【マツダ】センティア/アンフィニ・MS-9(初代HD型)

長年マツダのフラッグシップだったルーチェの後継として登場したセンティア。曲面で構成された流麗なプロポーションは、ライバルを凌駕する美しさを持っていました。

しかしながら新世代のプレステージフラッグシップセダンは、多チャンネル化したマツダの屋台骨になることは出来ませんでした。

 
 
 
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【センティア/アンフィニ・MS-9(初代HD型)の歴史】

 

 

1966年にデビューしたルーチェ(初代SUA/SVA/M13P/SUAV型)は、ハイオーナーカーの先駆け。

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以来、4代目HB型までは、トヨタ・マークⅡや日産・ローレルなどをライバルとした上級車で、ロータリーエンジン搭載車も揃えるマツダのフラッグシップセダンでした。
1986年にモデルチェンジした5代目HC型では、市場の変化に応える形で大型化し、トヨタ・クラウン日産・セドリック/グロリアと同クラスの高級車へと化していました。

バブル景気を迎えて高級志向が一層強まり、1989年には自動車税税制改正も行われ、3ナンバーの高級セダンのニーズが高まっていたこの頃、社会現象にもなった日産・シーマ(初代Y31型)が1988年に登場。1989年にはさらに大柄なボディに4.0Lエンジンを搭載したトヨタセルシオ(初代XF10型)が、1990年にはモデルチェンジで大型化したホンダ・レジェンド(2代目KA7型)がそれぞれデビューし、3.0L超の高級車が市場に放たれていきました。
さらに、従来からの高級車であるクラウン(8代目S130型)やセドリック/グロリア(Y31型)などは、人気の主力モデルは既に2.5L~3.0Lに移行してきており、新たな高級セダンとしてホンダ・アコードインスパイア/ビガー(CB5/CC2/3型)や、三菱・ディアマンテ(初代F10/20型)などもデビューするなど、高級車市場は景気に後押しされて盛り上がりを見せていました。

マツダも積極的に新モデル開発を進めており、その中の一つがセンティアでした。
全長4925mm×全幅1795mm×全高1380mmのボディサイズは、シーマをも超え、セルシオにも迫る程の堂々としたもの。それまでの国産車は、メルセデスベンツBMWなどの高級ドイツ車を意識した、直線基調のデザインが主流でしたが、センティアはジャガーを想像させる、美しい曲線で構成された流麗なスタイルで、サッシュレスドアを持つ4ドアピラードハードトップを採用しました。

エンジンは、160psの「J5-DE型(V型6気筒DOHC・2494cc)」と、200psの「JE-ZE型(V型6気筒DOHC・2954cc)」の2種類で、フロントミッドシップに搭載。トランスミッションは全車4速ATとされました。
また、高速時は同相に、低速時は逆相に後輪を操舵する、4WSシステムを全車に標準装備しました。

1991年5月の発売時は5グレード体制でスタートし、「25リミテッド」「25リミテッドS」「30リミテッドJ」「30リミテッドG」「エクスクルーシブ」。
特にトップグレードのエクスクルーシブには、最高級牛革や天然木を使用した内装や、6連CDチェンジャー、12スピーカーシステムなども採用されたほか、サンルーフ部分に搭載した太陽電池で換気システムを駆動する「ソーラーサンルーフ」も搭載し、炎天下に駐車していても車内の温度上昇があまりなく、エアコンがすぐに効く優れものでした。

1991年10月からは、バッジエンジニアリングであるアンフィニ・MS-9を発売。当時のマツダが進めていた多チャンネル体制に伴うもので、センティアとの相違点はフロントグリルやアルミホイールなどのデザイン。
「25タイプⅠ」「25タイプⅡ」「30タイプⅢ」「30タイプⅣ」の4グレードを設定しました。

1992年8月にはセンティアに「25リミテッドG」が、10月にはMS-9に「30タイプJ」が新設定されました。
さらに、1993年6月にはMS-9の25タイプⅠは廃止され、「25タイプSE」「25タイプⅢ」「30タイプJ」の新設定し、グレード体系を見直しました。

1994年1月のマイナーチェンジでは、フロントグリルやヘッドランプの意匠変更が実施され、全車標準装備だった4WSシステムを一部非標準装備となりました。
また、バブル崩壊マツダの経営悪化により、MS-9は車種整理となり、センティアに統合。
センティアのグレード体系は「25タイプJ」「25タイプJ-X」「30タイプJ」「30タイプJ-X」「エクスクルーシブ」の5種類に見直されました。

1995年11月にフルモデルチェンジとなり販売終了。
2代目HE型では、全長は少し短くなり、全高を持たせ、オーソドックスなスタイルに近づき、初代の流麗さは失われ、フォーマルセダン寄りに変わってしまいました。
さらに、コストダウンのために初代から流用されたパーツも多く、内装の質も低下。数多く登場したライバル車との販売競争は、苦戦することになりました。

マツダのフラッグシップとして開発されたセンティアでしたが、販売は不調に終わりました。
当時の国産高級車は、大きなフロントグリルを備えた威厳のあるマスクに、直線を基調として見た目もどっしり構えた大きなボディが主流の中では、美しく流麗なスタイリングでは、高級車とは捉えられなかったのでしょう。少し時代を先取りし過ぎたのかもしれません。

 

 

 

 

【諸元】

 

 

 

マツダ・センティア/アンフィニ・MS-9(初代HD型)

全長×全幅×全高 4925mm×1795mm×1380mm
ホイールベース 2850mm
乗車定員 5名
エンジン J5-DE型 V型6気筒DOHC 2494cc(160ps/6000rpm)
JE-ZE型 V型6気筒DOHC 2954cc(200ps/6000rpm)
駆動方式 FR
トランスミッション 4AT
タイヤサイズ 205/65R15
216/55R16