【スバル】レオーネ(初代A20/50型)

今や当然の技術ともいえる4WDを、量産型乗用車に世界で初めて採用したのは、紛れもなくこの初代レオーネでした。

水平対向エンジンと4WDの組み合わせは、今のスバルのアイデンティティとなっていますが、その原点はここから始まりました。

 

 

 

 

【スバル・レオーネ(初代A20/50型)の歴史】

 

 

「マイカー元年」と呼ばれる1966年は、トヨタ・カローラ(初代E10型)や日産・サニー(初代B10型)がデビューした年。スバル(当時、富士重工業)からもスバル・1000(A12型)がデビューしました。国産初の水平対向4気筒エンジンを搭載するなど、スバルらしい力作でしたが、カローラやサニーと比べて質素に感じる内外装や、そもそものスバルのネームバリューなどの要素もあり、販売は決して好調とは言えない状況でした。マイナーチェンジ版のスバル・ff-1(A14/15型)の発売などで対抗するも、軒並み排気量拡大と装備の充実を図っていたライバル各車との差は埋まりませんでした。

そこでff-1の後継として開発されたのがレオーネ。1968年から業務提携していた日産車の当時のトレンドである、ロングノーズ・ショートデッキのスタイルに、流麗なボディラインなど、それまでのスバル車とは違っていました。また、サッシュレスドアを採用しており、スバルのアイデンティティの1つとして、レガシィインプレッサにも近年まで採用され続けました。

1971年10月にデビューしたレオーネは、クーペのみでスタートしました。スバル・1000用に開発されたEA型エンジンを踏襲し、排気量を1.4Lに拡大。シングルキャブ仕様で80psの「EA63型(水平対向4気筒OHV・1361cc)」と、ツインキャブ仕様で93psの「EA63S型(水平対向4気筒OHV・1361cc)」の2種類が用意されました。トランスミッションは4速MTのみで、ツインキャブ仕様の最高速は170km/hを記録。FFレイアウトに4輪独立懸架などの採用は、ff-1からの踏襲。
上級グレードには木目調インパネやオーバーヘッドコンソールを装備するなど、ライバル各車を意識して高級化が図られました。

 
 
 
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ボディバリエーションの拡大を着々を進め、1972年2月に4ドアセダンを発売。4月には2ドアセダンと5ドアエステートバン、さらに廉価版の1100シリーズを追加。1100シリーズにはff-1と同様の「EA61型(水平対向4気筒OHV・1088cc)」を搭載しました。

そして8月、スバルの未来を決定づけることになる4WDモデルがエステートバンに設定されました。
きっかけは1970年、冬季の送電線保守作業用にスバル・1000バンを4WD化できないかという、東北電力から宮城スバルへの相談でした。何度か試作を重ねた後、スバル・ff-1 1300Gバン4WDとして8台のみが製作されました。1971年の東京モーターショーにも出品されて注目を集めたことも後押しし、レオーネエステートバンにも4WD仕様をラインナップすることになりました。

FF車のトランスミッション後部にドライブシャフトを接続して後輪を駆動するもので、このドライブシャフトと後輪用のデフは、日産・ブルーバード(3代目510型)から流用。FFと4WDを走行中でも切り替えられるパートタイム式。ボディはFF車と共通ですが、悪路走破性の向上のために最低地上高は210mmに高められ、バンパーにはオーバーライダーを装着。
4WD車には1.1Lエンジンはラインナップされず、1.3LのEA63型のみ。車両重量は55kg程度重くなり、ギア比も低めに設定されていましたが、最高速度は140km/hを記録しました。

1972年12月には、スポーツグレード「1400RX」を追加。ツインキャブレター仕様をベースに、専用サスペンションや5速MT、国産量産車初の4輪ディスクブレーキなどを採用しました。

1973年6月、クーペの派生モデルとして2ドアハードトップが追加されました。クーペのスタイリングをベースに、リアウィンドウの傾斜を立てて後席ヘッドクリアランスを確保し、大人4人が快適に乗れるようなパッケージングとしました。丸型4灯式ヘッドライトを採用し、フロントグリルのデザインも異なるなど、クーペよりも上級モデルという位置づけを強調しました。1.3Lのシングルキャブとツインキャブの両方がラインナップされ、トランスミッションは当初4速MTのみでした。

同年10月には、マイナーチェンジを実施。クーペ・セダン・エステートバンのフロントグリルが変更されたほか、インパネはハードトップと同様のデザインとなりました。
セダンとエステートバンの1.1Lは、1.2Lの「EA64型(水平対向4気筒OHV・1176cc)」に変更。エステートバンには上級グレードの「1400GL」が追加され、商用車としては当時珍しかったディスクブレーキが前輪に標準装備されました。

1975年1月、エステートバンに続いて4ドアセダンにも4WD車を設定。エステートバンは4ナンバー登録だったため、事実上これが乗用車初の4WD車となりました。最低地上高は190mmに設定され、後輪には大型のマッドガードを装備しました。エステートバンと同様にパートタイム4WDで、エンジンは1.3LのEA63型を搭載。
同時にマイナーチェンジも実施され、セダン1.4L車のフロントマスクはハードトップと同じデザインとなり、さらに一部グレードにはレオーネ初のAT車が設定されました。

 
 
 
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同年10月、昭和51年排出ガス規制への適合のため、SEEC-Tと呼ぶ排気ガス浄化方式を採用。触媒などの後処理装置を使用せず、リーンバーンと二次空気導入装置を用いて、クリーンな排気ガスを実現したものでした。これによるパワー不足を補うため、エンジンラインナップを再編し、1.2Lは1.4LのEA63型に、1.4Lは1.6Lの「EA71型(水平対向4気筒OHV・1595cc)」となりました。

1977年4月には、昭和53年排出ガス規制への適合を全車で達成し、「NEWレオーネ」を名乗りました。他社ではスポーツモデルの廃止が相次いでいましたが、レオーネはツインキャブ仕様も生き残り、市場からは注目を集めました。
同時にマイナーチェンジが実施され、ボディサイズを拡幅し、リアのトレッドも拡幅。前後のエクステリアデザインも変更したほか、トランク開口部を拡大して利便性を向上させました。アッパートレイを装備したダッシュボードを採用し、メーターパネルのデザインも大幅に変更、衝撃吸収ステアリングも装備しました。

10月、セダンとハードトップに最上級グレード「グランダム」を設定。北米向け仕様の大型バンパーと、派手な内外装色が特徴でした。グレード名は想像の通りで、ポンティアックの車名から拝借したもの。

同時に、レオーネをベースにしたピックアップトラック「ブラット」を、北米向けの輸出専用車として生産開始。ダットサン・トラック(7代目620型)やトヨタ・ハイラックス(2代目N20型)などの、日本の小型ピックアップの需要が一部にあり、SOA(スバルオブアメリカ)からの要望で実現した車種でした。

1970年代の終わりになると、ライバル各車も排ガス規制をクリアした上で、内外装もブラッシュアップしたモデルが登場するようになり、レオーネの売上は落ち込み始めたため、1979年6月に2代目へフルモデルチェンジ。
以降、ターボ車の設定や、2ボックススタイルのスイングバック、さらにはツーリングワゴンの設定などで販売は好調。その後のレガシィインプレッサへと引き継ぐことになります。

4WDと言えばジープタイプが一般的だった時代に、乗用車タイプの4WDは非常に画期的。しかし裏を返せば、一般ユーザーにはまだ4WDの優位性が認識されていませんでした。
乗用車の快適な乗り味に、エステートバンのような使い勝手のいいラゲッジを持ち、それでいて悪路での走破性も高い乗用車タイプの4WDは、次第に信頼を集めるようになり、スバルの代名詞となって今日まで発展を重ねてきました。
世界に目を向けても、クワトロシステムが有名なアウディが4WDを実用化したのは、1980年のアウディ・クワトロ(81型)のこと。これより8年も早く4WDに着目していたスバルは、先見の明があったと言えるでしょう。

 

 

 

【諸元】

 

 

スバル・レオーネ(初代A20/50型)

全長×全幅×全高 3995/4170mm×1500/1550/1560mm×1380/1385/1395mm(セダン)
3995mm×1500/1550mm×1430mm(セダン4WD)
3995mm×1500/1550mm×1340/1345mm(クーペ)
3995/4035/4170mm×1500/1550mm×1350mm(ハードトップ
4000/4025mm×1500/1550mm×1410/1420mm(エステートバン)
4025/4040mm×1500/1550mm×1450/1460mm(エステートバン4WD)
ホイールベース 2445mm(エステートバン4WD)
2450mm(セダン4WD)
2455mm
乗車定員 5名
エンジン EA61型 水平対向4気筒OHV 1088cc(62ps/6000rpm)
EA64型 水平対向4気筒OHV 1176cc(68ps/6000rpm)
EA63型 水平対向4気筒OHV 1361cc(72ps/6000rpm)
EA63型 水平対向4気筒OHV 1361cc(77ps/6400rpm)
EA63型 水平対向4気筒OHV 1361cc(80ps/6400rpm)
EA63S型 水平対向4気筒OHV 1361cc(93ps/6800rpm)
EA71型 水平対向4気筒OHV 1595cc(80ps/5600rpm)
EA71型 水平対向4気筒OHV 1595cc(82ps/5600rpm)
EA71S型 水平対向4気筒OHV 1595cc(95ps/6400rpm)
駆動方式 FF/4WD
トランスミッション 3AT/4MT/5MT
タイヤサイズ 6.15-13 4P
6.15-13 6P(エステートバン)
145SR13
155SR13(1400RX/エステートバン4WD)