【トヨタ】ヴィッツ(初代XP10型)

それまでは、ただ安さで選ぶ車だったエントリークラスのコンパクトカー。先進的なデザインと広い居住空間、そして低燃費を実現することで、ヴィッツは世界のコンパクトカーを変えたとも言われています。

日本と欧州を軸に好調な販売を記録し続けているヴィッツ(ヤリス)の、初代モデルの登場を振り返ってみます。

 

 

 


トヨタ・ヴィッツ(初代XP10型)の歴史】

 

 

1990年代後半の国内のコンパクトカー市場は、安定した販売を見せていた日産・マーチ(2代目K11型)やトヨタスターレット(5代目P90型)、コンパクトワゴンスタイルで一躍人気車となったマツダ・デミオ(初代DW型)が台頭。

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それを追いかけたのは、ホンダ・ロゴ(GA3/5型)やダイハツシャレード(4代目G200型)、スズキ・カルタス(3代目GA11/21/GB21/31型)。

この当時人気だったのは、スズキ・ワゴンR(2代目MC11/12/21/22型)やダイハツ・ムーヴ(2代目L900/910型)に代表される、軽トールワゴン。居住空間の広さと安さを兼ね備えたクルマとして、女性を中心に大人気でした。
そんな中で、列記したようなコンパクトカーは、価格の安さを売りにすることで販売実績を伸ばしていたため、作り込みよりも価格重視の設計となっていました。

一方で、1997年の京都議定書に代表されるように、地球温暖化などの環境問題が重要視され、自動車業界にとっても低燃費が叫ばれるようになり始めており、21世紀の新しい時代に向けたコンパクトカーの開発に乗り出したトヨタが、スターレットやその上のターセル/コルサ/カローラⅡ(L50型)の統合後継車として、そして世界に通用するコンパクトカーとしてリリースしたのがヴィッツでした。

世界とりわけ欧州を見据えたトヨタは、欧州デザインセンターのスタイリング案を採用。スターレットに比べてホイールベースは70mm長い2370mmに設定されたにも関わらず、前後のオーバーハングは切り詰められて全長は180mm短くなり、そして全幅は35mm広く、全高は100mmも高く設定されました。全高が低めの2ボックススタイルが主流だった中で、ずんぐりむっくりとも言える異色のシルエットは、国内外で類を見ないものでしたが、これによって大人4人が快適に過ごせる広い居住空間を実現しました。

インテリアも凝ったもので、ラウンドした先進的なダッシュパネルに、当時珍しかったデジタル式センターメーターを採用し、ヴィッツの個性を強く印象付けました。

エンジンは小型軽量対策がされた「1SZ-FE型(直列4気筒DOHC・997cc)」を搭載し、出力は70ps。状況に応じて吸気バルブの開閉タイミングをコントロールするVVT-iも採用しました。
トランスミッションは5速MTのほかに電子制御式4速ATも用意。当初はFFのみでスタートしました。

 
 
 
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1999年1月、国内で販売が開始され、当初から3ドアと5ドアをラインナップ。グレードは上から「U」「F」「B」の3種。
さらに3月には欧州でも「ヤリス」として発売が開始されました。
発売後はたちまち大人気となり、月販1万台以上を記録し続け、1999年の年間販売台数では15万台以上でカローラに次ぐ2位に輝きました。

8月には88psの「2NZ-FE型(直列4気筒DOHC・1298cc)」を搭載した4WD車を追加。同時に、シックな外観を与えられた新グレード「クラヴィア」を設定しました。

2000年10月、110psを発揮する「1NZ-FE型(直列4気筒DOHC・1496cc)」を搭載したスポーツグレード「RS」を追加しました。RSには、2NZ-FE型搭載車もラインナップ。欧州向けには2001年から「T Sport」のグレード名で販売されました。

2001年12月にマイナーチェンジを実施。「RS」と「クラヴィア」以外のフロントデザインを変更したほか、ハイマウントストップランプを標準装備。また、一部グレードを除いて6:4分割式リアシートも標準装備しました。
グレードの見直しでは、UのFF車は1.3Lエンジン搭載に変更され、UとRSの1.3L車には、装備を簡略化した廉価版として「Dパッケージ」を設定。

特別仕様車の発売なども実施しながら、2002年12月にもマイナーチェンジを実施。8月から一時販売中止となっていたRSをデザイン変更して再販し、さらにクラヴィアもデザインが変更されました。その他、ブレーキランプのLED化やルーフアンテナの変更などを実施。前席をベンチシートとしてコラムATを採用した「ペアスタイル」を1.0Lに設定。
新開発の「2SZ-FE型(直列4気筒DOHC・1296cc)」を搭載してトランスミッションにはCVTを採用、アイドリングストップも装備した「インテリジェントパッケージ」をUに設定しました。これと入れ替わりで1.0Lの「B エコパッケージ」は廃止。また、3ドアはRS、F、Bのみの設定に整理されました。

2003年1月、1.5LのRSにTRDが開発したターボチャージャーキットを搭載し、ハイオク仕様とした「RSターボ」を発売しました。最高出力150ps、最大トルク20.0kg・fを発揮し、往年のスターレットターボを彷彿としました。

その後も、カラーバリエーションの見直しや、特別仕様車の発売などを重ねながら、2005年2月まで約6年もの間販売され、2代目にバトンタッチ。
初年度に15万台を記録した販売台数は、2000年度にピークの16万台を迎え、2002年度までの4年間は10万台以上を記録する大ヒットとなりました。

典型的ともいえる2ボックススタイルを採用していた1990年代までのコンパクトカーとは異なり、欧州的なスタイリングを採用して、広い室内空間を手に入れたことは、以降のマーチや、ロゴの後継車であるフィットなど、ライバル各車も追従することとなり、日本市場でコンパクトカーブームが巻き起こることになりました。
そして今やヴィッツ(ヤリス)は、トヨタの屋台骨を支える世界戦略車の1つとなっています。

 

 

 

【諸元】

 

トヨタ・ヴィッツ(初代XP10型)

全長×全幅×全高 3610mm×1660mm×1500/1510mm(~2001.12)
3640mm×1660mm×1500/1510mm(2001.12~)
3635mm×1660mm×1500/1510mm(~2002.12・クラヴィア)
3630mm×1660mm×1485/1500mm(~2002.12・RS)
3660mm×1660mm×1485/1500mm(2002.12~・RS)
3660mm×1660mm×1475mm(RSターボ)
ホイールベース 2370mm
乗車定員 5名
エンジン 1SZ-FE型 直列4気筒DOHC 997cc(70ps/6000rpm)
2SZ-FE型 直列4気筒DOHC 1296cc(87ps/6000rpm)
2NZ-FE型 直列4気筒DOHC 1298cc(88ps/6000rpm)
1NZ-FE型 直列4気筒DOHC 1496cc(110ps/6000rpm)
1NZ-FE型 直列4気筒DOHCターボ 1496cc(150ps/6400rpm)
駆動方式 FF/4WD
トランスミッション CVT/4AT/5MT
タイヤサイズ 155/80R13
175/65R14
185/55R15
195/45ZR16(RSターボ)