【スバル】レガシィ(初代BC/BF型)

1990年代に巻き起こったステーションワゴンブームの火付け役でもあり、いつもブーム中心にあったレガシィは、スバルの救世主となりました。

ライトバンのイメージが強くステーションワゴンが敬遠されていた時代とは何が違って、ブームとなったのでしょうか。

 

 

 


レガシィ(初代BC/BF型)の歴史】

 

 

バブル景気真っ只中の1980年代後半、自動車産業ももちろん好景気の恩恵を受け、ほとんどのメーカーが大幅な増益を記録していました。しかし、スバル(当時:富士重工業)だけは業績不振に陥り、倒産危機とまで報道され、他社による買収や合併などの噂も出回るようになっていました。その要因は、生産コストの高い体質や、北米市場での販売不振、そして何よりヒット車に恵まれていなかったことでした。

1980年代後半、スバルのラインナップの中心はレオーネ(3代目AA/AG/AL/AP型)。セダンを基本にクーペやツーリングワゴン、エステートバンなどのバリエーションで、水平対向エンジンと4WDを武器に販売していましたが、万人受けするかと言われればそうではなく、どちらかと言えばマニアックな車種。
レオーネをベースにしたスペシャリティカーのアルシオーネ(初代AX型)も1985年に登場。

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そしてスバルのもう1つの主力が軽自動車で、スバル・360の血を引くレックス(3代目KG/KH/KP型)と、1961年から歴史のある軽トラック/1BOXのサンバー(4代目KR/KT型)を生産。レックスをベースにしたコンパクトカーであるジャスティ(初代KA型)や、サンバーをベースにした1BOX車のドミンゴ(初代KJ型)も登場しており、これがスバルのフルラインナップでした。

競争力不足の打開策として、世界戦略車として通用する2.0Lクラスの新型車開発に乗り出し、開発コード「44B」と名付けられたそれが、レガシィとなるのでした。スバル伝統である水平対向エンジンと4WDを採用したものの、スバル・1000(A12型)以来、改良しながら長年使用されてきたプラットフォームは一新され、完全新設計されたエンジンと4WDシステムを搭載することになりました。

高性能・高品質をテーマに開発された新しいエンジンは、材質や形状などの仕様が徹底的に研究され、クローズドデッキでフライホイールハウジングを一体構造としたアルミ製シリンダーブロックが完成。スバル・1000以来採用されてきたEA型は、構造上DOHC化できないことがネックとなっていましたが、新エンジンは当初から余裕のある構造設計がなされ、バリエーション展開しやすい構造としました。
110psの「EJ18型(水平対向4気筒SOHC・1820cc)」、150psの「EJ20型(水平対向4気筒DOHC・1994cc)」、そして220psを叩き出す「EJ20T型(水平対向4気筒ICターボDOHC・1994cc)」の3種類をラインナップ。EJ20T型は水冷インタークーラーを備え、220psの出力は当時クラス最強を誇りました。

ボディタイプは4ドアセダンと5ドアワゴン(ツーリングワゴン)の2種類を設定。セダンには6ライトウインドウが採用され、そのクォーターウインドウとサイドウインドウの下端で段付処理されており、これがデザイン上の特徴。ワゴンでは、リアクォーターウインドウとリアウインドウの下端で段付処理され、ルーフは2段式を採用。ピラーはブラックアウトされ、ブリスターフェンダーを備えるなど、総合的にスポーティさを感じさせるデザインとなりました。
レオーネよりも大型化されたボディサイズは、セダンは全長4510mm×全幅1690mm×全高1385/1395mm、ツーリングワゴンは全長4600mm×全幅1690mm×全高1470/1490/1500mm(全高の違いは、標準車/エアサス搭載車/ルーフレール装着車)。

ツーリングワゴンは4WDのみの設定で、セダンには加えてFFもラインナップ。フルタイム4WDを基本システムとしながら、1.8Lの「Mi」のみパートタイム4WDも選択できました。ツーリングワゴンの最上級グレード「VZ」では、エアサス搭載車もラインナップされました。EJ20T型が搭載された最強グレードはセダンのみの設定で「RS」と称され、エアロパーツ類が装備されたスタイルに、足回りは専用にチューニングされ、4輪VディスクブレーキやMOMO製ステアリング、スポーツシートなどが備わりました。

 
 
 
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セダンが112.5~219.9万円、ツーリングワゴンは142.8~239.0万円で1989年1月に発売。
レオーネの場合は、トヨタ・カローラなどをライバルとする大衆車クラスでデビューし、3代目では大型化してトヨタ・カリーナほどのボディサイズとなっていましたが、レガシィの価格やボディサイズからすると、トヨタ・カムリに匹敵するまで大型化・高級化しており、アッパーミドルクラスに属するクルマとなりました。

スバルの未来を背負ってデビューしたレガシィは、RVブームの後押しもあり、特にツーリングワゴンの人気が高まり始めました。それまでのステーションワゴンは、商用バンをベースに乗用仕様にしたものがほとんどで、たとえバンとは異なるフロントマスクや豪華装備が備わっていたとしても、それはバンの延長線であり、ユーザーが持つイメージも「どうせバン」。その点ではレオーネも例外ではありませんでした。
レガシィの場合は、商用モデルを一切設定しなかったことや、従来のバンやワゴンとは一線を画すスポーティなスタイリングを採用したことで、「どうせバン」と思わせなかったことが成功のカギだったと言えます。

1989年9月、セダン・ツーリングワゴン共に「GT」が新設定されると、その人気はさらに爆発的なものとなりました。セダンRSに搭載されていたEJ20T型は、ピーキーな特性を持つターボエンジンで、扱いづらさが目立っていたため、実用的で扱いやすいセッティングに変更され、出力は200ps。これにより、ハイパワー4WDワゴンという1つのジャンルを生み出し、後にライバル車も多数登場することになりました。
また、セダンRSには足回りを強化して内装の装備を簡略化した「RSタイプR」も新設定されました。

1990年5月には、セダンRSタイプRをベースとしたモータースポーツベースモデル「RSタイプRA」を発売。エンジンはSTIによって1台1台組み上げられたもので、足回りはさらに強化されました。
また、セダンにもエアサスを搭載した「VZエアサス」を追加し、ツーリングワゴンには「TZ」にもエアサス搭載車を設定しました。

1991年6月にマイナーチェンジを受け、フロントマスクのデザイン変更や、リアガーニッシュとリアコンビネーションランプの変更、ドアハンドルのボディ同色化などを実施。
新たに125psの「EJ20D型(水平対向4気筒SOHC・1994cc)」を搭載した新グレード「ブライトン」を設定したほか、EJ20型のDOHCを搭載したAT車も、AT専用チューニングがされ、140psとなった「EJ20E型(水平対向4気筒DOHC・1994cc)」に変更されました。

1992年6月には、輸出専用だった「EJ22型(水平対向4気筒SOHC・2212cc)」を搭載した、「ブライトン220」を新設定。レガシィ初の3ナンバー登録となりました。さらに、4WDのみの設定だったツーリングワゴンにFF車を追加。

1992年8月、その名も「STI」と呼ぶ、ツーリングワゴンのSTIコンプリートカーを200台限定で発売。専用のECUを採用し、ターボの最大過給圧を高めることで、セダンRSと同じ220psにまで及び、ATのコントロールユニットも専用のものが装備されました。

1992年11月には、ブライトンにアルミホイールやリモコンキーなどを装備した、装備充実仕様の「ブライトンゴールド」をセダン・ツーリングワゴン共に発売。

1993年10月に2代目BD/BG型にフルモデルチェンジ。
ライバル他車が3ナンバー化する中、2代目も5ナンバーサイズを守りましたが、大型化した他車に負けない走りと室内空間を実現して高評価を得ました。自主規制値の280psにも達し、日本を代表するスポーツワゴンとスポーツセダンへと成長。
4代目BL/BP型以降は大型化し、世界戦略車の道を着実に進んでおり、7代目からは海外専売として生産され続けていますが、国内販売はワゴンが5代目BR型、セダンは6代目BN型を最後に幕を閉じました(SUVアウトバックは継続生産)。ワゴンの後継としては小型化したレヴォーグ(初代VM型)が登場し、こちらも大ヒットを記録。かつてレガシィに惚れたユーザー達は、大型化を望んでいなかったのです。

武骨なデザインに腰高な4WDという、昭和の頃のスバルのイメージから脱却し、息を吹き返したスバル。続いて発売された小型車のインプレッサもベストセラーとなりました。
水平対向エンジンと4WDを武器に、スポーティさを前面に出した戦略が実を結び、スバル愛好者のことを指す「スバリスト」なる言葉まで生まれました。世界でも通用するメーカーへと成長したスバルの立役者は、紛れもなくこのレガシィでした。

 

 

 

【諸元】

 

 

スバル・レガシィ(初代BC/BF型)

全長×全幅×全高 4510mm×1690mm×1385/1395mm(セダン・~1991.6)
4545mm×1690mm×1385/1395mm(セダン・1991.6~)
4600mm×1690mm×1470/1490/1500mm(ツーリングワゴン・~1991.6)
4620mm×1690mm×1470/1490/1500mm(ツーリングワゴン・1991.6~)
ホイールベース 2580mm
乗車定員 5名
エンジン EJ18型 水平対向4気筒SOHC 1820cc(110ps/6000rpm)
EJ20D型 水平対向4気筒SOHC 1994cc(125ps/5500rpm)(ブライトン)
EJ20E型 水平対向4気筒DOHC 1994cc(140ps/6500rpm)
EJ20型 水平対向4気筒DOHC 1994cc(150ps/6800rpm)
EJ20T型 水平対向4気筒DOHC ICターボ 1994cc(200ps/6000rpm)(GT)
EJ20T型 水平対向4気筒DOHC ICターボ 1994cc(220ps/6000rpm)(STI
EJ20T型 水平対向4気筒DOHC ICターボ 1994cc(220ps/6400rpm)(RS)
EJ22型 水平対向4気筒SOHC 2212cc(135ps/5500rpm)(ブライトン220)
駆動方式 FF/4WD
トランスミッション 4AT/5MT
タイヤサイズ 165SR13
175/70R14
185/65R14
195/65R14
195/60R15
205/60R15