【三菱】デリカ(初代T100/120型)

ベストセラーとなっていたマツダ・ボンゴ(初代FSA型)に対抗すべく、三菱が投入した小型キャブオーバー車がデリカ。

三菱がジープ生産で培ったラダーフレームが採用されたことで、様々なバリエーションを作りやすく、耐久性の高い商用車を作ることに成功しました。

 
 
 
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【デリカ(初代T100/120型)の歴史】

 

 

 

1966年に発売されたマツダ・ボンゴ(初代FSA型)は、日本の小型1BOX車の走りで、大ヒットを記録。

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各メーカーはボンゴに対抗する小型1BOX車とそのトラックの開発を急ぎ、先陣を切ったのが1968年のデリカでした(当初はトラックのみ)。その後1969年にはダットサン・サニーキャブ(C20型)、1970年にはトヨタ・ライトエース(初代M10型)がデビューし、追従しました。

ジープの生産を続けてきた三菱が採用した構造は、ラダーフレームモノコック構造に比べると、生産性が落ち、重量が増えることがデメリットですが、商用車に求められる耐久性を保つことができることと、トラックやワゴン、バンなどのモデルを作りやすいメリットがありました。

当初搭載されたエンジンは「KE44型(直列4気筒OHV・1088cc)」で、コルト1100(A20型)から流用され、58psの最高出力を発揮。ライバルのボンゴより10psも勝っており、パワーには余裕がありました。

 
 
 
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1968年7月にトラックのみでデビューし、クラス初の3人乗りを実現。キャビンは曲線的なフロントガラスのおかげで広く感じられました。荷台は600kg積で、500kg積だったボンゴより2割も多く積載することが出来ました。

1969年4月、商用登録のライトバンとルートバン、乗用登録で9人乗りのコーチがデビュー。トラックをベースに1BOXに仕上げた3車種は、リアに上開きの1枚ドア、左側にはスライドドアを採用しました。
バンの積載量は、3人乗りで600kg積、6人乗りで400kg。
1969年12月には、トラックに高床タイプを追加し、ラインナップを強化しました。

1971年10月には、トラックを750kg積に変更して「デリカ75」シリーズを名乗り、1970年の発売時から750kg積を実現していたライトエースに対抗しました。エンジンは、ギャランクーペFTO(A60型)に搭載されたものと同じ「4G41型(直列4気筒OHV・1378cc)」に変更され、86psまで出力を向上。
外観上では、ベンチレーター周辺にガーニッシュを追加し、フロントウインカーと車幅灯の形状を変更しました。
また、1BOX車のテールゲートのデザインが一新され、テールゲート窓下にあったテールランプは、車体側に移設され、縦型のコーナータイプに変更となりました。

1972年には、アウトドアユースに訴求するキャンピングバンを発売。ルーフにポップアップ式のテントを装備し、ベッドやハンモック、カーテンを備えたモデルで、キッチン台やガスレンジなども用意されました。

1974年11月にもマイナーチェンジを実施し、フロント周りのデザインを大幅にリフレッシュ。丸型2灯式だったヘッドランプは4灯化され、左右非対称のフロントバンパーを採用。三角窓も廃止されて、新たに「デリカ1400」シリーズとなりました。
一方で、従来のフロントマスクに三角窓も備えた廉価版の「デリカ1200」シリーズも設定され、ランサー(初代A70/140型)と共通の「4G42型(直列4気筒OHV・1187cc)」を搭載しました。

1975年12月には、昭和50年排ガス規制のため、1.4Lエンジンの出力も82psにまでダウン。
翌年5月には、昭和51年排ガス規制に対応できず、コーチの販売を終了しました。

1976年11月、トラックのホイールベースを150mm延長した、1t積車を追加しました。

1977年11月には、バンのリアデザイン変更を実施し、バンパーは左右一体型となり、バンパー中央にあったナンバープレートはテールゲート右下に移設。また、1.4Lエンジンは再度出力ダウンとなり、78psとなりました。

1978年3月には、ギャランΣ(A120/130型)と共通の「G32B型(直列4気筒SOHC・1597cc)」を搭載し、ハイルーフ仕様としたバンを追加しました。ハイルーフ車は、依然600kg積だった標準バンより150kgも多い750kg積となりました。

1979年6月、約11年のモデルライフを終え、2代目へ世代交代となりました。

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2代目は大型化した直線基調としたボクシーなスタイルとなり、人気シリーズとなる「スターワゴン」も加わった上に、4WD車が大人気となりました。3代目のスターワゴンや、4代目のスペースギア、そして5代目のD:5など、悪路走破性の高い1BOX車として、今なお人気を誇っています。

ボンゴを追って開発されたデリカは、後発ではあったものの、三菱らしい丈夫な造りが評価され、一定の実績を残しました。これは、乗用モデルに重きを置いたライトエース等とは異なるアプローチでした。
2代目以降では、さらにバリエーションも増やして固定ファンを掴むことになりますが、この初代モデルで「デリカ」の名を広めたことが、その第1歩だったのではないでしょうか。

 

 

 

【諸元】

 

 

三菱・デリカ(初代T100/120型)

全長×全幅×全高 3860mm×1540mm×1795mm(コーチ)
ホイールベース 2120/2270mm
乗車定員 3/6/9名
エンジン KE44型 直列4気筒OHV 1088cc(58ps/6000rpm)(1968.7~1969.12)
KE44型 直列4気筒OHV 1088cc(62ps/6000rpm)(1969.12~1971.10)
4G42型 直列4気筒OHV 1187cc(68ps/6000rpm)(1976.11~)
4G42型 直列4気筒OHV 1187cc(70ps/6000rpm)(1974.11~1976.11)
4G41型 直列4気筒OHV 1378cc(78ps/6000rpm)(1977.11~)
4G41型 直列4気筒OHV 1378cc(82ps/6000rpm)(1975.12~1977.11)
4G41型 直列4気筒OHV 1378cc(86ps/6000rpm)(1971.10~1975.12)
G32B型 直列4気筒SOHC 1597cc(86ps/6000rpm)(ハイルーフバン)
駆動方式 FR
トランスミッション 4MT
タイヤサイズ 5.50-13 6P