、曲線を多用した流麗なデザインを採用。エスティマと異なる点は、5ナンバーサイズに収めたことで、全長4315mm×全幅1695mm×全高1825-1915mmと扱いやすいサイズ。後席ドアは左側のみの4ドアのみで、商用バン仕様の「カーゴ」も設定されました。

室内空間は広々としており、2列目がキャプテンシートか否かにより7人乗りと8人乗りの2種類から選択可能で、いずれも対面対座モードやフルフラットが可能。もちろん3列目は折り畳むことができ、広いラゲッジルームとして使用することも出来ました。日常の買い物から休日のドライブ、さらにはアウトドアレジャーまで、用途に応じた使い方が出来る、現代にも通じる完成されたファミリーミニバンでした。

1991年6月にデビューすると、そのパッケージングが好評で、一躍人気車種となりました。バネットセレナの好調さに対抗したトヨタは、1992年にエスティマを5ナンバー枠に収めたエミーナ/ルシーダを発売。これにより形勢は逆転し、エスティマ勢が巻き返すことになるのでした。

1992年1月、オーテックジャパン扱いの特別仕様車「サンキャット」を発売。大型専用バンパーに専用ボディカラー、専用内装を採用しました。

1993年8月にマイナーチェンジを実施し、カーゴを除きNAディーゼル車は廃止。

1994年5月にもマイナーチェンジを行い、インパネデザインを大幅にリフレッシュし、エアコンなどの操作性を向上させたほか、オーディオスペースの2DIN化を実施。オーテックジャパンが手掛けたグレード「キタキツネ」が設定されました。
また、商用車のイメージからの更なる脱却を目的に、車名からバネットを外し、「日産・セレナ」が正式車名となりました。
尚、バンとトラックは継続生産されていたバネットは、1994年4月のフルモデルチェンジでマツダ・ボンゴのOEM車として再出発しています。

1994年11月には、2列目と3列目にマルチパーパスシートを採用した特別仕様車「アーバンリゾート」を発売。2列目と3列目が全く同じ形状のシートを採用しており、簡単な操作で多彩なシートアレンジが可能でした。オーテックジャパンの手による特別仕様車「キタキツネ 雪ん子パック」も発売。

 
 
 
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1997年1月に3度目のマイナーチェンジを実施し、フロントマスクの意匠を変更。ABSが標準装備され、2列目と3列目にマルチスライドシートを採用しました。また、カーゴを除いて1.6L車は廃止されたほか、ディーゼルターボエンジンは「CD20ET型(直列4気筒ディーゼルターボSOHC・1973cc)」に変更され、インジェクション仕様となりました。
さらに、オーテックジャパン特別仕様車扱いだった「ハイウェイスター」が、カタログモデルとして追加されました。ラルゴ(3代目W30型)に最初に設定されたシリーズで、エアロパーツを装備したスポーティなエクステリアで人気を博しました。

1998年1月には、助手席エアバッグを標準装備化したほか、専用ルーフレール一体型スポイラーを装着した新グレード「フィノ」を追加。

1999年6月にフルモデルチェンジを受け、2代目C24型へ移行。
2代目では、ラルゴとの統合モデルとなりましたが、5ナンバー枠を守ったボディサイズで、商用モデルを設定しないワゴン専用車として開発されました。同クラスでヒットしていたホンダ・ステップワゴン(初代RF1/2型)に対抗するため、FFレイアウトへ移行。ミニバンブームとなる中で競合車の多いこのクラスで戦っていくことになります。

乗用車として開発されたミニバンとして、エスティマとともに先陣を切ったバネットセレナは、新しいミニバンの姿を実現したパイオニアであると言えます。日本のミニバンの先駆車は、日産・プレーリー(初代M10型)や三菱・シャリオ(初代D0型)と言われてはいますが、現代にも通じる本当の意味でのミニバンの形を作り出したのは、このバネットセレナだったのです。

 

 

 

【諸元】

 

 

日産・バネットセレナ(初代C23型)

全長×全幅×全高 4315mm×1695mm×1825-1915mm(~1994.5)
4355mm×1695mm×1825-1940mm(1994.5~)
4425mm×1695mm×1855/1900mm(サンキャット)
4475mm×1695mm×1870/1915mm(キタキツネ・グリルガード装備車)
ホイールベース 2735mm
乗車定員 5/7/8名
エンジン GA16DE型 直列4気筒DOHC 1596cc(100ps/6000rpm)
SR20DE型 直列4気筒DOHC 1998cc(130ps/6000rpm)
CD20型 直列4気筒SOHCディーゼル 1973cc(76ps/4800rpm)
CD20T型 直列4気筒SOHCディーゼルターボ 1973cc(91ps/4400rpm)
CD20ET型 直列4気筒SOHCディーゼルターボ 1973cc(97ps/4000rpm)
駆動方式 FR/4WD
トランスミッション 4AT/5MT
タイヤサイズ 175R13 6P
185/70R14
195/70R14
205/65R14