【トヨタ】イプサム(初代XM10型)

ホンダ・オデッセイが一世を風靡した1990年代半ば、トヨタが投入したライバル車がイプサム。オデッセイに対抗するために取られた差別化は、5ナンバーサイズに収めることでした。

コンパクトながらも使い勝手のいい新しいミニバンの形を提案しました。

 

 

 


イプサム(初代XM10型)の歴史】

 

 

 

多人数乗車ができるワゴン車は、かつては商用バンをベースとした1BOX車が主流。トヨタで言えば、ハイエースワゴンやタウンエースワゴン、ライトエースワゴンなどがそれです。
そんな中、1980年代には乗用車をベースにした「ミニバンの祖先」が2台登場しており、それが1982年発売の日産・プレーリー(初代M10型)と、1983年発売の三菱・シャリオ(初代D0型)。RVブームと重なって、一定の販売成績は収めたものの、商用車のようなチープなエクステリアや、室内空間の狭さなどから決してヒットとは言えない状況でした。

1990年代になると、乗用車ベースでより洗練されたミニバンが登場し始めます。トヨタからは1990年にエスティマ(初代XR10/20型)、日産は1991年発売のバネットセレナ(初代C23型)や、1993年FMCのラルゴ(3代目W30型)、ホンダからは1994年にオデッセイ(初代RA1-5型)がデビュー。そのうち大ヒットを記録していたのがオデッセイでした。

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セダンからの乗り換えでも違和感がない全高の低いスタイリングながら、多人数乗車しても余裕のある室内空間や、使い勝手のいいシートアレンジなどが人気の要因となりました。

絶好調のオデッセイを横目に、トヨタが全力を注いで開発した新たなミニバンがイプサムでした。旅客や送迎車としても利用されてきた1BOX車とは異なり、背の低いミニバンはファミリーカーとして利用されるもの。ファミリーカーは女性が運転する機会も多いことから、扱いやすい5ナンバーサイズに設定され、1996年5月にデビューしました。

 
 
 
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ベースとなったのはコロナプレミオ(11代目T210型)で、FFとフルタイム4WDが設定されました。エンジンもコロナでは馴染み深い「3S-FE型(直列4気筒DOHC・1998cc)」を搭載し、135psを発揮。トランスミッションは4速ATが組み合わされました。

全長4530mm×全幅1695mm×全高1620mmのボディサイズで、全高を除くとコロナプレミオとほぼ同等。
一方、室内空間を広くするため、ホイールベースは155mm延長して2735mmに設定されました。丸みを帯びたステーションワゴンのようなスタイルで、後席ドアにもヒンジ式を採用。

2-3-2レイアウトの7人乗り仕様のみがラインナップされ、コラムシフトの採用により1列目から2列目へのウォークスルーも可能で、9通りもの多彩なシートアレンジが用意されました。3列目は床下に収納すれば、広大なラゲッジルームとして使用可能。フルフラット機構に至っては、1-2列目と2-3列目の2パターンが可能でした。また、2列目のスライドは345mmにも及ぶロングスライドで、シートバックを折り畳めば簡易テーブルとしても使うことができる便利なものでした。日常使いのファミリーカーとして使うだけでなく、キャンプやアウトドアにも十分使える、クルマに仕上がっていました。

1997年8月には、94psの「3C-TE型(直列4気筒SOHCディーゼルターボ・2184cc)」と搭載した、ディーセルモデルをFF車に設定。
また、ガソリン車にはエアロパーツなどの専用内外装を備えた「エアロツーリング」を設定しました。

 
 
 
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1998年4月にマイナーチェンジを実施し、マルチリフレクターヘッドランプを採用したほか、カラーバリエーションを大幅に見直し。また、フロントグリルやテールランプ、ミラーなどもデザイン変更され、インパネやシートアレンジにも手を加えました。さらに、アクティブトルクコントロール4WDをトヨタ車で初採用しました。

1998年5月には姉妹車のガイア(XM10型)を発売され、イプサムよりも全長を90mm、全高を20mm伸ばした上級仕様で、オデッセイに対抗。ガイアはイプサムのフルモデルチェンジ後も2004年9月まで販売されました。

2001年5月、2代目XM20型へフルモデルチェンジして販売終了。5年間で約33万台が販売されました。
2代目では、オデッセイ(2代目RA6-9型)や日産・プレサージュ(初代U30型)、三菱・シャリオグランディス(3代目N80/90型)と同車格の3ナンバーサイズに大型化しましたが、依然として絶大な人気を誇っていたオデッセイを前に太刀打ちできず、2010年1月まで約9年間された後、生産終了となりました。

ハイルーフミニバンや1BOX車に抵抗のあった従来のセダンユーザーを中心に、5ナンバーロールーフミニバンのパッケージングが受け入れられたイプサム。1998年にFMCした日産・プレーリーリバティ(3代目M12型)、1999年にはマツダ・プレマシー(初代CP型)、2000年にはホンダ・ストリーム(初代RN1-5型)や三菱・ディオン(初代CR型)と、多くのライバル車が追従しました。
時代の変化とともに3ナンバー車に対する抵抗が薄れ、ハイルーフミニバンのブームも起きたことで、5ナンバーロールーフミニバンの需要は減り、ジャンルとしてはほぼ消滅してしまいましたが、ファミリーカーの中心がセダンからミニバンに移ってきた中で、イプサムは過渡期における激変緩和策のような大きな役割を果たしたと言えるでしょう。

 

 

 

【諸元】

 

 

トヨタイプサム(初代XM10型)

全長×全幅×全高 4530mm×1695mm×1645/1620mm(ルーフレール非装着車)
4530mm×1695mm×1685/1660mm(ルーフレール装着車)
ホイールベース 2735mm
乗車定員 7名
エンジン 3S-FE型 直列4気筒DOHC 1998cc(135ps/6000rpm)
3C-TE型 直列4気筒SOHCディーゼルターボ 2184cc(94ps/4000rpm)
駆動方式 FF/4WD
トランスミッション 4AT
タイヤサイズ 185/70R14
195/65R14
195/60R15